地底国家ドワーリアへ 02
「ドワーリアゲートって何? ドワーフの門?」
エミラがノアに聞き返す。
「ドワーリア王国の民は簡単に通り抜けることができて、他所者は確実に死ぬと言われているトラップだらけの通路があるらしくて。そこを無事に抜けるとドワーリアへの入国を許可されるって話だったよ。父さんがいた頃のドワーリア王国情報だけど」
「私、通過する自信ないわ」
エミラが堂々と宣言する。そしてつられるようにリリーとウサ婆も手をあげる。
「いや、全員で行くべきかっていう部分も問題だよ。別れて行動するのもありかもね」
「確かにね……まず僕は確実に行く。ヘンリーは王女二人と離れることはできないからそうなると留守番だね」
「そうだね。心配で別行動したら僕の寿命が縮んじゃうよ」
「ありがとうヘンリー。今回はありがたく護衛をお願いするわ。この辺りの魔物は強いからマリーボイドだけでは不安だし」
エミラとリリーが笑顔でヘンリーの意思を尊重する。そしてこの時点でティアとイフリートがセットと考えると、ノアが一人で行くという選択肢が濃厚だ。
「むしろ、お兄ちゃん一人で行ってくるのも面白いかもね。イフリート目当てで私も連れ去られる可能性があるしね」
『アイツらは俺が精霊契約しているティアの中にずっと隠れていたとしても、必ず俺を発見するぞ。だから最初にノアが王都デックアルヴァーまで一人で行って、テレポートできるポイントを見つけてからロイたちを連れてくる。その後俺たちも合流する方が安全だ』
イフリートが珍しく保守的な意見を述べる。それほどにドワーフ族からは恐怖を感じるのだろう。
「わかった。まずは僕一人が行くことにしよう。全く問題ない。問題があるとしたら、どこにドワーリアゲートがあるのかわからないってことだな」
「それならわかるがね。案内できるがね〜」
こうして大体の作戦が決まった。念の為、リモートスクリーンユニットでロイと繋がって情報共有し、ロイたちもドワーリアへ向かう支度をすることになった。
「おい、ノア。くれぐれもはっちゃけてドワーリアを満喫するなよ。あの場所はノアにとって天国すぎるからな」
「な、なんだって? 父さんもう少し説明してよ!」
「いいから明日に備えてもう寝ろ! ドワーリアゲートで死ぬんじゃないぞ! 油断はするなよ!」
こうして話はまとまった。いよいよグランサンクチュア周辺国家の一つ、ドワーリア王国へ乗り込む時が来たとノアは珍しく興奮していた。
* * *
「あそこだがね〜。ゲートが見えるだがね〜」
魔土でできた絶壁の一部分が不自然に傾いている。
「あぁ、あそこが扉か。わかったよ! ウサ婆ありがとう! 行ってくるよ」
「気をつけるだがね〜」
見送ってくれるウサ婆に手を振ってノアはドワーリアゲートを開けて中へ入った。
「真っ暗だな……ウォームライト!」
「サーチライト<スキャン>」
念の為、魔土術を唱えてゲートの奥までどんなギミックがあるのかを調べる。
「これ、訪問者を処刑する気満々だな……」
とんでもない数の殺人ギミックが所狭しと仕掛けられていた。そしてノアは魔土術ではない、監視装置があることにも気がつき、レンズに向かってニコッと笑う。
「どうやって通ればインパクトが絶大だろうか……なんせここは僕にとっての聖地である可能性が高いからな。最初の印象が大事だ」
ぶつぶつ言いながらノアはファーストギミックが仕掛けられている周辺を探る。そしてメンテナンスボックスを見つけ出し、早速一時停止して悠々通過した。次のギミックもその次も、同様に装置を一時停止させて進んでいく。
ギミックを見破って瞬時に躱して進むでもなく、バリアで身体を完璧に包みこみ、ギミックが作動しても意味がない状況を作って進むわけでもない。勿論ノアにはそれができる。しかし、あえてそれをしない。
(注目させるんだ。興味を持たせるんだ。そうすれば入国後、きっとVIP待遇で国内を回れるぞ!)
勝手な妄想を膨らませつつ、次々とトラップを事前解除して進んでいくノア。ついに入り口まで辿り着いた。
「さてと! 早速入りますよ〜。一体どんな天才たちが僕を待っているのか――」
「「「動くな!」」」
「へ?」
ゲートを出た先にいきなりドワーフ警備隊に囲われて武器で威嚇されるノア。
「貴様何者だ! 我が王国ドワーフゲートの仕組みを何故全て知りつくしているのだ! まさか他国へ情報を流すスパイ行為を……」
「僕が? なんで? 今入国しにきたのに何故スパイ? 」
戸惑うノア。そしてドワーリアゲートを最速タイムでパーフェクト通過したことに焦りを隠せないドワーフ警備隊。
「何が目的だ! このドワーリア王国を乗っ取るつもりか!」
「はぁ? そんなわけないだろ! せっかくあえて全てのギミックを丁寧に分解して進んできたのに、なんでスパイ扱いされないとダメなんだ! 僕は普通にヒューマニア王国から旅をしてここまできた冒険者だ!」
「なんだと? 人族のヒューマニア王国から来ただと? そんなわけないだろう! 一体何年の月日がかかると思っているんだ! ふざけたことを言うな。どうせボッタニカあたりからきたんだろう」
ノアの話に全く聞く耳を持たない警備隊。ノアはとりあえず、マナフォンでパーティーメンバーに連絡した。
《今王国に入ったんだけどさ。いきなり牢獄に入れられそうなんだ》
《はぁ? ノア、あなた一体何をしたのよ》
《全てのギミックを止めて進んできただけだよ。そしたらスパイ容疑がかけられてしまって》
イフリートが大爆笑している。ちょっとドワーリア王国の気持ちもわかる気がするエミラとリリー。
《国家転覆を狙ってやってきたと思われているみたい。ちょっと予定変更するよ。僕はしばらく首都デックアルヴァーで隠れて様子を見るから皆は暫く休憩!》
《キュ、休憩って、ちょっとノア! 待ってよ。この辺りの魔物のレベル、あなたも知っているでしょ! 長期留まるなんて無理だからね!》
《はいはい! ヘンリー、ティア! そっちはよろしく頼んだよ!》
《は〜い。いつものことだからもう慣れたわ》
マナフォンの連絡はここで途絶えた。




