第8話 世界解放への道
「九州解放戦が終わったことで、日本本土はようやく奪還されました。」
林は地図を広げながら語り始めた。
「ですが、それで戦争が終わったわけではありません。」
「まだ世界中が戦場だったのです。」
二郎は静かに耳を傾ける。
「日本政府は、自国の防衛だけでなく、各国との共同反攻作戦へ参加することを決定しました。」
「最初の作戦は――。」
林は沖縄を指差した。
「沖縄解放作戦です。」
「沖縄には上陸したディープワンによって各地が占領されていました。」
「しかし、アメリカ海兵隊、自衛隊、そして避難できなかった多くの一般市民が基地へ立て籠もり、必死に持ちこたえていたのです。」
「そんな状況が続いていたのか……。」
「ええ。」
「日本防衛軍は海空軍と共同で上陸作戦を実施し、基地を救援。」
「生存者を救出し、沖縄全域を解放しました。」
林は次に台湾を指す。
「続いて台湾支援作戦。」
「台湾軍と共同でディープワンを撃退し、各地の防衛線を再建しました。」
「さらに東南アジア支援作戦も開始されます。」
「日本は各国へ兵士だけでなく、食料、医療品、符呪装備、工兵部隊を派遣し、復興支援も同時に行いました。」
二郎は驚く。
「戦うだけじゃなかったんですね。」
「はい。」
「都市を取り戻しても、人々が生活できなければ意味がありませんから。」
林は中国大陸へ視線を移す。
「一方、中国では内陸部で決戦が行われ、人類側が勝利します。」
「その後、日本も支援に加わり、上海解放作戦、沿岸都市解放作戦が実施されました。」
「最後に行われた大規模共同作戦が、朝鮮半島支援作戦です。」
「朝鮮半島でも激しい戦闘が続いていました。」
「日本、中国、アメリカを中心とする連合軍は共同でディープワンを掃討し、半島各地を解放しました。」
二郎は静かに頷いた。
「世界中が協力したんですね。」
「その通りです。」
林は穏やかに笑う。
「もちろん、日本だけの力ではありません。」
「外交による支援も極めて重要でした。」
「ロシアです。」
「日本政府はロシアから大量の武器と弾薬を購入しました。」
「それによって継続的な解放作戦が可能となり、各地への支援も続けられたのです。」
「さらに購入したロシア製の銃器や弾薬の一部は、激戦が続くアメリカへも送られました。」
「互いに支え合ったんですね。」
「ええ。」
「どの国も単独では勝てない戦争でした。」
林は世界地図を見つめる。
「北アメリカ。」
「ヨーロッパ。」
「南アメリカ。」
「アフリカ。」
「各地で激戦が続きました。」
「解放と奪還を繰り返しながら、人類は二十年もの歳月をかけて戦い続けたのです。」
二郎は息を呑む。
「二十年……。」
「まさに人類存亡を懸けた戦争でした。」
林は静かに締めくくる。
「そして戦争の終盤。」
「人類は二つの海上都市――ルルイエとアトランティスに対し、最終攻撃を決断します。」
「各国の判断により、海上都市は核攻撃の対象となりました。」
「都市は壊滅し、海底へと沈んだと言われています。」
「現在でも、その海域は厳重な立入禁止区域となっています。」
部屋は静寂に包まれた。
長い沈黙の後、二郎はぽつりと呟く。
「この世界の平和は……。」
「本当に多くの犠牲の上にあるんですね。」
林は静かに頷いた。
「だからこそ今も国防軍、八王子軍警、探索者協会は備え続けています。」
「二度と、あの降魔戦争を繰り返さないために。」
その言葉を聞き、二郎は改めて決意する。
自分もまた、この世界で生き、この世界を守る力を身につけようと。




