閑話5 敵は動き出す
東京都・北八王子近郊。
人の寄り付かなくなった廃工場。
老朽化した大型倉庫の中には、工事会社を装った車両が並んでいた。
大型工事用トラック六台。
一台につき十五名が乗車可能で、武装した大陸系ハーフ魚人とチョーチョー人の戦闘員が乗り込む。
さらに五人乗りワンボックスバン二台。
こちらには対ドローン妨害装置や予備弾薬、通信機材を搭載した支援班が乗車する予定だった。
倉庫の中央には八王子市北部の地図が広げられている。
その前に立つ男――大陸系魚人組織の首領、**王**が口を開いた。
「ようやくだ。」
「一年かけた計画が、今夜動き出す。」
王の周囲には幹部の李、張、陳が並ぶ。
「ダンジョン景気で栄える都市鉱山、八王子。」
「ここを押さえれば莫大な利益が手に入る。」
「大陸から流れる資金。」
「チョーチョー人の密輸ルート。」
「そして我ら魚人部隊。」
「全てが揃った。」
王は不敵に笑う。
「今夜から八王子の裏社会は我々のものだ。」
幹部たちは静かに頷く。
「戦闘員は百名。」
「全員、一年以上の軍事訓練を終えている。」
「最初の標的は八王子軍警ヘルハウンド中隊。」
「軍警を叩き潰し、我々の力を思い知らせる。」
李が尋ねた。
「家族マートで失った人員は?」
「組織のルールも守れん下っ端だ。」
王は鼻で笑う。
「だが軍警はこちらの存在を認識した。」
「ならば先手を打つ。」
張が倉庫奥のシャッターを開ける。
そこには一年以上かけて密輸された武器が整然と並んでいた。
李、張、陳の三人が部下へ武器を配っていく。
・九五式自動小銃
・九二式拳銃
・八八式汎用機関銃
・六九式ロケットランチャー
・携帯型対ドローン妨害装置
・防弾ベスト
・予備弾薬
戦闘員たちは黙々と装備を身に着け、弾倉を確認していく。
王は地図の一点を指差した。
「ここだ。」
「北八王子魚人街Bゾーン。」
「ヘルハウンド中隊の巡回ルート。」
「工事車両に偽装して待機。」
「軍警が接近した瞬間、一斉にコンテナから飛び出し包囲する。」
陳が頷く。
「奇襲ですね。」
「ああ。」
「最初に指揮車両。」
「次にドローン部隊。」
「最後に装甲機動歩兵。」
「混乱したところを一気に叩く。」
倉庫の外では、王専用の黒いベンツが待機していた。
後部座席には王。
運転席には専属運転手。
助手席には王の実弟が座る。
王自身も探索者ランクSの実力者であり、この作戦の総指揮を執る。
さらに護衛として二台の黒いセダンが随伴する。
セダンには探索者ランクAのディープワン・サメ型戦士三名と、銃器で武装した護衛八名が分乗していた。
彼らは王直属の親衛隊であり、組織最強クラスの護衛部隊だった。
「出発だ。」
王の命令で大型工事用トラック六台、支援用ワンボックスバン二台、ベンツ一台、護衛セダン二台が次々と倉庫を出発する。
工事車両を装った車列は夜の道路へ溶け込むように走り出した。
その頃――。
彼らはまだ知らなかった。
八王子軍警はすでに敵の動きを察知し、女性だけで編成された精鋭部隊「ヘルハウンド中隊」をはじめ、小型装甲機動歩兵、ドローン攻撃小隊、装甲プロテクター歩兵、軽機動装甲車部隊を展開。
武装集団は、自ら軍警が構築した包囲網へ踏み込もうとしていた。




