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グランサンクチュア〜地底天空都市の伝説〜  作者: 大森六
第四章 地底国家ドワーリア

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第129話 パーフェクトクリア

 ドワーリアゲートに入る直前、ヘンリーは深く集中していた。レアルカリバーを鞘から抜いてゴールデンドロイムを呼び出す。


「ゴールドヘンリー! 出てきて。例の()()をやるよ!」


 するとゴールドヘンリーがヘンリーの両手とレアルカリバーの柄部を覆う。


「え? 何あれ、ヘンリーの手が光ってる……なんで?」


「普通さぁ、そういうときって剣が光もんなんじゃないの?」


 エミラとティアから鋭いツッコミをもらって恥ずかしがるヘンリーだったが準備は整った。そしてゲートへと入っていく。



 ヘンリーを先頭にして少し下がってティアとリリーがさらにその後ろにエミラが構える陣形で進む。


「……!」


 突如ヘンリーがレアルカリバーを二、三度大きく振り抜く。その動きの意味が理解できずに驚くティアとリリー。


「ヘンリー。急にどうし……」


 スパッ! 


 両サイドから襲い掛かろうとしていたギミックが真っ二つになっていた。


「「「え?」」」


 集中しているヘンリーはそのまま前進する。ギミックが動き出すその瞬間のマナの変化を見逃さない。次々とパーティーを切り刻もうと動き出すギミックのその初動に反応して一閃。エミラたちにドワーリアゲートの牙は届かない。


「すごいわ……一瞬で仕掛けを斬っていくなんて信じられない」


 エミラたちも口を開けて驚くほどに、ヘンリーのレベルが上がっている。


「一体どうやって……ん?」


 ティアはゴールドヘンリーが何かを剣と手に伝えていることに気がついた。


「ヘンリーが動き出す直前に何かを? そうか、あのドロイムがセンサー代わりになっているのね。その察知能力はさすがゴールデンドロイムだけど、その後のヘンリーの反応も尋常じゃないわ……」


「きっと懸命に訓練したのね……」


 リリーの言葉にただ頷いてヘンリーを見つめるティア。悔しさと尊敬の念が入り混じる奇妙な感情で次々とギミックを撃破していくヘンリーを見守る。


(前方上部から落石、左右から矢が飛んでくる!)


 ズバババッ!


 一見空を斬っているだけのようでもその太刀は確実に襲いかかってくるトラップが動き出すほんの一瞬を先に捉えていた。


(あ! 床が落とし穴に!)


「皆ストップだ! 落とし穴がある」


「え? 落とし穴? どこ?」


 ティアの声に反応するかのようにゴールドヘンリーに合わせてゴールドティアとゴールドリリーが落とし穴部分を覆うように示す。


「あの場所を避けて前進して」


 ヘンリーの指示に従うリリーたち。そしてエミラは不思議に思う。なぜ自分のゴールデンドロイムは動かなかったのかを。


 こうして次々とドワーリアゲートのギミックを突破して、ついに入国の扉まで無傷でたどり着いた希望の剣。ヘンリーが扉自体にトラップがないことを確認し、ゆっくりと扉を押して開く。


 ゴゴゴ……


 そこにはノアの時とは全く違う反応のドワーフ警備隊が待ち構えていた。


「お前たち、何者だ? このドワーリアゲートをパーフェクトクリアした冒険者なんて今までいなかった。しかも所要時間はたったの10分だぞ!」


「いや、普通にクリアしてここへ辿り着いただけです。我々は希望の剣という人族の冒険者パーティーです。入国許可証をいただけますか?」


 化け物級の強さを見せつけてきたヘンリーから求められて何も言い返すことができずに許可証を発行する警備隊。国家のルールに従って尋ねてきた冒険者を拒むことはできない。


「人族ということはヒューマニア王国からガイアの大地を渡ってきたということか?」


 警備兵の一人が尋ねる。


「そうですよ。2年近くかかったのかなぁ。寄り道しながらここまできました」


 ヘンリーの言葉を信じられないという表情で聞いている兵士の一人がさらに質問を投げかける。


「その剣の腕前は……誰かから教えを?」


「あ、そうですね。師匠がいます。ロイ・グリードという人族の英雄でして」


「ロ、ロイ・グリード! まさかロイ様のお弟子様だったとは! 失礼しました!」


 このリアクションを見てエミラが素早く状況を察知して機転を効かせる。


「ここにいる女性二人は黄金の大地のメンバーである伝説の魔土術士ソレイジリリカの弟子です。そして私は人族初の聖女です」


 驚く警備兵を見てエミラがティアに合図を送る。それを理解したティアがトドメの一言を発する。


「私はロイとリリカの娘です。ティアと申します。よろしければ一度レーテル・グリムス女王陛下に謁見の機会を与えていただけると嬉しいのですが」


「た、直ちに王宮へ報告致します! 今暫くあちらの休憩所でお待ちください!」


 急にドワーフの態度が変わった。父と母のネームバリューに驚くティア。そして一部始終をマナフォンで聞いていたノアとウサ婆が連絡してきた。


《皆よくやった! 最高の展開だよ! 後は何とかして僕も合流したいところだが……ここで混ざると皆にスパイ容疑がかかってしまう。王宮に入って女王と謁見できた時にテレポートでそっちに飛ぶようにするよ》


《わかったわ。他にここからの行動で注意点はある?》


 エミラの質問にノアが答える。


《精霊契約をしている二人は引き続きバレないように集中して。女王と会った時も悟られないようにね。あと、僕らの技術力もバレないようにしてほしい。後ほどD-1グランプリに出場するからその時まで油断させたいんだ。魔土術や剣術がすごいという点だけで話を進めてほしい》


《オッケー! 任せて。とりあえず流れのまま動いてみるわ》


 暫くして警備兵が戻ってきた。


「王宮より、謁見の許可がおりました。これより希望の剣の皆様をご案内いたします」


 丁寧な口調で兵士伝える。そして腕を後方へ伸ばしてどうぞこちらへと誘導した先には車輪がついた6人は乗れそうなくらいに大きな車が用意されていた。


「我が王国の技術を駆使して開発した魔土車ソイラカーです。どうぞお乗りください」


 周囲の兵士たちはエミラたちの驚く反応を期待したのだが…………希望の剣メンバーは()()()()()()()を見慣れていた。いや、もっとすごいモノを今までノアから見せられてきたので大した反応はできなかった。それよりすごいと思えないからだ。


「じゃあ、いきましょうか」


「…………は、はい。それで王宮へ向かいます」


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