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グランサンクチュア〜地底天空都市の伝説〜  作者: 大森六
第三章 ガイアの大地

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第113話 聖なる祠 05

「この威力、そしてこの炎と打撃の掛け合わせた攻撃のスタイル……考えつかなかったわ」


 リリカが素直に技のすごさに驚いている。


「ノア、これは精霊さまの力を借りるしかできないことだとあなたは思う? それとも魔土術で代用できるものかしら?」


 ミネルヴァ校長が具体的な質問をノアにぶつける。


「理論上、代用できると思います。ただ問題は術を身に纏う側の魔土戦士ソレイヤーの資質、そして精霊側の魔土術士ソレイジの資質がどうかで成功率が大きく左右されそうです。単純に術を唱えることだけではないですし、纏う側も単純に打撃が強いというだけではない、という感じなのですが……」


 ノアは少し考える。


「例えば父さんなら余裕で母さんの魔土術を纏えるはずです。もしもマナの左腕の方を使うなら今すぐにでもできると思います。魔土術まとじゅつは基本的に放って攻撃するわけですから普通に唱えて放つと腕や手にダメージを与えてしまいます。そうではなくて、その魔土術を詠唱して魔土戦士ソレイヤー()()()()()()()()()()()()()術を纏わせることが必要でして」


「うんうん。なるほど! 素晴らしいわ! こんな革新的な技術があったなんて。いや、思いついても普通はできないわ。たとえ精霊を宿しているとしてもね。さらにはそれを遠隔で別の魔土戦士ソレイヤーに纏わせるという発想がすごすぎる」


 ミネルヴァ校長も大絶賛だ。



「……訓練時は何度もヘンリーとノアの腕が吹っ飛びましたよ。だから私はリリアナにはこの技は禁止としました。そもそもリリアナは戦士ではありませんからね」


 ミラ王女の話を笑って聞くノアとヘンリー。国王と王妃は完全にひいている。しかし娘の判断を聞いて安心しているようだ。


「腕が吹っ飛ぶか……でも俺の場合、左腕はもともと無いからな! リリカ、後で火と風と水で試してみてもいいか?」


「勿論よ。やってみたいわ! 魔土術の技術向上への大きな一歩になるわ! つまり私はロイのマナを感じ取ってそこに術を施すということね。確かに技術がいるわね」



 二人の喜ぶ顔をノアとティアが嬉しそうに見ている。最近の報告会では4割以上がリーダーの役割を担えていないという点から説教されるノアだが、それでも両親が喜ぶ表情を見れるから、報国会はとても楽しみだった。


 そして魔物レポートがクライマックスを迎える。



「その後、十分休息を経て、次の扉を開けた時、目の前には奈落の滝が広がっていました。ノア、後で滝のふもとへ行って国王と皆さんに滝を観せたいわ。できるかしら?」


「勿論です! あの壮観な絶景を見ていただきたいですね!」


「ほう、本当に存在する滝というものを是非この目で見てみたい。楽しみにしておるぞ」


 国王もロイも皆楽しみにしている。その期待を一旦しまって、ミラ王女は魔物の話に戻した。


「麓へ降り立った私たちは、黄金のドロイムと遭遇しました。それは炎の精霊イフリートの業火すらも全く効かない全ての魔土術耐性をもつ最強のドロイムでした」


「ドロイム? 嘘だろ? 黄金とかいたか?」


 王宮がざわめいている。ミラ王女が嬉しそうに話を続ける。


「とんでもない素早さでヘンリーやティア、そしてリリアナの風の攻撃をかわせる身のこなし、マナを凝縮して塊をぶつけてくる攻撃スタイルなど、どれをとっても一般的なドロイムのそれとは異なっていました。これは新種であると私たちは判断して、本日ここで発表いたします」


 さらにざわつく王宮。そしてノアとイフリートを黒子のように使うミラ王女の前に五匹のゴールデンドロイムがアイテム袋から元気に飛び出してきた。ぴょんぴょん飛び跳ねて嬉しそうにはしゃいでいる。


「おぉ〜! 本当に黄金だわ! すごいわ!」


 魔物に詳しいミネルヴァ校長もはしゃいでいる。それほど珍しい魔物なのだろう。


「私たちはこの新種の魔物を<ゴールデンドロイム>と名付けることにしました」


 ミラ王女はノアの希望通りの名を告げた。悔しそうにするイフリート。


「ところで……ここにいる五匹はどうやってテイムしたのかしら?」


「はい、それはゴールデンドロイムがティアに向かって攻撃して、ティアを麓から滝に向かって吹っ飛ばしてしまいました。それに怒り狂ったリリアナ王女がゴールデンドロイムの防御力を大きく上回る大技を出したことでドロイムが完全に萎縮してしまいまして……そのすきに僕がテイムしてアイテム袋に回収し、リリアナ王女の桁違いの攻撃からドロイムを逃しました。この五匹のゴールデンドロイムはリリアナ王女の指示を一番よく聞きます。主人あるじの僕よりも」


 再び王宮に笑い声が。そして恥ずかしがるリリアナ王女。当然本人はその出来事を覚えていない。ヘンリーが必死で止めていたらしい。


「そして滝壺に流されていったティアを私が飛び込んで救出しようとしたのですが、流れがきつくて一緒に溺れてしまったところをウサバさんに助けられて現在に至るといったところです」


 改めてウサ婆にお礼をいう国王とロイ。


「ウサバ様はこのダンジョンにどのような魅力を感じてそこで研究なさっているのですか?」


 リリカがストレートに質問してみた。


「ヒャッヒャッヒャッ。それでは一旦滝の麓へ移動するがね」


 そういって、ウサ婆はノアたちとリモートスクリーンユニットを一斉にテレポートさせた。


「うわ! すごい! いきなり全員をテレポートさせるなんて……一体どうやって」


「待ってノア。声が聞こえるわ。この滝の音に消されることなく、皆の声が聞こえる。一体どうやって……」


「ちょっと魔土術をかけただけだがね」


 驚いているノアたちそっちのけで、王宮の人間全員が声を出せずに驚いていた。壁に投影されたスクリーンからみるダイナミックな絶景。感動せずにはいられない。


「す、すごわ……水が……こんなに流れて……いや流れ続けるなんて」


「本当に存在したのか……奈落の滝……」


「奇跡だ。こんな光景を目にすることができるなんて……」


 涙を流すものも大勢いた。単純な感動ではなく本能かもしれない。


 それほどガイアの大地で生活を営むものにとって、水が永遠と流れ続ける滝という存在を認知したことは大きな意味を持つことなのだ。


 それは今すぐに何かできることではない。しかし、心の中でどこかゆとりを持てた気がする。人生に希望が持てた気がするのだ。おそらくそれは種族を問わず、持ち得る感情だろうと、王国の皆の反応を観てノアはそう思った。


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