第99話 謎のダンジョン 06
「ドロイム! あの弱っちいドロドロの液体みたいなアイツ?」
『そうだ。アイツだ。ちょっとティアが見てきたものとは色が違うかもしれねぇけどな』
ダンジョンを進みながら全員が理解できずに戸惑っているのがイフリートにも伝わってきた。
『おいおい! それは行けばわかるから今は目の前の素材回収に集中しろよ!』
「おう! 任せろ!」
「いやいや、素材回収って。S級の魔物を舐めすぎでしょ」
呆れるヘンリーとエミラ。二人がため息をついたそのときだった。
ゴゴゴゴゴ……
「なんだ? 地面が揺れているぞ」
表情が一変したノアが全方向に向かってサーチライトをかける。
「ハイソイラドブリンだ! 群れでこっちに向かっているぞ! 数が多すぎる。全方位的に攻めて来る!」
珍しく焦るノア。
「リリーとエミラはゴーレムを召喚してくれ! エミラはその後補助魔土術を全員に! イフリートは出てきたやつから燃やしまくってくれ! ティアとヘンリーはバディを組んで絶対に離れるな! 常にお互いの背面をカバーするように戦え!」
「「「了解!」」」
リリーゴーレムが現れて肩に乗っかるリリーとエミラ。ノアのクアトロとともに身体強化のバフをかける。
「二人は絶対にゴーレムから降りるなよ! エミラは遠隔でゴーレムを操って僕たちのサポートに徹してくれ! リリーはエアルヴァと一緒に群れの長を狙うんだ!」
「は、はい! わかりました!」
『この気配……かなりの量だな……』
エアルヴァが出てきた。珍しく不安な表情をしている。そしてノアが最後の掛け声をあげる。
「来るぞ! 全員集中だ!」
「ギャギャギャギャァ! ギィエ!」
統率された一斉攻撃で四方からパーティーを攻め込むハイソイラドブリンの群れ。
『邪魔だ! どけ!』
イフリートが全面を焼き尽くすがその後からどんどん襲いかかって来る。
「炎弾! 20連!」
「魔剣、デファイア!」
ティアとヘンリーの連携攻撃で一気に押し込む。後方をノアがバックアップするが数十匹というレベルではないものすごい物量で攻めて来る。そしてハイソイラドブリンの後方から魔土術が飛んできた。
『うおっ! あぶねぇ! ウォーターの5連発かよ。おい! ティア! 気をつけろ! 後ろに魔土術士系もいるぞ!』
「なんですって! ていうか目の前のアイツら……ヘンリー! 戦士系よ。いつもの斧を振り回すドブリンのスタイルじゃないわ! 剣と盾を持っているわよ!」
「うん。アイツら相当だな……ティア。魔土術は慎重に狙って! 嫌な予感がする」
ヘンリーの感覚をティアも共有していた。こいつらは編成を組んでじっくりと攻め込んでいる。無策ではない。
「でもスピードは負けないわ! ヘンリー前衛の私たちが突破口を開くわよ!」
「了解。あの魔土術士ドブリン部隊を叩くまで突っ込もう」
《リリー! 前方に一発お願い! その後私たちで突っ込むわ!》
《わかったわ! みんな! ゴーレムの足元へ一旦避難して!》
リリーが詠唱を終えて前方に向かって放つ!
「リリーキャノン!」
「ギギャァ〜!」
豪快な一撃がハイソイラドブリンの群れを一瞬で壊滅状態に変える。
「あらら。私たちが切り込む必要が無くなったわ」
しかし、後方、サイドから恐れることなく迫り来るハイソイラドブリンの攻撃に対応できないリリーゴーレム。そして再び前方からも現れる新たな部隊。
「炎槍、連射」
ノアが放つ炎と風が混ざった槍が一気にドブリンを蹴散らしていく。
「グハ!」
ヘンリーがティアをかばって斬られた! 致命傷は避けたものの腕に大きなダメージを負う。エミラゴーレムのハイソイラで復活するが何百と倒しても新しい部隊が襲って来るこの状況に焦りを感じるヘンリーたち。
「ティアとヘンリーは一旦退け!」
ノアの指示に従って一旦リリーゴーレムの肩の上に避難する。そしてノアも戻ってきた。
「これはとんでもない数だ。リリーキャノンとイフリートの炎で応戦しよう」
ドブリンの弓部隊が放つ大量の矢をバリアで防ぎながらノアが作戦を立てる。
「こんなの群れとかそんな規模じゃないぞ。間違いなく首領のドブリンキングがいるはずだ」
どんどん湧いて来るドブリンがゴーレムを登り始めた。それをエアルヴァが風で吹き飛ばす。
「前方のはるか奥に馬鹿でかい魔素を感じる。多分アイツだ。このままリリーゴーレムに乗ってドブリンキングまで進みたいがアイツらゴーレムのコアを狙っている」
『ゴーレムは動くと隙が生まれるからな。このまま迎撃し続ける方が得策かもな』
「私が何回かリリーキャノンを放ちましょうか?」
「いや、それだとリリーのマナが持たないから、今はミネルヴァと風魔土術を放ってティアたちを援護してほしい。キングが来たらキャノンを撃ってもらう感じかな。もし可能ならリリーはティアたちがドブリンを倒している間にゴーレムを前進させてほしい。コアを守りながらね」
「了解です!」
「あと、イフリートはティアを守りながらドブリンを殲滅してほしい。ヘンリーが攻撃に集中できた方がいいから」
『わかった。任せとけ!』
「エミラはこれまで通り皆の回復と補助魔土術の継続ね。ただ、もう少ししたらキングから魔土術の攻撃があるかもしれないから結界の意識も持っておいて。その時は僕らのことを気にせずティアとゴーレムのコアを包むように張ってくれ」
「わかったけど、そんなにゴーレムのコアが大事なの?」
「……男のロマンだ」
激しく頷くイフリートと理解できない他のメンバー。こうして持久戦へと切り替わった戦いが始まる。
ヘンリーとティアの善戦もあり、ゴーレムを前進させながらハイソイラドブリンの猛攻に耐え続けるパーティー。そのまま1時間が経過した頃、ついにドブリンキングが姿を表す。
「ウゴゴゴゴ!」
一振りで地面が大きく割れる強烈な一撃。スピードはそれほどないため、ダメージは喰らっていない。
「本当に魔土戦士みたいだな……」
ドブリンの何倍もあるその巨漢が右手にもつ斧と左手に持つ盾。気力がかなり減っているティアたちには十分な威圧感だった。
《リリー、いけるか?》
《了解です! リリーキャノン!》
リリーゴーレムが強烈な風の大砲を放つ! しかしニヤッと笑ったドブリンキングは盾を突き出して真っ向から受けると、リリーキャノンは跳ね返されてしまった!
「エミラ! リリー! 危ない!」
「そんなことって……結界!」
エミラが結界をはるが詠唱の時間が足りなくてひ弱な結界しか張れない。迫り来るリリーキャノンを前にどうすることもできない!
「リリー! エミラ! 危ない!」
ティアが思わず目をそらす。もう駄目か……
「テレポート!」
次の瞬間ノアがエミラたちの前に現れた。
「うおおお! ミラーだぁ! 間に合え!」
角度を変えてリリーキャノンの一部を見事に跳ね返してリリーたちを守ると同時にハイソイラドブリンを一掃した。しかし……
反射しきれなかった衝撃によってリリーゴーレムのコアは粉砕されてしまった。




