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俺の文章は、どこにある  作者: たつき


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企画会議、開始!

フロアの照明が白い。


昨日までよりも、より眩しく感じられる。


(これも、紡のおかげかな)


バーでの出来事を思い返すと、恥ずかしさが勝ってしまうが……

それでも、いい意味でふっきれたのは事実だ。


(俺のシナリオを守れるのは、俺だけだ!)


そう言って、ひなたは自分のほっぺたを力強く叩く。



会議室に移動すると、すでに如月さやの姿があった。


「先輩、早いですね」

「ええ、残された時間も少ないからね」


如月はひなたのディスプレイを一度だけ見て、言い切った。


「企画書の提出は金曜日いっぱい。

 今日は水曜日だから、あと三日しかないわ。

 今回は、企画書までの提出ね」


「水曜の午前で企画の土台を揃えて、午後でたたき台を作る。

 木曜に磨いて、金曜の朝に内容の読み合わせ。

 そして、金曜中に企画書に落として提出する流れになるわ」


話を聞いただけで、吐き気がするようなスケジュールだ。

とはいえ……自分が落ち込んで時間を無駄にしているのだから、

文句は言えない。


「と言っても、私たちのゲーム『失くした記憶と学園の鍵』は、

 シナリオが売りのゲームだから、企画と言っても、

 まずは物語の骨子がないと始まらない」


「その部分……かなり負担かけることになるけど、平気そう?」


如月さやが、こちらを真剣な目で見つめてくる。


「大丈夫です!」


「よし。1.5周年、勝ちに行くわよ!」


「……はい!」


「……と、ここまではもう他のメンバーには通達済よ。

 誰かさんのせいで、時間に余裕があったからね」


「その分、結果でお返しします」


「ふふっ、軽口を叩ける余裕があるなら平気そうね。

 さっそく、会議を始めましょうか」



会議室にメンバーが集まる。

プランナーリーダーの三角彰人、アートディレクターの白石真弓、

ユーザーサポートの南雲りこといった、いつもの面子だ。


すると、扉が開く。


「もう~急に呼び出して、何なんですかぁ~!」


「乙部、来たわね!」

「はい~。お久しぶりです。さや先輩!」

「急に呼び出して悪いわね。緊急事態なのよ」

「早くも、炎上の香りしかしないですけど(笑)」

「悪いけど、今日からよろしくね♪」

「さや先輩は、もう少し私に優しくするべきです~!」


「新人の頃、質問の仕方が尋問みたいで、

 周りに恐れられてたのに……ずいぶん丸くなったわね」

「ひど~い! 今の私は“慈愛のお姉さん”です~!」

「……で、壊れかけの現場を立て直したの、誰だっけ?」

「さや先輩~! そこは言わなくていいやつ~!」


「ふふっ、雑談はこんなところで。

 悪いけど、キャッチアップは無しで働いてもらうわよ」

「は~い。頑張りま~す!」


怒涛の会話に、メンバー一同唖然とする。

如月さやが呼んだようだが……その姿に見覚えがあった。


「ひなたくん、またご一緒できて嬉しいです♪」


「……お、お手柔らかに」


その姿を見て、白石がため息混じりに耳打ちしてくる。

「あの人……成立屋っすよね」

「ああ、そうだな……」


乙部いぶき。


社内で「成立屋」と呼ばれる、クリエイティブディレクターだ。


どんな無茶でも実現可能な形に落とす。


そのぶん、要求も高いことで有名だが――



南雲が控えめに付け足す。


「でも……あの人がいると、事故は減りますね」


「――で、締切はいつですか~?」


雑談混じりになりそうな空気を、乙部が一蹴する。


「金曜提出。もちろん社内アンケに回す“社内用資料”だから、

 文言と実装範囲が揃ってないとダメよ」


「はいは~い!」

乙部は机にメモを置き、ペン先で“項目”を刻むように言った。


「じゃ、まず“成立する範囲”から切りましょ♪」


「提出物は、まずは三つ。

 アンケに載せる企画書、これは社内レギュだと5枚以内だね~。

 さらに、予算案。これは……さや先輩に任せますっ!」


「1.5周年で目標とする売上目標から逆算したKPI、

 後はゲーム側の目玉コンテンツの設計と達成目標。

 ペライチでコンセプトだけあればとりあえずいいかな。

 これは……三角くん担当かなぁ~」


「……うっす!」

「お、元気があるねぇ~!」


「とりあえず、今日、午前中に決めるのは“土台”だけ。

 各自、並行作業でやってもらわないと、

 間に合わないからねぇ~!」


「さや先輩、とりあえずはそんなところです~?」


「ええ。まぁ、そんなところね」


テキパキと作業を分担していく姿に、呆気にとられる。


「とはいっても、企画の骨子となるシナリオが決まらないと、

 詳細なプラン作成には動き出せないよねぇ~」


「そこはぁ……私とひなた君の担当ってことで♪

 さや先輩も、もちろん入りますよね?」

「ええ。もちろんよ」

「……三角くんはどうする?」

「自分は、初稿が上がってきたらで!

 ひなた先輩の案、信じてます!」


「じゃあ、とりあえず今すぐ決めることは、

 “面白い話”は大事だけど後回しで……

 まずは1.5周年の“成立要件”を揃えないとねぇ~」


乙部はペン先で空中に線を引く。


「データ班と勝負するのは企画だね~。

 実制作の良し悪しじゃなくて、企画書で“勝てる”

 形に落とす。ここは誤解ないようにね」


「成立するか、とかは二の次。

 興味を持ってもらえなかったら“負け”」


如月が補足するように言った。


「乙部の言う通り、勝負の土俵は企画。

 だけど、もちろん実現できる前提で作ること。

 じゃないと、後で地獄を見るのはみんなよ」


「了解! じゃ~、運用側も呼びましょう。

 懸念点は同時に挙げていこ~」


 乙部の声に、如月が頷く。


「運用ディレクターの砂原も呼びましょう」


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