第37話 おばあちゃん、本社の「裏金(上納金)」を告発します
「我が国が没収したマクシミリアン前司教の財産ですが、その一部が『使途不明金』として、毎年定期的に貴方の所属する教会総本部の『特別口座』へと送金されていた記録が残っています」
シルバの言葉に、ヴァルターの冷酷な表情が一瞬で凍りついた。
アルが広げたのは、マクシミリアン司教の隠し金庫から押収した、総本部への『裏上納金』の極秘帳簿の写し(バックアップデータ)である。
「な、何を根拠に……! そのような偽造された書類など、我が総本部に対する侮辱罪に値するぞ!」
「偽造かどうかは、総本部が管理している『聖属性の国際魔導決済ネットワーク』のログを照合すれば一発で分かります。前世でもね、裏金を動かす組織は、身内しか見ない身内のシステムだからと油断して、魔力残滓を綺麗に消さずに残してしまうものですよ」
シルバはトントン、と長い指先で帳簿の数字を叩いた。
「マクシミリアン前司教は、我が国の子供たちの食費や免税特権を悪用して得た不正利益の実に『三割』を、あなた方総本部に上納することで、その地位と監査の免除を買っていた。……つまり、あなた方は『不祥事の隠蔽』および『組織的な資金洗浄』の共犯者、あるいは主犯格(ということです」
「くっ……! おのれ……!」
ヴァルターの額から、タラリと冷たい汗が流れ落ちた。
弱小国の宰相が、まさか大陸教会の心臓部である財務の闇にまで手を伸ばしているとは、夢にも思わなかったのだ。
「ヴァルター監査官。このデータが大陸全土の他の教区や、貴国と対立している大国に開示された場合、総本部の『社会的信用』は地に落ちると思いますが……内部告発の準備はよろしいですか?」




