第20話 大聖堂への殴り込み!
数日後。マクシミリアン司教の目論見は、完全に破綻していた。
宮廷はストライキで麻痺するどころか、シルバの断行した「業務効率化」によって、以前よりも遥かに迅速に機能し始めていた。さらに、王都の市場には、神殿の検問所を完全に迂回した水運ルートから、安価で新鮮な食料が大量に流れ込み、市民たちはむしろ「宰相閣下万歳!」と歓声を上げている始末。
「おのれ、おのれシルバめ……! 一体どんな魔法を使ったというのだ! 下級役人どもも、商人どもも、なぜあの若造の言うことに従う!?」
王都の大聖堂の奥の院で、マクシミリアン司教は狂ったように机を叩いていた。
残党の貴族たちも、今や完全に戦意を喪失し、ガタガタと震えている。
「し、司教閣下! もう終わりです! 我らの利権口座や、免税の裏帳簿のデータが、なぜか次々と宰相府に漏洩しているようで……!」
「黙れ! 神殿の聖域に、世俗の役人が立ち入ることなどできん! 証拠がなければ、私を罪に問うことなど――」
バァン!!!
その時、大聖堂の重厚な扉が、凄まじい音を立てて内側へと蹴破られた。
入ってきたのは、漆黒の髪をなびかせ、氷の瞳を冷徹に光らせた男――シルバ・フォン・ローゼンバーグであった。その背後には、完全に武装したバルカ伯爵率いる騎士団と、大量の書類ケースを抱えた秘書官のアルが控えている。
「な、何奴!? ここを神聖なる神殿の聖域と知っての狼藉か! 世俗の役人が、何の権限があって立ち入る!」
マクシミリアン司教が、必死に虚勢を張って怒鳴った。
しかし、シルバは官服の袖をエレガントに、かつ機能的にまくり上げると、大聖堂の壇上に向かって、最高に美しく、そして最高に冷酷な不敵な笑みを浮かべた。
「権限、ですか。ええ、もちろん持政のプロとして、完璧な『特例監査令状』を持参いたしましたよ。マクシミリアン司教」
シルバはトントン、とアルが机の上に並べ始めた、凄まじい量の書類の山を指差した。
「神聖なる聖域、免税特権。結構な隠れ蓑でしたが……残念でしたね。あなた方が神様の名を騙って行ってきた、過去十年分の『脱税』『公金横領』、そして『物資の不当囲い込みによる市場独占罪』の全証拠が、ここに揃っています。……さあ、言い訳を聞かせてもらいましょうか?」
第1章のクライマックス。おばあちゃん宰相による、宗教利権の闇を白日の下に晒す「最強の正論攻め」が、今ここに炸裂したのだった。




