第13話 おばあちゃん、孫(王様)を全肯定で甘やかします
王城の、陽の光が優しく差し込む小食堂。
十歳のレオン王は、テーブルの前で小さな身体を縮こまらせていた。
「……あ、あの、シルバ……? 今日のお食事は、シルバが作ってくれたの……?」
レオンはまだ、目の前に立つ、漆黒の髪をした美貌の宰相に少しだけ緊張していた。昨日は優しく抱きしめてくれたけれど、自分を厳しい言葉で叱責してきた過去のシルバの記憶が、完全には消えていないからだ。
しかし、シルバはレオンの前にプレートを置くと、その端正な顔立ちをこれ以上ないほど優しく和らげた。
「ええ、レオン様。昨日のおやつがお気に召したようでしたので、今朝は私が腕を振るいました。さあ、お残しを気にせず、好きなものからたくさんおあがりなさい」
「わあ……! すごい、すっごくいい匂い!」
レオンの目が一瞬で輝いた。
肉厚のベーコンから溢れるジューシーな脂の香り、そして見たこともないほど黄金色に輝くふわふわの卵。
スプーンで卵をすくい、口に運んだレオンの顔が、とろけるような笑顔に変わる。
「おいしい……! ふわふわしてて、あったかくて、すごくおいしいよ、シルバ!」
「ふふふ、それは良かった。偉いですね、レオン様。お野菜も小さく刻んでスープに溶かしてありますから、これなら苦くないでしょう?」
「うん! これならぼく、ぜんぶ食べられる!」
もぐもぐと必死に口を動かすレオンの姿は、シルバにとって、前世で目に入れても痛くなかったひ孫そのものだった。
シルバはレオンの背中を優しく撫でながら、温かい眼差しを向ける。
「レオン様。今まで、寂しい思いをさせてしまって本当にごめんなさいね。これからは、あなたが美味しいものを食べて、お腹いっぱいになって、安心して眠れるように……このシルバが全力で国を整えます。あなたは、ただ健やかに、立派な王様になる準備をしていれば良いのですよ」
「シルバ……。うん、ぼく、シルバがいてくれれば、なんだって頑張れる気がする!」
レオンは口の周りにケチャップをつけながら、満面の笑みを浮かべた。その純粋な笑顔を守るためなら、どんな悪徳貴族だろうが大国だろうが、笑顔で書類の山に沈めてやろうと、おばあちゃん宰相は心に深く誓うのだった。




