第43話 おばあちゃん、代替サプライチェーンを起動します
「アルさん。私が先月、バルカ伯爵の騎士団を使って、国内の南武山脈を地質調査させた報告書を覚えていますか?」
シルバの問いに、アルはハッとした表情を浮かべた。
「あ、あの、騎士団の皆さんが『宰相閣下にまた穴を掘らされている……!』と泣きながらツルハシを振るっていた、あの謎の任務ですか!?」
「ええ、それです。温泉が出る土地の近くにはね、独自の地熱や火成活動の影響で、豊かな鉱物資源が眠っている可能性が非常に高いのですよ。前世の地学の知識が役に立ちましたわ」
シルバは机の引き出しから、一本の小瓶を取り出した。中には、鈍い銀色に輝く見事な鉱石の塊が入っている。
「我が国の南武山脈から、バレンシア公国の上鉱をも凌ぐ、極めて純度の高い高品質な鉄鉱床が発見されました。埋蔵量は、我が国が今後百年消費してもお釣りが来るレベルです」
「な、何ですかそれは――っ!? 我が国に、そんな莫大な資源が眠っていたなんて!?」
「これまでは誰も適切なデータ分析をしていなかっただけです。我が国はすでに、鉄鉱石を自給自足できる体制、すなわち『サプライチェーンの内製化』を完了しています。バレンシア公国からの輸入など、今や一ミリも必要ありませんわ」
シルバはエレガントに立ち上がり、官服の袖をカチリとまくり上げた。
むしろ、彼らが勝手に取引を停止してくれたおかげで、我が国は違約金を支払うことなく、自国製の安い鉄で産業を独占できます。……ですが、ただ仕入れ先を変えるだけでは、ビジネスのプロとしては三流ですね。アルさん、バレンシア公国に対して、こちらから逆制裁を仕掛けますよ




