第33話 騎士団、スコップを握る(温泉掘削編)
数日後、リトアニア北部・山岳地帯。
かつてシルバを脅そうとして返り討ちに遭い、今や忠実な犬となったバルカ伯爵は、唖然としていた。
「宰相閣下……我ら誇り高きリトアニア騎士団に、剣ではなくスコップを握らせるとは……一体どういうことですか!?」
彼の目の前には、鎧を脱ぎ捨て、汗を流しながら地面を掘り返している屈強な騎士たちの姿があった。
「バルカ伯爵、これはただの穴掘りではありません。国家の『インフラ開発』という大変重要な任務です」
シルバは官服の袖をカチリとまくり上げ、現場の指揮台から冷徹な、しかし的確な指示を飛ばしていた。
「前世でもね、平時に軍隊を遊ばせておくのは予算の無駄です。災害復興や公共事業にその圧倒的な組織力と体力を投入することこそ、正しい『有効活用』というもの。それに、あなた方も毎日冷たい前線で警備をして、腰や関節が痛むでしょう?」
「そ、それはまぁ、確かに冬場の警備は腰にきますが……」
「ここから湧き出る温泉は、筋肉痛や関節痛に劇的な効果があります。完成した暁には、騎士団の皆さんには『一番風呂』の権利を差し上げましょう。……さあ、定時までに予定の深さまで掘り進めますよ!」
「お、お前たち、聞いたか! 宰相閣下が俺たちの腰痛を心配してくださっているぞ! 掘れ! 掘って最高の温泉を引くのだ!」
バルカ伯爵の号令と共に、騎士たちの作業スピードが三倍に跳ね上がった。
恐怖の宰相だと思っていたシルバが、自分たちの健康を考えてくれていると知り、現場のモチベーションは最高潮に達していた。




