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グランサンクチュア〜地底天空都市の伝説〜  作者: 大森六
第三章 ガイアの大地

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第86話 ガイアの祠 03

 ノア達を囲うように舞った煙の正体はリリーが唱えた風魔土術(まとじゅつ)だった。炎を風で吹っ飛ばして防御している。


「水弾、20連」


 ティアが水の弾丸を放ち、イフリートを蜂の巣のように穴だらけにする。


 そしてヘンリーが風の魔剣で胴体を一刀両断にした。


「やったか? 手応えは全く無い……」


 すると、ヘンリーの背後にパッと現れたイフリート。



「ヘンリーしゃがんで! 水槍!」


 ノアの巨大な魔土術の一撃をまともに喰らって焦るイフリート。


『おいおい……今の一撃は結構やばかったぞ。こりゃビビったわ。お前ら結構強いな。面倒なドワーフ達よりかは楽しめそうだ! これならどうだ!』




 炎の塊がイフリートの頭上でどんどん大きくなっていく。


『いっけ〜! 火の玉だぁ!』


「ウォーター!」


 ティアが必死で巨大な火の玉を止めようと水魔土術を放つが勢いが止まらない。


「やばい! ヘンリー!」



 ズバッ! ティアの呼びかけに応えるかのようにヘンリーが飛びかかって炎を一刀両断する。



「アイツもう許さないぞ……」


『アッハッハ! やるじゃねぇか! 俺の炎を斬るやつなんて久々だわ! もっと楽しませてくれ!』


「お〜い、ティア、ヘンリー! クアトロかけてエミラもバフ掛けたからこの炎バカをやっつけちゃっていいよ! エミラとリリーは僕が守るから大丈夫だ。まぁ、そもそもそいつの弱っちい炎じゃリリーの風には勝てないから守る必要もないけどね」


 ノアがサラッとイフリートをあおる。


『な……なんだと……この炎の精霊イフリート様が人族にバカにされるなんてことが……』


「バカにしているんじゃなくて単なる事実よ。炎バカ」


 ティアの一言でさらにカチンときたイフリート。


「なんだと! このチビ女が! テメーのひ弱な水でチョロチョロ攻撃されてもなんともねぇんだよ! わかったら大人しく焼かれて死にやがれ!」


 ティアに暴言を吐いたイフリート。その瞬間、炎の祠の中で凍りつくノアとエミラ。そして焦ったティアがリリーの表情を確認する。



 ゴゴゴゴゴ……


「なんですって……私のティアに今、なんて言ったの?」



『あぁ? なんだチビ2号。どいつもアホばっかだな。とりあえずそこで黙ってこのチビ1号が焼けるのを観てろ』



「やばい! おい、炎バカ! これ以上何も言うな! お前死ぬぞ」


 ノアが慌ててイフリートを止めるが最早遅すぎた。リリーの風がどんどん大きく弧を描き始める。


「ダメよリリー! リリアナ! 落ち着いて! ここでその竜巻は全員を巻き込んでしまうわ!」



 エミラの言うことは最早リリーには届かない。怒りモードになってしまった。しかしちょっとした煽りでここまで怒るのも不思議に思えるエミラ。以前とは様子が少し違う気がする……



『おい……イフリート。貴様随分でかい態度でこのわらわに敵意を示したな。その覚悟はできているということだな?』


『あぁ? 誰だ? お前? チビ2号が調子に乗りやがって』


 イフリートの炎が渦を巻いてリリーに向かって放たれた! しかし、それをノアがミラーで弾き返す。


『アジールの血を引き継ぐものよ。わらわの事は気にするな。問題ない』


「え? あ……はい」


 リリーが左手をイフリートに向かって伸ばす。細くて鋭いスクリューがイフリートの身体を一瞬で貫く。


『ぐあ! なんだ今のは? 普通の風魔土術じゃねぇぞ! ……ってまさかお前は』



「リリーすごいわ。いきなりどうしたの? あの時とは違う雰囲気だわ」


 ティアも戸惑って動けない。そしてヘンリーにとっては初めて目にするリリーブチ切れモード、ますます動けない。



 容赦無く飛んでくる無数のスクリューに堪らず防御するイフリート。


『ファイアウォール!』


 溶岩のような分厚くドロドロの熱い壁がスクリューをかき消す。



『ちょっ、ちょっと待て!』


『待たぬわ。こやつらの邪魔をするモノ全てこのわらわが消し去ってくれよう』


 そしてリリーが左手の掌を上に向けて小さな竜巻を作り出す。


「おいおい……まさかあの時の竜巻を放つつもりか? ここは地下空間だぞ!」


 察したティアとヘンリーが急いでノアの元へ戻る。


「お兄ちゃん、どこに逃げればいい?」


「リリーの後ろだな。ここは天井が無くなるはずだ」


『おい! エアルヴァ! お前なんだろ? 俺が悪かった! 頼むからこの祠を壊すのはやめろ! 俺が長い年月をかけて集めた高級魔土ハイソイラで――』



『リリーハリケーン』



 リリーがボソッと呟いた瞬間、竜巻が大きくなりあっという間に炎の祠の天井部分を破壊してガイアの地層ごとふっ飛ばしていく。


『ぎゃあ!!! 頼むからやめてくれー!』


「バリア! 皆、ここから動いちゃダメだぞ。リリーは大丈夫だって自分で言ってたから様子をみよう」


 ノアを中心に固まって強固な物理防御結界魔土術を唱えてリリーを見守る。


「リリアナ! 大丈夫なの!」


 リリーの姿があまりに変貌し過ぎて不安を感じるエミラ。ニヤッと微笑んでリリーは竜巻を更に大きく膨らませていく。



『おい! エアルヴァ! 俺はお前がいることを知らなかったんだって。もうやめろ……って言ってもここまで壊されちまったら……』


 深く潜ったガイアの地層にあったはずの火の祠に太陽の光が大量に差し込む。巨大クレーターレベルの大きな穴ができて祠の美しい空間を一瞬で破壊してしまった。


『イフリート、こんなところで何をしておるのだ? 炎を司るお主がガイアに潜って暗闇に隠れてどうする。サボらずに他の精霊を探さぬか!』


『俺だって長いこと探したさ。でもここガイアの大地にはいねぇんだって。あいつら、きっと何処かに消えちまったんだよ! いないものは仕方ねえだろ? だから諦めて好き勝手このガイアで楽しもうとしてたんだ。それをお前がこんな風に俺の祠を……』


 跡形もなく吹っ飛んだ美しい炎の祠を見ながら悲しそうな表情のイフリート。それを一蹴するかのようにリリーが罵る。


『こんなくだらないことをしている暇があったら妾と共に来い! 共に残りの精霊たちの行方を追うのだ』


『相変わらずお説教ばっかだな……俺はお前の子供じゃねぇぞ。全く……』


 二人の会話を聞いていたノアたちは確信する。リリーには風の精霊エアルヴァが宿っている。


「リリーが我を忘れるほど怒ったときに、現れていたのはおそらくまだ精霊を上手く認識できずにいるからだろうな」


「どうすればいいのかしら。このままだと精霊にのまれてしまうとか?」


 心配するエミラに笑顔で否定するノア。


「大丈夫だよ。それよりも今はあの炎バカをどうするかだ」


「どうするって、どういうこと? このまま僕らはリリーを連れてここを離れたらいいでしょ?」


 ヘンリーの疑問、それはティアもエミラも同じ考えだったが……再び笑顔で否定するノア。



「いや、それじゃあ全く面白くない……ティア、あのイフリートを宿そう!」



「「「……はぁ?」」」



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