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グランサンクチュア〜地底天空都市の伝説〜  作者: 大森六
第四章 地底国家ドワーリア

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第126話 気絶後の自己紹介

「このD-1グランプリってなんですか? 職人同士の賞レースみたいですね。いくつか部門があるようですが」


「ノア、それはね。ドワーリア王国が4年に一度開催する最も権威のある大会でね。職人であれば誰もが優勝することを夢見る大きな賞レースなんだ」


 ウォールが説明してくれたその口ぶりはあまり嬉しそうではない。むしろ覇気のない感じだ。同様に父親エトラスも同じような口調で説明する。


「レースは2種目ある。一つ目は《魔土ソイラカートレース》っていうドワーリア王国国内で最も技術力が試されるカートマシンによるレースだ。二つ目は自由課題での作品コンテスト。どんなものでも構わないがドワーリア王国にとって有益であるものという条件を満たさなければならない」


「出場者に条件はありますか? 人数制限とか、年齢やライセンスとか」


「ライセンスはG3クラス以上だから一応俺たちは参加可能だ。参加人数や年齢に制限は特にないな。参加費用が必要だ。それぞれ5ゴールドで合計10ゴールド」


 ノアがニヤッと笑う。


「エトラスさん、このD -1グランプリ、僕らで出場しましょう!」


「はぁ? いやいや、ノア。このグランプリにはドワーリア王国内の第一線で活躍している職人達が参加するようなハイレベルなレースなんだ。俺は兎も角、他に職人がいないとなると不可能だ」


「エトラスさん、僕と僕のパーティーの仲間がエトラスさんの鍛冶場の職人として参加します! だから技術面はおそらく大丈夫です」


 ノアの腕前をまだ知らないエトラスはノアの言っていることが全く信じられない。


「確かにお前の腕前はすごいとは思う。ゲートを突破するんだからな。でもそれと職人達の真の戦いとは全く比較にならないくらい別物だ。それに大会まであと三ヶ月しかないからな……ソイラカートレースはマシンの設計やアイデア、コースの下見、スタッフの配置など検討すべきことが山盛りだ。自由課題だってそうだ。何より資金調達が今の俺の工房の予算じゃとても……」


 弱腰というか既に諦めている様子だ。そんなエトラスにノアが状況を整理していく。


「エトラスさん、ボイドさんへいつになったらG1クラスになった鍛冶場を見せられそうですか?」


「…………いつか実現して見せるつもりだ」


「いつかなんて言っていたら一生実現できませんよ。僕は3歳くらいに絶対にグランサンクチュアの天空の塔を登ってみせると決めて、懸命にここまで時を過ごし、10年経ってやっとこのドワーリア王国の地まで来ました」


13歳の子供のセリフではないとエトラスは思う。


「お前天空の塔に登るのか? 不可能だ! グランサンクチュアの冒険者ですら登りきったことがないんだぞ」


「でも誰も登ったことがないだけですよね? 僕は可能か不可能かを自分の目で確かめるまで、絶対に諦めませんよ。アハハ」


 ノアの強い意志がこの若さで過酷なガイアの大地横断を成功させたのかと感じたエトラスとウォール。


「ちなみにD-1グランプリに出場しないとして、他に鍛冶場のグレードを上げる方法はあるんですか?」


「実質、今の俺の状況だと無いに等しいな……」


「だったら参加しましょう! 僕を信じてください!」


(なんてまっすぐ輝いく瞳で俺を見るんだ。この子には何か期待してしまう……)


「ノア……ありがとうな。お前のその気持ちだけでも嬉しいぞ。そうだな。やる前から逃げるのはダメだな。このD-1グランプリ、俺たちも参加を前向きに検討してみるか!」


「そうと決まれば、今から行動の仕方を考え直しましょう。エトラスさん、ウォール、僕の手を握ってください。ちょっと移動します」


「え? 移動?」


 そう言って二人の手を握ったノアはパーティー仲間が待機するマリーボイドへテレポートした。そして突然リビングに見知らぬドワーフ二人を連れて現れる。


「ただいま!」


「「「ウギャァ〜!!!!」」」


「「うわぁ〜!」」


 お互いが気絶しそうなほど絶叫してしまう。突然現れたドワーフに白目をむいて気絶するティア、エミラとウサ婆。リリーはキッチンにいたので衝撃が多少緩和され、意識を保っている。ヘンリーは外で見張りをしていたため、悲鳴を聞いて急いで中に入る。


「どうした! 襲撃か!」


「やあ! ヘンリーお疲れ!」


「ノ、ノア? と、そちらの……気絶している……ドワーフ族? で、なんでティア達も気絶してるの?」


 リリーに起こされて目が覚めたエミラとティアが状況をなんとなく理解する。


「いきなりテレポートしてくるバカがどこにいるのよ!」


 ドガン!! ドドドドッ!


「…………こ、こひらが……エトラスしゃんとウォールくんへひゅ」


 聖女ゲンコツに炎拳で連打をくらい、死にかけながらドワーフ族を紹介する。


「ボイドの息子で鍛治師のエトラスだ。す、すまない。まだ冷静になれていないがもう少し時間が経てば……おそらくなんとかなると思う。初めてのテレポートでちょっと……」


「ぼ、僕はウォールです。まだ何がどうなっているのかわかっていませんが、皆さんよろしくお願いします」


「初めまして。魔土術士ソレイジのリリーです。こちらが姉で聖女のエミラと魔土術士ソレイジのティアに、賢者のウサバさんです」


 いきなり疲れ切ったエミラとティアに替わって挨拶をするリリー。ウサ婆はまだ気絶している。


魔土戦士ソレイヤーのヘンリーです。ボイドさんには本当にお世話になっています。よろしくお願いします! そしてこっちにいるのが神獣のルミノアです」


「クアァ〜!」


「な、なんか……サラッとすごい紹介をされたような気もしたが今は全てを一旦受け入れよう……このパーティー普通のレベルじゃなさそうだ」


 エトラスが徐々に希望のつるぎパーティーのレベルを理解し始めた。まだほんの10%くらいだが。


「えっとね。突然戻ってきてごめん。皆とこれからのことを相談したくてここへ来たんだ。ざっくりとこれまでのことを説明すると……」


 ノアがエトラスの鍛冶場のこと、ボイドがG1クラスへの昇格を望んでいること、ドワーリア王国のビッグイベントD-1グランプリのことを説明した。


「……というわけなんだ。こんなワクワクする賞レースを見逃すなんてあり得ないだろ? ()()()()()!」


 ボワっとティアから飛び出してきたイフリートが笑って答える。


『当たり前だ! こんな面白過ぎるイベント、絶対に参加だぜ!』



「イ、イ、イ……イフリート様!!!」


 ドワーフ二人がまた気絶してしまった。 



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