第95話 謎のダンジョン 02
ダンジョンをどんどん迷わず奥へと進むイフリート。明らかな急勾配の下り坂だ。別ルートがあるわけでもなく今のところ一本道だ。1時間は経過しただろうか。
『皆、警戒しろ。ここから魔物がウヨウヨ出てくるぞ』
「サーチライト<スキャン>」
ノアが前方の様子を探る。明らかに強いマナのエネルギーが多数。
「これは本当に強いぞ。クワトロ!」
全員のスピードを4倍に。
「エミラ。補助系魔土術をお願い。それからエミラはゴーレムを出して自分の守りを固めて。多分他のメンバーも自分を守るので精一杯だと思う」
「わ、わかったわ」
緊張した様子のエミラとリリー。
「来るぞ!」
ドドン!
両サイドの壁が破壊されて魔物が一気に襲いかかってきた。
「ドロールが4体! ハイソイラワームが2体だ!」
『炎圧』
イフリートの炎が魔物を焼き尽くした。一瞬の出来事だったが、ノアはまだ気を緩めていない。
「前から来るぞ! キラーソイラパンサー10頭だ!」
「横からハイソイラオークよ!」
「リリーハリケーン! ウインドアロー!」
リリーの同時詠唱魔土術。キラーソイラパンサーが吹っ飛び風の矢の餌食に。
逃した2匹がエミラに飛びかかって来るがエミラゴーレムの強烈なパンチで迎撃する。
「水槍!」
ハイソイラオークの腹を貫通する威力。イフリートもうなる。その後ヘンリーとティアによって殲滅に成功したが、一度の攻撃でここまで魔物が群れをなして襲ってきたのは初めてのことだった。
「ちょっと待って。初っ端からあんなに出て来るの? しかもほとんどS級じゃない!」
エミラが大騒ぎするのも無理はない。イフリートも驚いている。
『前よりも魔物が群れを成して攻撃してきたな……こりゃ奥で何かあったんだろうなぁ』
「やめてよ。これ以上脅すのは」
メンバーが落ち着きを取り戻すまでノアはその場で留まることに。
「皆、さっきの戦いは特に悪い点はなかった。冷静に応戦できていたよ」
「うん。僕もそう思う。必要以上にS級とか意識しなくていいんじゃないかな?」
自分たちもそれなりに強くなっていることを強調してヘンリーがエミラとリリーに声をかける。当然二人ともそれは理解していた。
「大丈夫よ。ちょっとダンジョン内で想像を超えた群れがいきなり来たから驚いたけど、今はかなり落ち着いたわ!」
「私も大丈夫です。皆と連携が取れていたから危険は無かったし、次からはもう少し冷静にいけると思います!」
心強い返事にノアも笑顔を見せる。
「よし! 進もう」
再びダンジョンを進んでいく。ふとノアが何か違和感を覚える。
マナの気配が……だが前方も後方も特に……ん?
見上げた上部に巨大な魔物、ハイソイラスパイダーが5匹現れた。
「皆! 上から来たぞ! 避けろ」
粘液のようなものを飛ばしてきたがイフリートが熱で溶かす。そのまま燃やしてしまいたいところだが、このスパイダーこそがイフリートがダンジョンにきた目的の一つだった。
『ノア! あいつの体内の糸を回収するんだ! 燃やさずに倒してくれ』
「わかった! リリー! 風でハイソイラスパイダーを壁にぶつけてくれ! ティアはそこに炎弾を脚にぶち込んで!」
ノアの指示に素直に従うリリーとイヤイヤ実行するティア」
「後方からキングソイラコングの群れが来たわよ!」
「了解だ。任せろ!」
ヘンリーとイフリートで応戦する間に解体完了したノア。大量の糸を回収する。
「ウゲェ〜なんかすごく粘ついているぞ。これでいいんだよね?」
『いいんだ! 後で俺が加工するから! おい、前方からギガンテスアントが来たぞ!』
「水弾、20連」
的確な狙いでギガンテスアントの脚を撃ち抜いていく。
「よっしゃあ! 更なるお宝ゲットだぁ!」
『お前、恐怖心とか全くないんだな? 一応そいつもS級だぞ。』
「ハイソイラ!」
エミラによって全員の体力が一気に回復する。
「エミラ助かった! ありがとう!」
ゴリラを斬りまくってヘトヘトのヘンリーが喜ぶ。しかしながらこのパーティーがすごいところはこれだけ魔物の群れに襲われても誰一人攻撃を受けていないことだった。
「よし、アリンコのツノと硬質な殻もゲットしたぞ。皆、先へ進もう!」
待っていても魔物がウジャウジャ出て来るだけだと判断したノアが前進する。
「クッソ〜、折角の怪しいダンジョンなのにモグることができないなんて……絶対にここには何かがあるはずだ」
魔物が次々と出現するこのダンジョンでは気軽にモグラーとして魔土を探掘できない。ソイラマニアのノアでもパーティーメンバーを危険に晒すわけにはいかないと考えていた。
更に進むこと1時間、強い魔物と戦い続けて気力がかなり下がって来たところでイフリートが何かを見つける。
『あ! あそこで休憩できるぞ! 安全地帯だ』
「本当に? よかったぁ〜すごく助かるわ」
このエミラの一言、全員同じことを考えていた。安全地帯に到着すると早速座り込んで休憩するティアとエミラ。ヘンリーとリリーは一応周囲を警戒している。
「ったく、何なのよ! このダンジョンの魔物出現率! やばすぎでしょ!」
「さすがに疲れたわね……」
本音でついぼやいてしまうティア。ヘンリーはイフリートに再確認する。
「ねぇ、どうしてここは安全だとわかるの?」
『対魔物用の結界が張ってあるからだ。ここにはどれだけ強い魔物でも入ってこれねえ』
魔物を遠ざける結界がダンジョンにあるのかと不思議に思うノア。だとしたら誰がなんのためにここに結界を張ったんだ?
とりあえず、イフリートを信じてこの安全地帯にマリーボイドを建てる。
「よし完成した! 皆、今日はこのダンジョンの中で一泊するぞ」
信じられない展開だけど、他に方法がないから仕方ないと思っているエミラとリリー。
時間は夕方の6時を回った頃だった。とりあえず、マリーボイドに入って休憩することに。
テーブルに軽食とお茶を出すリリー。食事を作る気力はノア以外、誰も残っていない。
せっせと一人で食事の準備をしている。
「ねぇ……なんでノアはあんなに元気なの? 一番疲れているはずでしょ。魔物と戦って更に解体もしてたのに」
『あやつの気力が尋常じゃない。そなたらも体力は魔土術で回復しておるが気力は底をついておる。その差じゃな』
珍しくエアルヴァが出て来て説明してくれた。20分後、ノアが食事をテーブルに並べる。
「食事の後、皆は休憩ね。明日の朝から動き出すよ。僕はイフリートと一緒にこの辺りをモグッてみる」




