第130話 久々のヒューマニア王国
「ウサ婆、ティアたちが王宮エリアに入ったら、テレポートできないよね?」
「そうだがね。結界を張られているから無理だがね」
「だったら王宮の敷地に入る直前でテレポートしちゃおうか。そこからは自力でヒューマニア王国へテレポートできるポイントを探して、捕まる前に逃げちゃうってのはどうかな?」
「面白そうだがね。ティアたちに事前に連絡しておいた方がいいがね。いきなり現れると心臓が口から飛び出そうになるがね」
先日のドワーフ親子と一緒に突然現れた一件、ノアに驚いて気絶してしまったウサ婆にとって本当に恐怖体験だったのだろう。早速連絡をとるノア。
《だったらもうすぐ王宮エリアに入るよ。状況は皆も把握しているから大丈夫。早く来たほうがいいわ!》
《了解!》
「エトラスさん、ちょっと王宮に行ってきます! しばらく戻ってこないけど心配しなくていいですからね。それじゃ!」
「え? あ、わかった……ってもういっちゃったよ」
いきなり魔土車の中にノアが現れた。構えていたとはいえ、やはり慣れないとエミラは思う。そして、王宮エリアに入ってノアはちょうどいい転送地点を見つける。
「ウサ婆、あそこ。高級魔土の質が良さそうだね。魔素が安定してる気がする」
「うむ。問題ないがね。それじゃ、いくがね」
そう言ってサラッと扉を開けて出ていってしまった。
「キ、キサマ! さっきのスパイじゃないか! どうやってここに!」
いきなりノアたちが車の扉を開けて出てきた状況を目にした警備兵が困惑する。何が起こったのかわからず混乱している。
「捕えろ! 謎の獣族もいるぞ! 客人を襲撃した」
「ご、ごめんなさい! 今急いでいるから、また後でね! 襲撃なんてしてないし!」
そう言ってノアは目的のポイントまで来てウサ婆の手を握り、テレポートを唱えた。一瞬で消えてしまった二人に呆然とする警備兵たち。またしても逃げられてしまった。
* * *
「う〜ん、やっぱり上手くいかないなぁ。もう少し、マリリンの羽を交互に絡み合うように重ね合わせて……」
ノア工房でマリアが新しいアイデアを形にしようと頭を悩ませていた。庭でマリリンが気持ちよさそうに寝ている。今日のヒューマニア王国はとても心地よい気候だ。
「ちょっと休憩しようかな。マリリンとガイアの大地へ散歩に出かけよう! まぁ、飛んでいくから散歩じゃないんだけど。ふふふ」
庭に出てきたマリアが王宮から出てきたリリカを見つけて挨拶する。リリカもすっかり王宮生活に慣れてしまった。魔土術学院の教員の仕事をこなしつつ、王宮と学院の図書の間に入り浸るのが日課である。
「リリカさんは今から学院ですか?」
「いや、今日はお休みよ。さっき図書の間でゆっくり時間を過ごして、太陽の光を浴びに庭に出てきたところ。ここには緑があるからね。ここでゴロンって昼寝するのがとても気持ちいいのよ〜」
二人が庭で休憩し、何気ない会話で盛り上がる。
そこへ執事のヘンドリックとロイがやってきた。
「あれ、リリカ。図書の間にいるのかと思ったぜ。休憩か?」
「えぇ。ノアみたいに一日中図書の間に籠るなんてできないわ。私も歳かしらね」
「リリカさんはまだまだ若いですよ。お美しいし羨ましいです。それにノア工房長のあれは半分病気ですよ。信じられない集中力で。」
「ははは。あいつ今頃ドワーリア王国で問題起こしてそうだなぁ〜」
「ちょっとロイ! そういうフラグを立てないで! 今日は穏やかな休日のひとときを楽しく過ごしたいのよ」
皆で大笑いしていたその時、ノアとウサ婆がパッと突然現れた。
「「「うぎゃー! 出たー!」」」
いきなり目の前に息子が現れて目玉が飛び出そうになるリリカとマリア。
ヘンドリックが胸を抑えて口から泡を吹いている。
「あ、母さんと父さん! マリアとヘンドリックさんも。こんにちは! え! ヘンドリックさんどうしたの? 誰にやられたの?」
「いや、お前だよ!」
ロイの怒りと笑いと嬉しさが混ざったツッコミ。久々のヒューマニア王国だ。
「あ! ウサバ様! どうも、ロイです」
「ロイ〜久々だがね〜、そしてリリカとマリアだがね」
「覚えていてもらえて嬉しいです!」
マリアが復活する。リリカはまだ心臓の鼓動が激しく、呼吸も荒い。
「母さん、大丈夫? 仕事のしすぎじゃない? 少し休んだ方がいいよ」
「だから休んでたのよ! いきなり目の前に現れるな!」
戻ってきていきなり説教されるノアだった。グリフォンのマリリンも笑っている。
マリアがどうして急に戻ってきたのか尋ねた。
「父さんと母さん、それからモグラーギルド、ギルドマスターのボイドさんをドワーリア王国へ連れて行くために戻ってきたんだ」
* * *
とりあえず、謁見の間へ向かい国王と王妃への挨拶を済ませて、ドワーリア王国での話を始めるノア。ミネルヴァ先生とボイド、そして冒険者ギルドのギルドマスターリックも駆けつける。皆、生のウサ婆の姿を見たいから集まってきたのだろう。
「お前、あのドワーリアゲートをクリアしたのか? すげ〜な……ちょっと引くわ」
「しかも私たちの時代のそれとはまたレベルが違うでしょうしね……」
両親が二人とも息子の優秀ぶりにひいている。なぜ、初めて訪れた異国の地で大人しく過ごせないのだ。
「まぁ、それはいいとして、そのせいで僕は今スパイ扱いされちゃってて。逆にギミックが襲いかかる前に全て斬り飛ばしていったヘンリーたちが英雄扱いで王宮に案内されてさ……納得いかないよね。僕は完璧に全てのギミックを解体してあげたのに」
「そうそう、それじゃ。ノアよ。ティアとリリアナは王宮へと出迎えられて大丈夫なのか? 精霊を宿すものが狙われると聞いておった故、心配なのだが」
国王と王妃が不安な様子でノアに問いかける。
「全く問題ありません。僕が二人にとっておきの秘策を授けましたから。ドワーフ族は全く気づいておりません」
逆にその秘策が怖〜よと息子を疑ってしまう
両親であるはずのロイとリリカ。
「ノアよ。ここヒューマニア王国へ戻ってきたのは、何か用があるからであろう?」
「はい。両親とボイドさんとマリアを連れて行きたいんです。ドワーリア王国の王宮にテレポートしようと思っています」
ロイとリリカは知っていたのでリアクションは特にないが、マリアは嬉しさを隠せなかった。
「本当ですか! 私とマリリンもガイアの諸外国へ行ってもよろしいのですか!」
「えっと…………グリフォンのマリリンとは言ってないけど……」




