第12話 おばあちゃん、孫(王様)のために朝食を作ります
「さあ、まずはレオン様の朝食から始めましょうか」
料理人たちに厨房の大掃除を命じた後、シルバは自ら食材の前に立った。
いくら厨房の意識を改革したとはいえ、長年冷遇されてきたレオン王の胃袋と心を癒せるのは、自分の料理だけだと確信していたからだ。
シルバの前世の記憶から、子供が喜ぶ、かつ栄養満点のメニューが次々と引き出される。
取り出したのは、新鮮な卵、リトアニア特産の濃厚なミルク、そしてバルカ伯爵から「前線待遇改善の証」として一晩で強奪した、極上の厚切りベーコン。
「フフ、男の子の成長期にはね、タンパク質とカルシウムが絶対に欠かせないのですよ」
ジュウウウ、と心地よい音を立ててベーコンが焼けていく。その傍らで、シルバは手際よく卵を溶き、ミルクと合わせて、じっくりとバターを溶かしたフライパンへ流し込んだ。
長い指先が流れるように動き、極上の「ふわとろスクランブルエッグ」が完成する。さらに、昨日から漬け込んでおいた地元の果実のコンポートを添えて、彩りも完璧な朝食プレートが仕上がった。
「シルバ様、お見事です……! 宰相閣下でありながら、これほどの神速の調理手順……!」
手伝っていた若い料理人が、感動のあまり目を輝かせる。前世で忙しい重役たちのスケジュールを管理しながら、毎朝家族のために完璧な朝食を作ってきたチヨの主婦スキルは、異世界でも健在だった。
「これくらい、秘書兼主婦を五十年間やっていれば朝飯前ですわ。さあ、冷めないうちにレオン様のもとへ運びましょう」
シルバは不敵な笑みを浮かべ、スープが冷めないよう素早くトレイを掲げた。




