間話6 ヘルハウンド中隊 敵の奇襲を制す
夜の北八王子。
工事現場を装った車列が、魚人街Bゾーン周辺へ分散して停車していた。
大型工事用トラック六台。
一台につき十五名の武装戦闘員がコンテナ内で待機している。
さらに支援用ワンボックスバン二台。
内部では通信班と対ドローン妨害装置の担当者が、攻撃開始命令を待っていた。
少し離れた場所には黒いベンツが一台。
後部座席には組織の首領・王。
運転席には専属運転手。
助手席には王の弟が座っている。
その前後を二台の黒いセダンが護衛する。
セダンには探索者ランクAのサメ型ディープワン三名と、銃器で武装した親衛隊八名が分乗していた。
彼らは、自分たちが待ち伏せする側だと信じ切っていた。
しかし――。
その上空では二十四機のステルスドローンが静かに旋回していた。
赤外線映像。
魔力反応。
生体反応。
全車両内部の配置がリアルタイムで大型戦術モニターへ映し出される。
ヘルハウンド中隊本部。
柏木沙織が短く命じた。
「全車両、同時制圧。」
「開始。」
『了解。』
その瞬間。
六両のトラックへ、小型装甲機動歩兵が一斉に接近する。
静音機構が起動。
高速機動用車輪で滑るように移動しても、足音はまったく響かない。
運転席の見張り役は異変に気付く暇もなかった。
装甲兵が窓を開け、ナイフで制圧。
別の車両では首を押さえ込まれ、無力化される。
通信機を握る前に、六人の見張りは全員制圧された。
同時刻。
コンテナ後部へ回り込んだ装甲機動歩兵たちがロックを解除する。
ギィ……。
静かに後部扉が開く。
中では十五名の武装戦闘員たちが発進命令を待っていた。
誰一人、異変には気付かない。
「突入。」
柏木の指示が通信へ流れた。
次の瞬間。
六台すべてのコンテナへ装甲機動歩兵が同時突入する。
大型両刃斧が狭い車内を薙ぎ払う。
別の車両では村上飛燕の一・八メートル日本刀が鋭く閃き、抵抗しようとした戦闘員を次々と制圧していく。
さらに別のコンテナでは、散弾兵装を装備した隊員が至近距離から武装した敵だけを狙い、短時間で戦闘能力を奪っていく。
上空ではドローン攻撃小隊が状況を監視。
逃走しようとする敵や、武器へ手を伸ばす敵を即座に識別し、各小隊へ情報を送る。
わずか一分。
大型工事用トラック六台はすべて制圧された。
続いて二台のワンボックスバンへ小隊が突入する。
対ドローン妨害装置を起動しようとしていた敵通信班は、操作する間もなく制圧された。
支援車両も完全に沈黙する。
残るは最後尾を走る王の車列だけだった。
黒いベンツ。
前後を護衛する二台のセダン。
ステルスドローンがその動きを静かに追跡し続ける。
柏木は戦術モニターを見つめながら、小さく笑った。
「親玉だけ残ったな。」
「逃がさへんで。」
ヘルハウンド中隊は、敵が奇襲を仕掛ける前に、その戦力の大半を無力化していた。
王はまだ、自らが完全な包囲網の中にいることに気付いていなかった。




