第121話 6人目の仲間
「聖女の羽衣! 素敵じゃない! 私も見たいわ!」
ティアとリリーが興味津々でローブを手にとって羨ましそうに観ている。
「これはすごいわ……白だけどなんというか……内側から淡い金の光があふれ出るような美しさ……どうやったらこんな質感が表現できるの?」
エミラが感動している。タンコブを頭にトッピングされたノアもこのクオリティーには自画自賛していた。
「この素材はね。様々な工夫があって魔土術による攻撃は基本完璧に防御できる。しかもさっきのエミラが放ったオーラと合わせて考えると、おそらく聖女の羽衣を纏っていない手足や顔といった部分への攻撃も跳ね返すと思う。それくらいすごいよ。ゴールデンドロイムの表皮と超級魔土を惜しみ無くガンガン使っていてね。更にウサ婆にも助けてもらって仕上げの白のローブに織り込ませた感じだね」
「とても楽しかったがね〜。ノアの発想には驚かされるだがね〜」
『俺もちゃんと手伝っているんだぞ! 温度管理がどれだけ大変だったか……超級魔土を溶かすってすげ〜ことなんだぞ』
「わかっているわイフリート。 そしてノア、ウサ婆。本当にありがとう!」
聖女の羽衣を羽織ったエミラが輝いてみえる。
「うわぁ〜、なんか本当に聖女様って感じだね。すごいよエミラ」
「お姉様本当に綺麗だわ〜」
「私も聖女になりたかったわ……でもエミラみたいに綺麗じゃないから無駄か……」
ヘンリー達の素直なリアクションに照れ笑いするエミラ。そしてイフリートがその空気をあまり読まずに次のアイテム説明に入る。
『これを全員に配るぞ〜。新しい超級魔土のアクセサリーだ。マナフォンとしても使えるし、もうマナの枯渇によって割れる心配もないぞ。大まかな数字だが超級魔土20個分のマナが圧縮されているからな』
『なんと、それはすごいな。やるではないかイフリート。妾の要望に見事に応えたな』
これにはエアルヴァが相変わらずの上から目線で反応した。
「アハハ! これだけあればエアルヴァも我慢せずに魔土術を放てるね。リリーへの負荷もかなり減らせるだろうし。まぁ、滝壺での修行で既にマナ枯渇問題は解決していたのかもしれないけどね」
(こやつ……妾の考えに気づいておったか……さすがじゃの……)
「難しいことはお兄ちゃんに任せるとして、リリーには何も作っていないの?」
ティアのフリにノアとイフリートが笑顔で応える。アイテム袋へ手を入れてゴソゴソと漁って取り出したのは短いステッキだった。持ち手部分には美しい宝石が埋め込まれている。
『これはリリー専用<風神の杖>だ』
「この名前最高にかっこいいでしょ! 僕とイフリートで考えたんだ!」
「……わかったから名前は置いといて、効力を教えてよ」
エミラがサラッと流す。今度はリリーが興味津々だ。嬉しそうにノアたちの顔を観ている。
『魔土術の破壊力がヤバすぎるリリーの弱点カバーだぜ。より繊細に標的に向かって攻撃したい時や複雑なイメージの風を生み出す時にこの風神の杖があれば余裕だ。まぁ、リリーが使っていく中で感じるとは思うが、絵を描くように自在に風を操れる代物だ』
「本当に? すごい! 早く使ってみたいわ!」
「リリー、この杖はね。僕らだけではなくてエアルヴァも手伝ってくれたんだ。リリーが知らないところでね」
「え? 全く気づかなかった……エアルヴァ様、ありがとうございます」
『う、うむ。良いのじゃ。そなたのレベルアップのためじゃからな』
『おい、エアルヴァ〜。お前お礼言われて嬉しそうじゃねぇか』
『うるさい、火の玉小僧が!』
ニヤニヤするイフリートを風で聖水の泉へ吹っ飛ばす。
『あっぶねぇ! 何すんだ風ババァ!』
「「「ハハハッ」」」
楽しげな希望の剣パーティーをウサ婆が一歩引いたところで羨ましそうに眺めている。
(このパーティーとの旅は楽しそうだがね……)
「よし! 皆に武器や防具も行き渡ったし、とりえずリモートスクリーンで報告会だ。その後ご飯にしよう!」
「了解!」
国王が聖女となったミラ王女の姿に涙し、皆がその神々しいオーラを感じて言葉を失う。そしてノアたちの発明の数々に驚きのあまり失神しかけるマリアとボイド。色々あったがこの奈落の滝で過ごす時間が終わりを迎えているということに皆が気づいていた。
「あの……ウサバ様。無理を承知で一つお願いがございます」
唐突にロイがウサ婆に話しかける。ノアたちも黙って話を聞く。なんとなく希望の剣はロイの意図を感じ取っているようだ。
「ん? なんだがね? どうしたがね?」
「…………ウサバ様、もしよろしければ、ノアたちと一緒にグランサンクチュアに同行していただけませんか?」
驚いた表情でロイを見る国王とミネルヴァ校長。そしてエミラたちは笑顔で頷いている。
「……ロイ、急な話だがね。続きを話すだがね」
「はい。正直申し上げまして、私はウサバ様がこの先もずっと聖なる祠で研究をなさることよりも今のガイアの大地とグランサンクチュアの様子を知られた方が良いのではと考えております。時代は流れ、当時とは全く違った世界になっているはずです。ノアたちと同行していただけるのであれば、私たちも親としてとても安心できますし、こうしてリモートスクリーンを介してお話できることはお互い研究者として非常に有意義な時間かとも思います。ノアたちの可能性を考えてもウサバ様にとって悪い話ではないと思いまして……」
「余からもお願いしたい。ウサバ殿、考えてみてはもらえないだろうか?」
「ヒャッヒャッヒャッ。熱烈なお誘いを何故か王国側から受けたがね〜」
「私達も同じ考えなんです。ウサ婆」
ミラ王女が真剣な顔でウサ婆を見つめる。ティアやリリアナ王女、そしてヘンリーも頷いている。
「ウサ婆、僕たちと一緒に冒険しようよ! それにここだけじゃなく、他のダンジョンの研究も必要でしょ?」
ノアが笑ってウサ婆を誘う。
「…………いいだがね。一緒に行くがね。食事には必ずお肉料理が食べたいがね!」
『おいおい、条件がメシかよ』
皆が笑ってお礼を言い、スクリーンの向こう側で国王とロイも大喜びしている。
こうして希望の剣パーティーに6人目の仲間、魔土賢者ウサバが新たに加わることが決まった。




