第102話 ダンジョンの門番
背中に翼が生えていて剣を持ち、魔土術も使える魔土戦士系の魔物、ガーゴイラ。ノアたちに向かっていきなり嘴を開いて炎を吹き出した。
イフリートがより強大な炎でのみ込んで対応し、逆に炎を飛ばして攻撃を仕掛けるが飛び回ってかわされる。
そして息のあったコンビネーションでヘンリーを狙う。剣で仕掛けてヘンリーに受けさせて、別の一匹がヘンリーを狙う。
しかし、ノアがグローバで上手くガーゴイラの太刀を受ける。そこにティアが炎弾を放つがまたしても飛んで攻撃をかわし、距離をあけられてしまう。
「あいつらすばしっこいなぁ。息もピッタリだし」
「グエェ! グェ!」
ガーゴイラが標的を変えて後方のリリーとエミラに攻撃を仕掛ける。一匹が風系魔土術を放ち、別の一匹が同じタイミングで炎系を同時に唱えて重なり合わせる。
「やばい! 炎槍と似たような効果だ!」
エアルヴァが風の壁で防いだが、息つく暇を与えずに剣で直接攻撃を仕掛けるガーゴイラ。
「結界!」
エミラが張った強固な物理攻撃用の結界でなんとか斬撃から身を守る。隙をついてヘンリーとティアがガーゴイラの背後から攻撃するがそれもかわされる。
「クアトロ!」
ノアが全員の素早さを4倍にする。するとガーゴイラも補助系魔土術で速度を上げてきた。かなり知能が高い魔物だ。こちらの攻撃にしっかり対処している。
「ヘンリーとティアで一匹を、イフリートとリリーで別の一匹を倒してくれ、エミラは結界物理防御と魔土術防御の結界を自分自身に張って待機」
「二重結界って……やったことないんだけど? まぁ、でも弱音吐いている場合じゃないか
「了解。それでお兄ちゃんは何するの?」
「ティアたち二人の攻撃をかわすであろうガーゴイラに一撃を入れるつもりだよ」
「かわすこと前提って悲しいなぁ。まあいっか。それで倒せるなら」
ヘンリーの小言をスルーしてノアが水弾をいつでも飛ばせるように準備をする。
「イフリリート側は必ず倒して! 僕はティアたちの方に集中するから」
『おい! 略称で雑に扱うな。倒すけどよ』
リリーが笑っている。先にティアとヘンリーが動き出す。
「イフリート! 少しくらい力を貸しなさいよ! ラファイア!」
向かって左のガーゴイラを炎で包み込む。完全にガーゴイラの視界を奪ったティアとヘンリーが接近する。
「ウインドカッター!」
ティアが連続で放ったところにヘンリーがロングソードに風魔土術をまとわせて渾身の一太刀。炎ごと真っ二つに。
(おかしい……手応えがないぞ……炎の中にいない! どこだ?)
「ティア! 後ろだ!」
「え?」
ノアの声にいち早く反応したヘンリーがティアをドンと突き飛ばす。
グサッ!
ガーゴイラの突きが肩に突き刺さる。なんとか心臓への一撃をロングソードで受けてギリギリかわした。逸れた剣の切先が肩に直撃した。
「ヘンリー!」
「グエェ!!」
ガーゴイラが勝ち誇ったような顔で笑っている。しかしヘンリーは逆にニヤッと笑いかえした。肩を貫いた剣を抜かれないようにガーゴイラの腕をしっかりと掴んで離さない。
「ティア! 思いっきり撃ちまくれ!」
「これで終わりよクチバシ男! 炎弾!」
ヘンリーの背面からティアが突如現れてガーゴイラの顔面に強烈な炎を何発も叩き込む。ガーゴイラの顔が完全に灰となって消えた。その様子を見て水弾を叩き込む準備をしていたノアだったが術を解除した。
「ヘンリー大丈夫? 庇ってくれてありがとう。本当にいつもごめんね」
「あはは、本来王女を守る役割なんだけど、ティアと一緒に組むことが多いからね。イテテッ」
遠隔でエミラのハイソイラで徐々に治癒されていくヘンリーの肩。その頃リリーの逃げようがない範囲攻撃の風魔土術で動きを封じられたガーゴイラにイフリートの炎が容赦無く一瞬でチリにかえる。
「やっぱりさすが精霊。すごく強いなぁ。今更だけど」
ガーゴイラからロングソード2本をゲットしてヘンリーがアイテム袋の中に回収する。
「ヘンリーとティアの最初の攻撃は悪い展開じゃなかったから気にしちゃだけだよ。相手の回避能力が一枚上手だったんだ。変わり身の魔土術かな。燃え盛る炎の中に一瞬別の魔物の魔素を感じたから」
ティアとヘンリーが頷く。
「逃げられないって思って油断した私が間違っていたわ。ヘンリーがかばってくれなかったら、後頭部に穴が空いていたのは私だった」
「ティア! やめてよ!」
リリーが大きくリアクションする。ティアのピンチには敏感だ。むしろさっきは気付かれなくてよかったと思うノア。しかしながら前衛で戦う二人の突破力はかなり有効だが同時に攻撃を受けるリスクも後衛のリリーとエミラに比べて圧倒的に高い。
「リリーとティアの精霊タッグで前衛を任せてエミラをヘンリーに護らせるのもありだけど、第二王女のリリーが前衛というのは流石に国王に怒られるからな……」
ノアがパーティーの戦闘時の編成に少々悩み始めた。
「皆、ちょっと聞いてほしい。魔土術学院にあった魔物大辞典によるとガーゴイラは基本的に門番としての役目を果たすことを目的に生み出される魔物らしい。つまり、ここからがこのダンジョンの本番で、この先もっと強い魔物が出てくる領域なんだと思う」
『しかもよ。以前俺が来た時とは比べものにならないくらいに魔物の質も量も大きくなってるぜ』
イフリートの言葉に頷くノア。
「このダンジョンも成長しているってことだね。今の僕らの戦闘時の編成について、皆はどう感じているのか知りたい。動きにくいとか、変えたいとかあるかな? 今はティアとヘンリーが前衛で後衛にエミラとリリーだね。僕とイフリートが中盤で戦況次第で動きを変える感じでいるけれど」
ヘンリーは頷きながら手応えと戸惑いを話す。
「僕は特に前衛で問題ないんだけど、気になっているのは王女の護衛でこのパーティーに同行しろというロイ騎士団長の司令なんだけど、実際は王女を護るポジションにいないってことだね。ティアとの前衛コンビだからエミラとリリーがいる後衛までは距離があって……」
エミラが笑顔で自身の見解を述べる。
「ヘンリー、それに関しては問題ないわよ。ノアの戦術に関する判断も間違っていないし、ヘンリーが私たちのフォローにまで手を回せないことも十分に理解できるわ。護衛の件はダンジョン内では忘れて。むしろティアとの連携が強くなれば安全になるかもね」
リリーも頷いている。異論は無いようで、ホッとするヘンリー。
「私も前衛のこのポジションがあっているし、ヘンリーとの連携もかなりスムーズになって来たから今他の誰かと変わると攻撃を食らったり、連携が崩れるリスクが増えるかもしれないわ。ただ、イフリートができるだけ私とヘンリーの近くでカバーしてもらえる方が精霊の力を活用できるからありがたいかも」
『確かにそうだな。俺が完全に単独よりもティアの周囲で暴れた方が良さそうだ』
「リリーはすでにゴーレムを破壊されてしまったから、これからはエミラのゴーレムと結界、そして風の精霊エアルヴァの力で二人を護りながら前衛をサポートって感じでいい? 流石に二人に何かあったらね……ちょっと国王がショックで倒れそうだから」
政治的な理由で自由に戦えない王女二人。複雑な状況も理解しつつ、笑ってノアに返事する。
「了解! 問題ないわ! 前衛で何かあったらできるだけ早く回復できるようにするから安心して」
《妾もこの二人を護るからノアたちは安心して前衛側で戦うといいぞ》
エアルヴァが念話で全員に話しかける。これで迷わずに戦える。
「よし! それじゃあどんどん進むよ!」




