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グランサンクチュア〜地底天空都市の伝説〜  作者: 大森六
第四章 地底国家ドワーリア

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第128話 入国許可証 02

「ヘンリー、大丈夫だよ。多分全部ぶった斬れる。ヘンリーならね」


「う、うん。頑張るよ。死にたくないし」


 ちょっと普通じゃない会話のような気がするがエトラスも頷いた。しかし一つ気がかりなのは……


「イフリートをどうするか、よね……」


「そうだな。正直俺だって目の前に炎の精霊様が現れたら飛びついていたと思う。ノアたちと一緒ということもあって、割と冷静でいられたが、ドワーリア王国の中でなら話は別だったと思う。皆それだけ欲しがっている。イフリート様の力を」


『それがめんどくせ〜から俺はガイアへ逃げたんだよな〜』


「いや、そもそもイフリート様だけではありませんよ。エアルヴァ様も不安です。風の精霊の力だって我々ドワーフ族からしたら喉から手が出るほど欲しい力ですから」


「簡単なことだ。ティアとリリーは入国ゲートを突破した瞬間から精霊マナを外に漏らさないように完璧にコントロールすればいいんだ」


 シーンとしてしまった。ノアがまた無茶苦茶な要求を出してきた。しかもノアならそれができそうなのだ。ティアは悔しがりながらノアに尋ねる。


「お、お兄ちゃん。どうやって完全に精霊のマナを押さえ込むのか教えて……」


「そうだな。その前にちょっとイフリートとエアルヴァに確認したいことがあるんだけど」


 エアルヴァも出てきてノアの話を聞くことに。


「精霊のマナと人族のマナが存在することは事実で、精霊契約した後もその二種類のマナは共存しているのかな?」


『そうじゃな。共存しておるぞ』


「だとしたら、例えばリリーの身体には精霊マナ100%とリリーマナ100%が混在して200%存在しているってこと? それとも混在して合計100%になるように調整されているの?」


『なるほどな……お前の聞きたいことはわかった』


 イフリートがうんうんと頷いている。


『おそらく妾とリリーとの関係では妾が20%、リリーが80%くらいだな』


 ノアが頷いた。


『俺も100%に調整されている感覚だな。そして俺が70%でティアが30%だ』


 ノアが振り返ってティアとリリーに説明する。


「二人だけでなく、人族が持つマナには個性があると僕は考えている。そしてリリーは天性の才能でマナの力が凄すぎるんだ。抑え切れないくらいにね。だから最初にドワーフ族のエトラスさんがリリーを見た時にリリーに風の精霊が宿っていることを気付かれなかった」


「確かにね……」


 エミラも納得する。


「同時にエアルヴァは自身の精霊マナのコントロールがイフリートよりも優れているんだと思う」


『おいおい! それは聞き捨てならねぇなぁ! まるで俺様がダメみて〜じゃねぇか』


「いや、そうじゃないんだイフリート。精霊の特性だと思う。つまり風を扱うその特殊さがマナコントロールとも比例関係にあるんじゃないかな。逆に炎を扱う特殊さはマナの威力を出す部分で比例関係にある気がする」



「う〜ん、なるほど。簡単に言うと攻撃力は炎が上、制御力は風が上、みたいなことだね?」


 ヘンリーの上手い表現に笑顔で頷くノア。


「話を元に戻すと、ティアとリリーはこれからより強くなりたかったら、以前教えたからの概念を思い出してここで応用するんだ。自分の体内に巡っている精霊のマナが魔土ソイラのマナポーラス(空隙)と同義だ。そこに自分のマナを再度流すようにイメージするんだ」


「何言ってるのか、半分わからないけど、要はイフリートのマナを探し出して私のマナを上からぶっかけて外から見た時にイフリートが見えないようにしたらいいのね?」


「さすが我が妹だ。それでいいから明日の入国前までにできるように頑張ってくれ」


 相変わらずの無茶振りだ。リリーもまた悔しかった。自分はエアルヴァのおかげで存在が露見しない程度に収まっているから今はできなくても大丈夫と言われたようなものだから。


 二人の闘志に火をつけてしまったノアはニヤリと笑ってエトラスたちをテレポートで家に連れて帰った。


『ノアはすげ〜よな。正直、俺が知らないことまで知っているような気がしちまったぞ』


わらわもあそこまで深くそして細やかな思考になったことは無い。知見も提示し、仮説に説得力があった。何も言えなかったことが少々悔しいぞ』


「ヒャッヒャッヒャ。ウサジもちゃんと教えとったがね〜」


 精霊とウサ婆のリーダーノアに対する評価がどんどん上がる。そしてティアとリリーはすぐにマナコントロールの訓練に入る。二人とも悔しくて現状では我慢できないようだ。


「イフリート! ちょっと手伝って! どうやったら精霊マナを抑えられるの? 教えて!」


『いやぁ……俺だって詳しくねぇよ。頑張るしかねぇな!』


「はぁ? あんたもわからないの? ダメね」


『俺がダメじゃねぇだろ』


 そしてノアが帰ってきた。ティアとリリーにアドバイスをしつつ、ヘンリーとエミラにドワーリアゲートのトラップの詳細を説明をする。


「――とまあ、結構長い感じだから、もしもヘンリーの手足がちょん切れたら、エミラが直してあげて。多分一、二回は斬られると思う」


「う〜ん。ちょっと怖くなってきた……素振りしてくる……」


「ノア、あんまりヘンリーを怯えさせないでよ。動きに支障が出るでしょ。私のバリアを張っていれば怪我しないわよ。多分ね」


「ごめんごめん。でも多分ヘンリーなら大丈夫だよ」


 こうしてそれぞれが訓練に励み、次の日を迎える。


「皆、おはよう! 昨日は眠れた?」


 ヘンリーとティアは明らかに寝不足だが、ノアはニコッと笑って嬉しそうに話し出す。


「これから朝食を摂った後、いよいよ作戦決行だ。僕はウサ婆と先にエトラスさんの鍛冶場で待っているから」 


「……頑張ります」


 頷くヘンリーとティア、どこか自身が無さそうだ。


「ヘンリーなら大丈夫だがね! 焦らずにゆっくり進めばいいがね〜」


 ウサ婆の言葉で少し勇気が湧いてくる。こうして食事を終えていよいよ希望の剣はマリーボイドを出て出発する。


「じゃあ、僕とウサ婆は先に行って待ってるね!」


 そう言ってノアとウサ婆が消える。その20分後、エミラたちはドワーリアゲートへ到着した。


「じゃあ、私たちも行こう!」


 この後、ドワーリア王国の民だけでなく、希望の剣メンバーですら驚くほどの伝説がここドワーリアゲートで誕生する。



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