第90話 楽しそうなイフリート 01
フルーゲに乗ってグランサンクチュアに向かって突き進む希望の剣。楽しげな会話の中にイフリートも混ざっている。
『おい、この飛行艇は誰が造ったんだ?』
ティアの身体から抜け出てイフリートがパーティーメンバーに話しかける。
「へぇ〜そいういうこともできるんだね! じゃあ、エアルヴァも可能なはずだよね」
ヘンリーがイフリートの質問を遮るようにリリーに話題を振る。リリーがエアルヴァに何かを求めているようだが、エアルヴァは外に出ようとはしないみたいだ。
「必要と思った時は出るって言ってるよ」
「精霊同士でもキャラは全く違うみたいね」
エミラが笑っている。そしてイフリートがノアの周りを飛び回って話しかける。
『お前だな、ノア。この飛空艇を造ったのは』
「そうだよ。気に入ったかい?」
『あぁ、かなり気に入った! 俺もよ。火を扱う精霊だけあってこれまで職人との絡みが結構あったんだ。それなりの知識を持っているつもりだったが、こんなに美しく組まれた機構は初めて見たぜ。魔土をこうやって活用する方法があるとはなぁ』
イフリートにフルーゲの仕組みを説明するノア。その話をワクワクしながら興味深く聞いては意見を述べるイフリートの関係を見て、ついにマリアに続く助手2号誕生かと思うエミラ。
『なるほど! そんな手があったかぁ! だったらよ、その出力の風属性魔土に俺が火力も加えてやるよ。そしたらもっとスピードがあるぜ』
「その場合って魔土はイフリートの力に耐えられるの? 一応動力等の重要な部分は超級魔土を使っていて、機体の大部分は高級魔土なんだけど」
『流石に高級魔土だと俺が造った炎の祠程度の耐久性にしかならないな……だったら一時的な加速としてブースターを搭載ってのはどうだ?』
「おぉ! それいいね! 一瞬の出力アップなら問題ないしね! この操縦席にレバー増やしてブースター造ろう! あぁ〜早くグランサンクチュアでつくりたいよ〜」
『ん? 作るなら別に鍛冶場に行く必要ねぇぞ。俺が炎をコントロールすればいいんだろ? ノアのイメージするように熱を通してやれるぜ。温度も自由にコントロールできるから大きな炉の必要は全く無いぜ!』
ノアがこれまでティアでも見たことがないほどの笑顔を見せる。
「ほ、本当か? 相棒! 最高じゃないか!」
ノアに褒められて、イフリートもまんざらではないという表情だ。
《あやつ、やっぱりこのパーティーについてきてよかったではないか》
エアルヴァがリリーに愚痴をこぼす。あれほど嫌がっていたのに。
《そうですね。確かに。ウフフ……》
リリーの返事にティアたちも笑う。
「本当よね!」
「え? 今のエアルヴァさんの声が聞こえたの?」
リリーが自然と聞いていたエアルヴァの念話はティアだけでなく、エミラとヘンリーにも聞こえていた。そう、エアルヴァはリリーのマナフォンで話しかけていたのだ。
《どうやらリリアナの精神力が上がって、妾も周囲の人間と話ができるようになったようだな》
《すごい! 私は今風の精霊と話しているのね!》
《イヤイヤ、マナを扱う技術が高いエミラやティアはともかく、僕なんかが精霊の声を聞けるなんて奇跡だよ》
素直なリアクションに笑ってしまうエアルヴァ。
《お主らは十分に強くて清らかな心を兼ね備えておる。とても人族とは思えないマナの力もな。妾と話ができることも納得じゃ。最も驚かされるのは、やはりあの男だがな》
全員が理解する。伝説に出てくる風の精霊エアルヴァですら、ノアの存在には一目置いているということを。
『なんだと! 魔族のコアを使って魔獣を卵から孵化だ? 本気か?』
「うん、これなんだけどね……一年以上もずっとマナを注いでいるんだ。今でもね」
イフリートに黄金の卵を見せるノア。
『こ、こいつは驚いた……おいノア。こりゃ……幻獣どころじゃねぇぞ』
イフリートのつぶやきに全員が耳を傾ける。
「え? どういうこと? 僕の工房の助手の卵からはグリフォンが産まれたんだよ」
『そいつのマナの影響だろ? しかもよ。数ヶ月前に卵からキンタマが孵ったんだよな?』
(……精霊の癖にキンタマ言うな)
エミラが一応心の中でツッコむ。
『おそらく、魔族のコアとノアのマナという組み合わせがとんでもない奇跡を生み出したことは間違いないぜ。俺にはそのキンタマの魂を感じることができるからな。グリフォンとかそんな幻獣レベルじゃねぇよ』
「やばいね。楽しみ過ぎて待ちきれないや。イフリートはいつ頃キンタマが孵化するかわかる?」
「ノア……もういいからキンタマ言うな……」
ヘンリーが笑ってエミラを宥める。そしてイフリートが暫くし黄金の卵を見つめて、ノアの質問に答える。
『多分あと一ヶ月以内だな』
「「「嘘!」」」
パーティー全員が驚く。ついにあの卵が孵化するのか?
「……ここまで結構苦労したからなぁ。そうかぁ……神獣かぁ」
《あのエアルヴァさん、神獣ってどういったものですか?》
リリーが尋ねる。エアルヴァはザックリとしたことしか言えないと前置きしながら答える。
《まぁ、フェンリル、ドラゴン、リヴァイアサンとかその辺じゃな》
「マジで? お兄ちゃんのペットでフェンリルとか出てくるの? 最強過ぎて無理」
ティアが不満そうだ。せっかくイフリートを宿したのにまたノアに突き放される気分になったからだ。
「ねぇ、ノア。ちゃんと育てられるわよね? あなたが喰われるとか無いようにしなさいよ。このパーティーのリーダーなんだから先に死んだらダメよ」
「エミラもすごいこと言うね。流石に主人を食べることはないと思うけど、まぁ、僕はそもそも神獣に負ける存在ではないから大丈夫だよ」
大きく出たノアだったが皆がその通りだと納得してしまった。
「皆! 地上にソイラボアの群れよ! あと、2時と5時の方向からハイソイラコンドルが5羽、迫ってきているわ! 私たちが狙われているようね」
ティアがしっかりと索敵の役目を担っていたことにエミラとヘンリーは驚いた。そして的確な指示を出す。
「リリーは風でコンドルの自由を奪って止めて。私が炎で仕留めるわ。エミラがフルーゲを操縦してお兄ちゃんとヘンリーでボアを仕留めて!」
「「「了解!」」」
「狩が終わったら久々のバーベキューにします! 皆頑張りしょう!」
珍しいリリーの掛け声に皆のモチベーションが上がる。
「よっしゃあ! 行くぞ!」




