第19話 おばあちゃん、孫(王様)の笑顔に癒やされます
「シルバ、見て見て! お野菜、ぜんぶ食べられたよ!」
おやつの時間。小食堂にやってきたシルバを迎えたのは、空っぽになった皿を誇らしげに掲げるレオン王の姿だった。
宮廷がストライキや流通封鎖で揺れていることなど、幼いレオンには一切感じさせないよう、シルバが完璧に裏で処理していたため、レオンの表情はかつてないほど穏やかで、健康的な赤みが差している。
シルバは冷徹な宰相の仮面を綺麗に剥ぎ取り、これ以上ないほど目元を優しく和らげた。
「まあ、まあ! 素晴らしいですね、レオン様。本当によく頑張りました。お皿がピカピカです。神童とは、まさにレオン様のことですね」
「えへへ、シルバが褒めてくれるから、ぼく、がんばったんだ。……ねえ、シルバ。お外がなんだか騒がしいけど、大丈夫? ぼく、また悪い貴族たちがシルバをいじめているんじゃないかって、心配で……」
レオンが、小さな手でシルバの黒い官服の袖をぎゅっと握りしめた。
十歳ながらも、国が不安定であることは肌で感じているのだろう。その健気な心配に、シルバの内なるおばあちゃん魂が激しく揺さぶられる。
シルバはレオンの前にそっと膝をつき、目線を合わせると、その小さな手を両手で優しく包み込んだ。
「レオン様。何も心配することはありませんよ。お外の騒がしいネズミたちはね、今、私がまとめて大掃除している最中です。あなたをいじめる悪い大人も、国を困らせる悪いネズミも、このシルバが一人残らず書類の山に沈めてお縄にして差し上げます」
シルバは、レオンの口元についたソースを、清潔なハンカチで優しく拭き取った。その所作は完璧に「慈愛に満ちた祖母」のそれだった。
「あなたはただ、お腹いっぱい食べて、立派な大人になることだけを考えていれば良いのです。分かりましたね?」
「うん! ぼく、シルバを信じる!」
レオンの満面の笑み。その輝きを確認した瞬間、シルバの脳裏で、マクシミリアン司教に対する「最終的な処刑プラン」が、冷酷なまでに完璧に組み上がった。
「さて……可愛い孫を少しでも不安にさせた罪は、重いですよ。マクシミリアン司教。……さあ、仕上げに取り掛かりましょうか」
執務室へと戻るシルバの背中からは、周囲の空気すら凍りつかせるほどの、凄まじい「鉄血」のオーラが立ち上っていた。




