第44話 おばあちゃん、市場独占(お返し)の時間です
ぎ、逆制裁ですか……!? 我が国のような弱小国が、あの大国に一体何を……?
震えるアルに対し、シルバは最高に冷酷で美しい、ビジネスの鬼の顔を見せた。
アルさん、バレンシア公国は鉄鉱石こそ豊富ですが、冬場の気候が極めて厳しく、寒さによる役人や兵士の過労と体調不良で毎年大きな機会損失を出している国です。だからこそ、彼らの上流階級は、我が国の温泉リゾートの最大の優良顧客でしたよね?」
あ……! はい、バレンシアの貴族たちは、我が国の温泉チケットを奪い合うように買っています!」
「ええ。では、本日をもって『バレンシア公国の身分証を持つ者の、我が国の温泉施設への入場を全面的に禁止』に指定しなさい
シルバはフッと、慈悲のない不敵な笑みを浮かべた。
さらに、彼らが温泉街の旅館を裏で予約しようとした場合の転売対策も徹底し、違反した者はブラックリストに載せて永久追放。……大国だからと胡坐をかいて、自国の弱みを理解していない組織には、本物の生活の質の低下というものを教えて差し上げなければね
この日、リトアニア王国からの「温泉禁令」が出されると、バレンシア公国の宮廷は一瞬にして大パニックに陥った。
日頃の激務と寒さによる腰痛や関節痛を、リトアニアの温泉で癒すことだけを楽しみに生きていたバレンシアの老貴族や将軍たちが、「なぜリトアニアを怒らせたんだ!」「今すぐ鉄の禁輸を解除しろ!」「私の腰が限界だ!」と、自国の国王に猛抗議を始めたのだ。
他国の「福利厚生」を握ることによる、合法的な国家コントロール。おばあちゃん宰相のインバウンド戦略は、すでに一国の軍事力を上回る兵器と化していた。




