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深淵の符呪師 ヨグソトースの息子  作者: ケロン藤野


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第23話 初めての鑓水ダンジョンフィールドの探検


翌朝。


二郎は軽く朝食を済ませると、装備を確認して部屋を出た。


リュックを背負い、三輪電動自転車へまたがる。


「行ってくる。」


『初めての本格探索じゃな。』


「まずは生きて帰ることが目標だ。」


『うむ、それでよい。』


朝の涼しい風を受けながら、二郎はJR八王子駅近くの駐輪場へ向かった。


自転車を停めると、駅北口から駅ビルを抜け、南口へ向かう。


南口バスターミナルには、探索者と思われる者たちが既に列を作っていた。


「鑓水ダンジョンフィールド行きか。」


朝早いため、バスは十分おきに運行している。


ほどなくしてバスが到着した。


運よく窓側の席へ座ることができた二郎は、深くパーカーのフードを被り、外の景色を眺める。


すると車内で立っていた三人ほどの探索者が、小声で話しているのが聞こえてきた。


「あれ、山羊じゃね?」


「山羊獣人なんて初めて見たぞ。」


「珍しいな。」


二郎は聞こえないふりをした。


『放っておけ。』


『害が無いなら気にする必要はない。』


「そうだな。」


二郎は探索者用腕輪型情報端末を起動する。


次に作る武器を探して検索を始めた。


「斧も欲しいな。」


「小型メイスも悪くない。」


「フレイル……分銅鎖も面白そうだ。」


『今の二郎なら片手斧が一番扱いやすいじゃろう。』


『フレイルは慣れぬと自分に当たるぞ。』


「確かに。」


そう話しているうちに、一時間ほどで目的地へ到着した。


『鑓水ダンジョンフィールド前です。』


バスが停車する。


探索者たちが次々と降りていく。


目の前には探索者協会の買取センター。


さらに、その奥には巨大なコンクリート製の城壁とガンタワーが一体化した堅牢なゲートがそびえていた。


「要塞みたいだな。」


『ここから先がダンジョンフィールドじゃ。』


ゲート前には八王子軍警の警備兵が数名立ち、周囲を警戒している。


探索者たちは自動改札へ探索者カードや腕輪型情報端末をかざし、次々と通過していく。


二郎も腕輪型情報端末を改札へかざした。


『ピッ』


「八木二郎様、入場を確認しました。」


電子音声が流れ、ゲートが開く。


そのまま外へ出ると、大きな看板が目に入った。


『ようこそ 八王子ダンジョンフィールドへ』


初めて訪れた探索者らしく、何人かが記念写真を撮っている。


二郎も周囲を見渡した。


「ここが……ダンジョンフィールド。」


『気を抜くな。』


『ここから先は自己責任じゃ。』


二郎はリュックから火かき棒を取り出す。


魔力捕縛の符呪が刻まれた頼れる相棒だ。


そのまま慎重にフィールドを歩いていく。


十五分ほど進むと、景色が変わった。


崩れた住宅。


ガラスの割れた商店。


錆び付いた自動販売機。


まるで時間が止まった廃墟の街だった。


「ここから魔物が出るのか。」


『まずは建物を一つずつ調べよう。』


二郎は近くの廃屋へ足を踏み入れる。


ギィ……


床板が軋む。


すると部屋の隅で黒いゼリー状の塊が蠢いた。


『ショゴススライムじゃ。』


「よし。」


二郎は火かき棒を構える。


一撃。


ベチャッ!


二撃。


グチャッ!


三撃目で、粘液の中心に小さな黒い魔核が現れた。


「見つけた。」


火かき棒で魔核を砕く。


パキン。


魔核が割れると、ショゴススライムはズブズブと音を立てながら崩れ落ちていった。


その場にはぷるぷると震える万能細胞片だけが残る。


二郎は持参したトングで慎重につまみ上げ、小さなガラス瓶へ入れた。


「これが万能細胞片か。」


『鮮度が命じゃ。』


『すぐに保存するのが正解じゃな。』


火かき棒を見ると、魔力捕縛の符呪が淡く光っている。


「ちゃんと魔力を吸収したみたいだ。」


二郎は火かき棒から魔力電池シリンダーへ魔力を移す。


青い光がシリンダーへ流れ込んだ。


腕輪型端末の表示を確認する。


魔力充填率 20%


「一匹で五分の一か。」


『悪くない。』


『ショゴススライムをあと四匹倒せば一本満タンじゃ。』


二郎は瓶をリュックへしまい、火かき棒を握り直した。


「よし。」


「まだ始まったばかりだ。」


廃墟の奥へ向かって、一人と一匹は慎重に歩みを進めていくのだった。

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