第96話 謎のダンジョン 03
「この後モグるの? 危ないわ! 誰もサポートしないんじゃ魔物に襲われてしまうでしょ」
エミラの正論にノアもそうだねと返事をする。
「そこでイフリートだ。ソイラを掘削する側も地上付近もイフリートに見張っててもらうよ。大丈夫、そんなに長い時間モグッたりしないから」
「エミラ、無駄よ。お兄ちゃんが言い出したら聞かないのはわかっているでしょ。私たちは休みましょうよ。私、食べたら寝るわ」
兄の心配をしない妹、さすがロイの家族だ。
「ところでヘンリー、今日の戦いで剣はもう……」
「うん。明日もこれで乗り切るのは無理だと思う。替えのものは一応あるけどあまり強度がないからどこまでもつかわかんらないんだ」
ヘンリーの今日の活躍を見れば誰もがそう思うだろう。ひたすらS級魔物を斬り倒していたのだから。
「これを使ってよ」
ノアが自分のロングソードをヘンリーに渡す。
「え? これってノアの大切な剣じゃないか。使えないよ」
「いや、単に自分で見つけたから自分で使ってたくらいのものでヘンリーが使いやすならむしろヘンリーの新しい武器が完成するまでそれを使っていてほしい。正直僕の戦闘スタイルは魔土術メインだから今日もほとんど剣は使っていない」
「でも明日からどうするの? 武器をあまり使わないとはいえ、必要でしょ?」
「これさ。レアラグローバ。こいつはロングソード以上に使い慣れているし、短剣としても扱えるからダンジョンで戦うなら僕はこれがいいと思っていて。だからヘンリーはこのロングソードを使ってほしい」
改めてじっくりとグリップを握って感覚を確かめるヘンリー。拳の位置をガードから1センチ開けて握る。ブレイドの長さなど、一つ一つ感覚を確かめていく。
「うん! すごく合いそうだよ。ありがとうノア。明日ダンジョンで剣を振って最終的な感覚調整をすればなんとかなりそうだ!」
笑顔で頷くノア。そしてイフリートからこの先の展開を聞こうと思ったがティアとリリーが眠ってしまったのでやめておくことに。
「よし! それじゃあイフリート。行こうか」
『モグラーとしてのノアの実力を見せてもらいたいところだが、確認させてくれ。探掘士の資格は持っているのか? ランクがあるんだが……持っていてもスコッパーかシャベラーだよな? このダンジョンをモグるなら最低でも――』
「ふっふっふ……当然探掘士の資格は持っているよ。そのランクはブルドーザーだ」
『何! かなりモグれる奴だったんだな! ちなみに調査士の資格も?』
「S級だよ。イフリート君」
『やるじゃねぇかノア! 見直したぜ! 単なる強い男ではないとは思っていたが、物作りのセンスがあって、モグラーとしても一流なんだな。よ〜し、俺もやる気出てきたぞ!』
「ちょっと! あんたたち! このマリーボイドから離れると危険だからスタートはこの近辺にしてよ! いいわね!」
「「了解です! ボス!」」
そう元気に返事して駆け足で二人は結界の外へ出て行った。
「本当に子供なんだから……ていうかまだ子供だったわね……信じられないけど」
ヘンリーも笑って同調していた。
「よし、この辺からいってみるか! サーチライト<スキャン>」
ノアがしゃがんでダンジョンの地面に手を触れて早速スキャンニング。
『それさ、一体何しているんだ? もしかして光魔土術の改良か? さっきも何回かやってたよな?』
「マナの強さ、魔素の強さを探知してある程度何かありそうな場所を絞っているんだ。魔物の索敵にも使えるから、さっきは使っていたんだけどね。あんなにウジャウジャ出てこられたら逆に必要なかったかもね」
『その歳でオリジナルの魔土術か……ノアは本当に何者なんだ?』
「単なる物好きだよ。僕はガイアの謎を解き明かしたいだけだ。そして天空の塔の謎もね」
そう言いながら掘削ポイントを見つけてレアラグローバを装着し、ザクザクとモグり始めた。
「イフリート、最初はこの探掘地点を守ってて。何もなさそうだったら奥まで来てもらって大丈夫!」
『OK! 任せろ!』
ノアがどんどんモグッていく。しかし探掘スピードはいつもの半分くらいだ。
(ここのダンジョン、魔土の硬さが異常だな。スピードはこれ以上出せない。しかも……この辺り全て低級魔土だ)
《どうだ? 順調か?》
《いや、この辺りは低級魔土みたいだ。何もなさそう。もう少し奥までモグッてみるよ》
《あぁ、お前らヒューマニア王国とここガイアでは魔土の質が違うからなぁ……》
ノアがモグること30分。探掘されたものは一つも無かった。選りすぐりした結果ではない。何も見つけられなかったのだ。イフリートもノアの側で状況を見ていたがノアのモグラーとしての技術と判断に全く問題は無かった。
「一旦戻るか……」
マリーボイドに戻ったノアとイフリートは感じたことを話し合う。
「まず、僕のこれまでの経験からこのダンジョンについて分析すると、奇妙な点がある」
『ほう、それはなんだ?』
「……階層の魔土の質と魔物のバランスだ」
ピンと来ないイフリートを見てノアは説明を続ける。
「僕がヒューマニア王国でモグッていたダンジョンでは基本的な原則として、下層に行けば行くほどに魔土のグレードは上がっていた。そして魔物のグレードもそれに合わせて上がっていた」
『つまり、ダンジョンの上層では低級魔土エリアで弱い魔物が、深く下層まで入っていけばいくほど高級魔土のエリアに到達し、強い魔物が出てくるってことだよな?』
頷くノア。
「次にイフリートも知っている通り、ヒューマニア地域とここグランサンクチュアよりのガイアの大地ではそもそも魔土の性質が違う。異常なほど硬い。そしてガイアの大地には強い魔物が現れるけどその地表面は低級魔土と中級魔土で覆われている」
『そうだな。表面が高級魔土のガイアの大地なんて俺も知らねぇからな』
「ここまでの一年三ヶ月くらいかな、ガイアを旅して得られた程度でまだまだ少ない経験だから確証はないんだけど、おそらくこの硬質な低級魔土は……以前高級魔土だったんじゃないかな? そして、あることが原因で低級魔土に変化して経年による変化とともに今のような硬質の低級魔土になったと僕は仮説を立てている」
『まぁ、間違ってはいない推測だと思うが、ノアの言う原因って魔物が魔土の魔素を吸い取ったってことだろ? よくあることだろ』
イフリートの考えに同意するノアだが少し視点が違うようだ。
「……僕の推測が正しければ……このダンジョンの下層にはものすごいお宝が眠っている」




