第42話 おばあちゃん、隣国の「経済制裁(嫌がらせ)」を察知します
「アルさん、せっかくの美味しいお茶が冷めてしまいますよ。慌てず、まずは一呼吸置きなさい」
シルバは呆れたように息を吐きながら、アルにハーブティーを一杯勧めた。アルはそれを一気に飲み干すと、懐から一枚の緊急書状を取り出した。
「のんびりお茶を飲んでいる場合ではありません! 我が国と国境を接する西の大国『バレンシア公国』が、突如として我が国に対する『鉄鉱石および魔導素材の禁輸』を通告してきたのです!」
「バレンシア公国、ですか。……確か、我が国の温泉ビジネスの成功を苦々しく思っていた、古い体制の軍事国家ですね」
シルバはフッと氷の瞳を細めた。
「はい。彼らは我が国の急速な近代化とホワイト化を『王権を揺るがす不穏な思想』と呼び、圧力をかけてきました。我が国は武器や農具の材料となる鉄鉱石のほとんどをバレンシアからの輸入に頼っています。これがストップすれば、我が国の産業は数ヶ月で干上がってしまいます!」
アルの言葉に、シルバは慌てるどころか、むしろ「ふふっ」と楽しげに唇の端を吊り上げた。
「鉄鉱石の禁輸、ですか。前世でもね、自国のシェアを盾に取って、気に入らない新興企業に対して不当な『サプライチェーンの遮断(嫌がらせ)』を仕掛けてくる傲慢な大企業はたくさんありましたわ」
シルバはトントン、と長い指先でテーブルを叩いた。
「ですが、そういう『一つの仕入れ先に依存するリスク(シングルソースのリスク)』は、私が最初の内政改革の時点で対策を立てておいたはずですよ、アルさん」
「え……? 対策、ですか?」
きょとんとするアルに、シルバは最高に不敵な笑みを向けた。




