第22話 おばあちゃん、逃げ道を完璧に塞ぎます
「さらに、マクシミリアン司教。あなたが『孤児院への寄付』として申請している年間金貨三千枚の予算ですが」
シルバは、アルから別の書類を受け取り、ひらひらと掲げた。
「神殿が管理する孤児院の運営実態を、我が『お掃除ネットワーク』……失礼、臨時の監査官に調査させました。子供たちに与えられていたのは、薄い粥とまともな衣類すら満足にない、劣悪な環境です。年間三千枚もの金貨があれば、子供たち全員に毎日ステーキを振る舞ってもお釣りが来ますよ」
「それは……神への信仰を深めるための、清貧の修行であり……!」
「言い訳は結構です。その浮いた予算が、あなたの私有する『秘密の地下金庫』へ直行している証拠は、すでに掴んでいます」
「な、何故それを……! あそこの鍵は、私と側近しか持っていないはず……!」
マクシミリアン司教は、ついに自ら墓穴を掘る発言をし、慌てて口を押さえた。
シルバはフッと、獲物を完全に網に追い詰めたコンサルタントのような、美しくも容赦のない不敵な笑みを浮かべた。
「鍵、ですか。ええ、あなたの側近の方が、あまりの薄給に耐えかねて、新しい『宮廷業務マニュアル』への転職を希望されましてね。彼から快く、金庫の鍵の魔導複製品と、すべての裏帳簿を提供していただきました。企業における最大の情報漏洩は、いつだって『身内の不満』から始まるものですよ」
シルバの背後で、バルカ伯爵が「おい、ギルベルト、お前たちの出番だ」と、重罪人用の魔力封じの枷を持った騎士たちに進み出るよう合図した。
「神の名を騙り、免税特権を貪り、あまつさえ罪のない子供たちの食費まで毟り取った罪、あまりにも重いですね。マクシミリアン司教、およびそこにいる悪徳貴族の皆さん。本日をもって、全員の資産を凍結し、国政から永久に追放いたします」
大聖堂の中に、罪人たちの絶望の悲鳴が響き渡った。




