第123話 地底国家ドワーリアへ 01
「後ろからキングガイアコブラが10匹! 皆、猛毒に気をつけて」
ティアの索敵にエミラが瞬時に反応してパーティー全員に結界を張る。
「おぉ〜さすが聖女の結界だ。ものが違うね! よ〜し、ヘンリーは引き続き前方のドブリンキングを! リリーは周囲のハイソイラドブリンをそれぞれお願い!」
「「了解!」」
「お兄ちゃん! 私は毒蛇全部やるわ!」
「頼んだ! 僕はドブリンキングの後方にふんぞりかえっているドロールをぶった斬ってくる! エミラとウサ婆はそのまま全体のサポートをお願い!」
「了解だがね〜」
エミラが詠唱せずともすでにパーティー全員に補助系魔土術が付与されていた。そしてヘンリーがドブリンたちの攻撃を交わしてドブリンキングを盾ごと一刀両断すると、リリーが数十匹いるハイソイラドブリンに鋭利な風槍を一斉に突き刺す。複雑に動くヘンリーに影響が出ないように交わして標的に的中させている。
後方ではティアがパチンと指を鳴らした瞬間、キングガイアコブラが8匹焼け焦げるほどの驚異的な炎の威力とコントロールを見せつける。
「くっそー! 2匹は外したかぁ〜。 またイフリートのぼやきを聞くハメに……」
そう言ってツインダガーで残った2匹のポイズンブレスを交わして首元へ一閃。
最後にノアがドロールの分厚い腹に向かって渾身のパンチを打ち込んで終わらせた。
「リリー、エアルヴァ! 今の一撃はタイミングがバッチリだったね!」
マナを纏って風の精霊の力を借りて打ち込む打撃。ほぼ完璧な連携だ。エアルヴァも唸る。
『これ以上にないタイミングじゃ。お主ならイフリートの炎も試してみるのも良さそうじゃな』
「あはは。そうだね。腕が焼けない自信ができたらやってみようかな」
奈落の滝を出てからさらに半年が経過した。いくつものダンジョンを踏破し、戦闘経験を積んでいくノアたち。自身も余裕も出始める頃だが、油断は一切ない。ガイアの恐怖を理解しているからこそ、常に気を張って周囲を警戒している。
「四代目、レアラドリル! イフリート! いくぞ〜」
『おう! 任せとけ!』
ウィーン。 ガガガガガガガガガッ!
イフリートの炎を動力に変えてとてつもない速さでドリルが回転し、ガイアダンジョンの硬質な魔土をモロともせずにモグっていく。
「楽勝楽勝! すごいぞ! レアラドリル! ついにモグラーの工具にオートメーション機能が付与された!」
「ノア、興奮しているところ悪いけど、私たちはここでマリーボイドを建てちゃっていいかしら? 晩御飯の準備もね」
「エミラ、リリーありがとう! そっちの方よろしくね〜」
そしてノアとイフリートが深くモグっていった。その間にせっせと作業を済ませて、自分たちの特訓や趣味に時間を割く。これがここ数ヶ月のメンバーの活動パターンだ。
ヘンリーは相変わらず剣術の向上、ティアは魔土術とツインダガーの使い方を研究し、エミラとリリーは食事の準備を済ませたあと、ウサ婆と魔土術談義をする。
「採ったど〜! エリクサーと希少野菜! この辺りは他にアイテムは無さそうだった」
「久々の野菜で嬉しいわ。ありがとうノア」
「肉も焼いて欲しいがね〜」
「はいはい、ウサ婆はお肉が必須だよね。了解です!」
こうして楽しく食事の時間が始まる。着実にグランサンクチュアへ近づいているのが体感できて、パーティーの雰囲気は上々だ。
「ノア、もう大分天空の塔が大きく聳え立つように見えてきたね。後どれくらいで到着するんだろう?」
「今の僕らの目的地は天空の塔ではなく、その大分手前に位置する地底国家のドワーリアだから、あと一週間くらいで着いちゃうかもね」
『ドワーリアかぁ……いよいよ俺とティアの命が狙われる国に突撃だな』
「ちょっとイフリート、怖くなるじゃない。やめてよ」
「大袈裟ではないがね。ドワーフという一族はそういう奴らだがね。炎と技術に目がないがね〜」
「……それってさ、私たちも危ないわよね?」
エミラがあることに気がつく。そう、ノア製作の作品があまりに高いレベルだと容易に想像できるからだ。まだどの国とも交流していなくて他国の技術力がわからないとはいえ、フルーゲやツインダガー、レアルカリバーに風神の杖、防具でも聖女の羽衣、住まいにおいてはマリーボイドなど。
もはや、一生囲っておきたい巨匠レベルの腕を持つ職人であり、その巨匠が製作した武器を身につけた仲間たち……明らかに危ない。
「ウサ婆はヒューマニア王国にはテレポートできないよね?」
「行ったことがないので無理だがね〜」
「だとすると、やはりまずはドワーリアの王都デックアルヴァーを目指すべきか。そこでテレポートして父さんたちを連れて来れるわけだが……僕らはこの後もフルーゲでガンガン進んでいくべきかな?」
「ノアは見つかったらどうしようって思っているわけね? あんな飛行艇がガイアを飛んでたらそりゃやばいよね」
ヘンリーは飛ばない方がいいと考えているようだ。
「フルーゲは楽ちんだがね」
年寄りらしい意見を言うウサ婆。誰もそのあたりは反論できない。
「でもちょっと気になるんだけど、どうやって見つけるの? ドワーリアって地底国家なんでしょ?」
「そこなんだよね。もしかしたらそろそろ領土内に入っている可能性もあるんだ」
「ウサ婆はその辺り分かる?」
「もうドワーリアの国内に入っているがね」
「「「えぇ〜! なんで先に言ってくれないの?」」」
全員がツッコミを入れてしまうほどに衝撃的な事実だった。
「ちょっと、一国の王女が無許可で他国に入るなんてダメすぎるでしょ」
顔が真っ青になるエミラ。やはり国交を考えると体裁は重要だ。
「安心するがね。地上はドワーリアの国土ではないがね。ただし、無許可でモグッたらやばいがね」
説得力のあるウサ婆の話に頷くノア。
「父さんたちの話ではドワーリアへの入国は紹介状があるかないかで変わるって言ってた。あれば正規のルートで正門から堂々と入れる。それはグランサンクチュア側から入るって。僕らのいる位置とは真逆だね」
「なるほど。つまり、紹介状がない今、正規ルートの入国はいずれにしても難しいってことね」
食器を洗ってくれていたリリーも話に加わって考える。
「あとは……数箇所あると言われているドワーリアゲートを進んでいくしかないってことだね」




