閑話4 軍警名物 女の戦い 後編
間話 軍警名物、女の戦い 後編
北八王子魚人街Bゾーンゲート。
夜の警戒態勢に入ったゲート前には、八王子軍警のヘルハウンド中隊が集結していた。
大型ベース車両を中心に、ヘルハウンド装甲車が整然と並び、投光器が夜闇を照らす。
整備兵が装備を確認し、通信兵が各隊との回線を開いている。
先ほどまで柏木と内田が軽口を叩き合っていたが、内田雪乃の表情がふっと引き締まった。
「……じゃれ合いは、この辺にしとこ。」
その一言で、周囲の空気が変わる。
柏木も笑みを消した。
「何かあったん?」
内田は携帯端末を操作し、周囲の隊長たちへ情報を共有する。
「ここ最近、特亜系ハーフ魚人と東南アジア系のチョーチョー人どもが手を組んで、八王子へ勢力を広げようとしとる。」
「そのため、軍警への武力攻撃を計画しとる可能性が高い、という情報が入った。」
橋本の表情も険しくなる。
「家族マートの事件も、その一環ですか?」
内田は頷く。
「可能性は高い。」
「今日の家族マートで押収した拳銃。」
「ノーリンコ製・92式手槍改二型。」
「従来の92式をさらに小型・軽量化したモデルや。」
「9ミリ弾も大量に所持しとった。」
柏木は腕を組む。
「組織の下っ端が勝手に持ち出したんか……。」
「それとも……。」
少し考え込む。
「うちのベース車両の動きを探る偵察やった可能性もあるな。」
内田は静かに頷いた。
「せや。」
「だから今回は増援を連れてきた。」
柏木はようやく納得したように笑う。
「それで内田ちゃん、ドローン攻撃小隊まで連れてきたんやな。」
「本気やね。」
内田は戦術表示を大型モニターへ映し出した。
「説明する。」
「ドローン攻撃小隊はフルダイブ・ドローン戦闘システムを採用。」
「オペレーター一人につき四機を同時操作。」
「偵察と攻撃を兼任する。」
大型ディスプレイには部隊配置が表示される。
「第一小隊。」
「柏木中隊長指揮。」
「小型装甲機動歩兵 三機。」
柏木が頷く。
「了解。」
「第二小隊。」
「私の指揮下に小型装甲機動歩兵三機。」
「うち二機はドローン部隊とベース車両の護衛に固定する。」
その横で待機していた村上飛燕が敬礼した。
「飛燕機は?」
内田は即答する。
「飛燕。」
「お前は柏木中隊長直属。」
「支援任務や。」
「了解。」
十七歳の少女は迷いなく返答する。
「第三小隊。」
「月光隊長。」
「小型装甲機動歩兵 三機。」
「第四小隊。」
「姫路隊。」
「本部待機。」
「予備戦力とする。」
橋本が端末へ入力していく。
内田は続けた。
「ドローン攻撃小隊。」
「ベース車両一台。」
「オペレーター六名。」
「偵察兼自爆ドローン二十四機を投入。」
画面には二十四機の小型ドローンが次々と表示された。
「さらに。」
「三好隊長。」
「軽機動装甲車四台。」
「Bゾーン外周を警戒。」
「装甲プロテクター装備歩兵。」
「三個小隊。」
「総員七十二名。」
「16式装輪兵員輸送車九台。」
「指揮車両一台。」
「柏木第一小隊の後方より支援に入る。」
説明が終わると、ゲート前は静まり返った。
柏木はモニターを見つめたまま、小さく息を吐く。
「……ずいぶん大掛かりやな。」
内田は真剣な表情で答える。
「今回は相手の狙いが軍警そのものかもしれへん。」
「だったら最初から全力で迎え撃つ。」
柏木は不敵に笑った。
「そういうことなら。」
「魚人街を荒らす連中には、八王子軍警の怖さを教えたらなあかんな。」
ヘルハウンド中隊の女性隊員たちは一斉に敬礼した。
「了解!」
夜のBゾーン。
戦闘準備は、静かに、しかし確実に整えられていった。




