第17話 おばあちゃん、宮廷の「DX(業務効率化)」を断行します
「いいですか、皆さん。仕事というものは『長く席に座っていること』ではありません。『成果を出すこと』です」
シルバは、役人が激減して大混乱に陥っている財務部のオフィスへ、自ら乗り込んでいた。
残された真面目な下級役人たちは、鉄血の宰相の突然の登場に背筋を凍らせて直立不動している。
シルバは、彼らの前に一冊の薄い冊子を提示した。
「これは、私が作成した新しい『実務簡素化マニュアル』です。これまでのリトアニアの書類仕事は、あまりにも無駄が多すぎました。例えばこの、一つの予算を通すために七人もの上司のサインが必要なシステム。……これ、何の意味がありますか?」
役人たちは、顔を見合わせた。
「え、あ、それは……昔からの慣例で、責任の所在を……」
「全員がサインをするということは、誰も責任を取らないということの裏返しです。こんな無駄な稟議ルートは本日をもって廃止します。これからは、実務担当者の起案、課長の確認、そして私の最終承認。この三段階のみとします」
シルバはさらに、宮廷の魔導具師に特注で作らせた、いくつかの小さな魔導水晶を机に並べた。
「それから、これ。文字を入力すれば、自動で過去の納税記録と照合して計算してくれる『簡易演算魔導具』です。前世でいうところの『表計算ソフト』のようなものですね。これを使えば、今まで三日かかっていた帳簿の計算が、わずか三分で終わります」
「さ、三分……!? そんな馬鹿な……」
ベテランの役人が半信半疑で魔導具を操作し、数字を入力していく。すると、水晶が淡く光り、一瞬にして完璧な合計金額と、誤差のチェック結果を弾き出した。
「な、何だこれは……! 本当に、一瞬で計算が終わったぞ!?」
オフィスに、驚愕のどよめきが広がる。
「これまでの皆さんは、悪徳上司たちの無駄な会議や、利権を守るための複雑な手続きのせいで、過度な残業を強いられていました。ですが、システムを合理化すれば、人員が半分になっても業務はむしろ十倍速になります」
シルバは官服の袖を整え、役人たちを見渡した。その氷の瞳には、かつてのような冷酷さはなく、部下を導く一流の指導者の輝きがあった。
「残ってくれた真面目な皆さんの給与は、クビにした不穏分子たちの予算から削って『二倍』に引き上げます。その代わり、定時にはきっちり仕事を終わらせて、家族の元へ帰りなさい。……さあ、ホワイトな職場の始まりです。効率よく、片付けてしまいましょう」
「は、はいっ! 喜んで!!」
役人たちの目が、現金なまでに輝いた。恐怖の対象でしかなかった宰相が、自分たちの待遇を劇的に改善してくれる「最高のボス」へと変わった瞬間だった。




