第32話 おばあちゃん、福利厚生(温泉開発)を提案します
「レオン様、最近お体の調子はいかがですか?」
おやつの時間、シルバは十歳のレオン王の前に、新しく開発した「特製ハーブクッキー」を置きながら尋ねた。
レオンはもぐもぐとクッキーを口に運び、嬉しそうに微笑む。
「うん! シルバのご飯とおやつのおかげで、ぼく、最近すごく元気だよ! 体も少し大きくなった気がするんだ」
「それは何よりです。ですが……少し机に向かう時間が長すぎますね。これでは肩凝りや腰痛の原因になります。前世でもね、真面目な社員ほど座りっぱなしで体を壊してしまうもの。健康管理もまた、持政の大切な仕事です」
シルバはレオンの小さな肩を優しく揉みほぐしながら、背後に控えるアルに視線を向けた。
「アルさん。我が国の北部に、昔から『呪われた熱い泥水が湧き出る土地』があると聞きましたが、本当ですか?」
「え? ああ、はい。北部の山岳地帯ですね。硫黄の臭いが立ち込め、地熱で農作物も育たないため、不毛の地として放置されていますが……それが何か?」
シルバの氷の瞳が、キラリと輝いた。
「『呪われた泥水』ではなく、それはただの『温泉(地熱資源)』です。前世ではね、そのような土地こそが最高の観光資源であり、人々の心と体を癒す一大リゾート地になるのですよ。レオン様の保養のため、そして宮廷で働く役人たちの福利厚生のために、あそこを開発いたします」
「おんせん……? よく分からないけど、あったかい泥水にお風呂みたいに入るの?」
不思議そうに首を傾げるレオンに、シルバは慈愛に満ちた笑みを浮かべた。
「ええ、レオン様。お肌もツルツルになり、日頃の疲れが一瞬で吹き飛ぶ奇跡の泉です。さあ、バルカ伯爵の騎士団を『土木作業』に回して、突貫工事で温泉街を作らせましょう」




