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深淵の符呪師 ヨグソトースの息子  作者: ケロン藤野


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第24話 ジャインアントローチ討伐


廃墟でショゴススライムを倒した二郎は、万能細胞片の入った瓶をリュックへしまう。


「まずは一匹。」


『幸先は良いの。』


火かき棒を肩へ担ぎ、廃墟を後にする。


舗装が割れた道路を歩いていると、周囲は草木が生い茂る荒れ地へ変わっていった。


ガサガサ……


近くの茂みが大きく揺れる。


『止まれ。』


ダニッジが低い声で言った。


二郎は足を止め、火かき棒を構える。


すると。


「キイイイイッ!」


甲高い威嚇音と共に、黒い影が茂みから飛び出した。


体長約五十センチ。


黒褐色の硬い外殻。


鋭い大顎。


六本の脚を素早く動かしながらこちらを睨みつける。


「ジャイアントローチか。」


『別名、八王子肉食ゴキブリじゃ。』


『成体は五十センチから八十センチほどになる。』


『今回は小柄な個体じゃな。』


ジャイアントローチは羽を震わせる。


「キイィッ!」


次の瞬間。


地面を蹴って一気に突進してきた。


「速い!」


だが、林との訓練で身につけた動きは伊達ではない。


二郎は半歩だけ右へ踏み込む。


ゴキブリは勢い余って二郎の横を通り過ぎる。


その瞬間を逃さない。


「そこだ!」


ブンッ!


火かき棒が大きく振り下ろされる。


ベシャッ!!


鈍い音が響き、ジャイアントローチは地面へ叩きつけられた。


脚を数回痙攣させると、そのまま動かなくなる。


「一撃か。」


『見事じゃ。』


『勢いを利用した良い一撃だった。』


二郎は慎重に近づく。


完全に動かないことを確認すると、外殻へ突き刺さった火かき棒をゆっくり引き抜いた。


「さて。」


「何が素材になるんだ?」


ダニッジが説明する。


『まず魔核を探す。』


『胸部の中央付近じゃ。』


『外殻は軽くて丈夫だから、防具や盾の素材になる。』


『大顎は短剣や工具の材料にもなるな。』


『脚も加工すれば符呪の触媒として利用できる。』


二郎は探索者ナイフを取り出し、胸部を慎重に切り開く。


やがて小指の先ほどの黒い魔核を見つけた。


「これか。」


火かき棒の先で魔核を砕く。


パリン。


黒い魔力が火かき棒へ吸い込まれ、魔力捕縛の符呪が淡く輝いた。


二郎は魔力電池シリンダーへ魔力を移し替える。


端末の表示が変わる。


魔力充填率 40%


「これで二匹。」


「あと三匹くらいで満タンになりそうだな。」


『その調子じゃ。』


『素材も無駄にするでないぞ。』


二郎はジャイアントローチの大顎と魔石、状態の良い外殻を解体し、七十リットルのゴミ袋へ丁寧に収納した。


「意外と売れそうな素材が多いな。」


『初心者向けの魔物ほど、数を狩れば良い稼ぎになるものじゃ。』


周囲を見渡すと、風で草が揺れている。


しかし、その奥からは再び小さく葉を擦る音が聞こえてきた。


「……まだいるな。」


火かき棒を握り直し、二郎は次の獲物を探してゆっくりと歩き始めた。

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