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グランサンクチュア〜地底天空都市の伝説〜  作者: 大森六
第三章 ガイアの大地

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第122話 奈落の滝とのお別れ

 翌日の朝、ウサ婆は聖なる祠を眺めながら、全員をテレポートで滝の麓へ連れていく。そしてガイア唯一でもある聖水が流れる伝説の滝をじっと見つめている。


「……ウサ婆、ここを離れるのが寂しい?」


 エミラの問いに笑って答える。


「やっとここを離れることができるがね。それが嬉しいがね」


 ノアとイフリートが飛行艇フルーゲを整備している。勿論今回二人で改良を加えてフルーゲはパワーアップしていた。


「ふっふっふっ。今回のアップデートはすごいぞ〜。イフリートの炎に耐え得る超級魔土レアラ製のジェットマソエンジンを搭載し、キングガイアスコーピオンの甲羅を加工し、軽くて丈夫な機体を実現しているからね」


『しかも席数も増えたからちょうどよかったよな。円形がノアのこだわりってのがちょっと残念だぜ〜。最高速度がもうちょっと出せたのによ〜』


「いやいや、飛行するなら円形でっていうのが僕のロマンなんだよ。そこは譲れないね〜」


 楽しそうに話しながら整備を終えたころ、ティアたちがダンジョンから戻ってきた。


「上にもゴールデンドロイムがいたからぶっ倒してきたよ! はいこれ」


 ティアとルミノアがゴールデンドロイムの表皮をノアに渡す。


「レベルアップしたよなぁ〜。数ヶ月前は皆死にかけていたんだけどね」


「ルミノアが特に強い。魔物をあっという間に倒しちゃうんだよ」



「クアァ! クアァ!」


 嬉しそうに声を上げるルミノア。生まれたばかりの頃はノアの方に乗っていたが、今は両肩に跨るように乗っている。まるで大きなマフラーだ。まだそこまで大きくはない。


「よし! 準備完了したよ! 皆フルーゲに乗り込んで」


 新しくなったフルーゲのソファーシートがとても気持ち良くなっている。


「ちょっとノア! これすごくいいじゃない。なんでこんなにふかふかなのよ」


 エミラの問いにノアがニヤつく。


「悩んだ末にね……ケルベロスの肉球を使ったんだ。もう街で剥製としては売れないかもしれないけど」


()()()()()本当に気持ちいいよね! あれから毎日快眠だよ!」


 ヘンリーが思わず口にした一言でノアが青ざめる。


「おい! それは言っちゃだめ……」


「ん? ヘンリーとノアのベッド、私たちのとは違うの?」


「ああ! しまった……」


 ノアとヘンリーのベッドだけは新しく作り替えていたことがバレてしまった。


「ちょっとお兄ちゃん、私もこのふかふかでベッド作って欲しいわ!」



「こ、今度時間があるときにね! あはははは〜」


 そして全員がフルーゲに乗り込んだ。


『さぁ、準備はできた。いよいよ出発だ。長い間滞在したこの奈落の滝<フォーリングディープ>ともお別れだけれど、皆いいかな?』


「いいわ! 私はもう次の冒険がしたくてうずうずしているから!」


 ウサ婆を含めて他の仲間も頷いている。そしてイフリートが滝の真上に向かって指を刺さす。


『よっしゃあ! ノア! 真上に向かってフルスロットルだ! レアラフルーゲの力を見せてやれ!』 


「フルーゲ起動!」


 フワッと軽やかに地面から浮き上がったフルーゲ。明らかに高級魔土ハイソイラ製の時とは乗り心地が違う。


「出発だぁ! さよなら! 奈落の滝と聖なる祠!」


 滝の流れに逆行するように上昇していく。


「すごい! 滝を捲り上げるようにどんどん上がっていく。こんなに高さのある滝だったんだね」


「そして、それだけ私たちも地上から降りてきていたのね……この高さを……」


『俺はこの光景は二回目だけどな』


「あんたは逃げて帰っていったんでしょ。格好よく言わないで」


 エミラのツッコミに皆が笑う。炎以上に真っ赤になったイフリートの顔。


「ひゃっひゃっひゃ! すごいだがね〜。これがノアたちが造った飛行艇だがね〜」


「そうだよ! ウサ婆には発明の面白さをこれから伝えていかないとね」



「やめなさいよ。伝説の賢者を相手にあなたの趣味を押し付けないで」


「趣味じゃなくて男のロマンと言ってくれ! なぁ、イフリート!」


『ものづくりとは俺たちに聖霊にとって生涯そのものだ』


『勝手に聖霊でくくるのはやめろ。わらわは関係ないじゃろ』


『エアルヴァも手伝ってくれてたとき楽しそうだったじゃねぇか!』


『…………まぁな』


「「「あははは」」」


 そしてついに地上への出口が見えてきた。フルーゲは一気に加速して勢いよく飛び出してガイアの大地に再び姿を現した。



「ただいま〜! 久々のガイアね〜! なんか太陽の光って感じで気持ちいいわ〜」


「やっぱりガイアって広いね! 半年ぶりって嘘みたいだわ」


 ティアとリリーが興奮している。なんせ今まで地下の滝や祠で長い間修行していたのだ。開放感で心が昂るのは皆同じだった。


「久々のガイアだがね〜。こんな高いところからガイアを見下ろしたのは初めてだがね!」


「ウサ婆はもっと久々だもんね!」


「…………これからあとどれくらいであの場所へ辿り着けるのかな」


 ヘンリーはルミノアを抱き抱えて久々の眺望を静かに楽しんでいた。不意に呟いた一言に皆が反応した。



「もう、一年もかからない場所に来ているはずだよ。天空の塔もあんなにくっきりと見えているからね」


『パワーアップしたフルーゲなら半年もかからないかもな』


「一応皆に言っておくけど、ウサ婆のテレポートでいきなりグランサンクチュアのどこかの国に転送してもらうとか、僕は絶対に考えないからね」


 ノアの発言の意味を皆理解していた。そう、ウサ婆はグランサンクチュアに存在する全ての国へ一瞬で辿り着くことができる。おそらく希望の剣全員を同時に送ることも容易だろう。


 しかし、ノアはそんなつまらないことは一切考えていなかった。


「僕はここにいる皆とこのガイアの冒険を楽しみたいんだ。この旅があってイフリートやウサ婆とも出会えたし、最高に面白い魔物とも出会えたんだから。この過程がたまらないんだよ」


 わかっているよという顔でヘンリーたちも笑って頷いている。


「安心しなさいよ。私たちだってこの旅のワクワクが好きなんだから。しかも快適な寝床に美味しいご飯もあって最高じゃない」


「一国の王女がそれ言っちゃうと国王が泣いちゃいそうだね」


「本当ですわ、お姉様。でも料理が美味しいというのはリリーにとって最高の褒め言葉です!」



 快晴となったガイア上空をフルーゲが快調に突き進む。誰かが気になったポイントを発見すれば、降りて確認する。天候が悪いとき、戦闘訓練がしたいとき、付近のダンジョンにモグる。メンタルリフレッシュとして王宮とリモートスクリーンで繋がって大笑いで楽しく時を過ごす。


 この広大なガイアの大地をここまで楽しく、そしてここまでたくましく旅する冒険者パーティーがいただろうか?




 当然存在しない。なぜなら彼ら希望の剣こそが、このガイアの歴史を大きく変える伝説のパーティーとなるのだから。


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