表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

99/110

第42話 王都、炎上


 王都の中に設営された臨時の指令本部。


 ヴァルキュリア騎士団の団長、アレクシアの元に次々と凶報が舞い込む。


「鍛冶職人街の空き店舗で爆発発生ですっ!!」


「こちらは穀物倉庫で火災発生、負傷者数不明、現在第一騎士団が対応中です」


「各地で同時に火災が発生、消火が間に合いませんっ!!」


 悲痛な叫びにも似た報告を聞きながら、アレクシアは次々と指示を出していく。


「中央広場から露店を立ち退かせろ。そこに被害者を集め、集中的に治療にあたらせる。サマンサ、第一騎士団に説明して協力を仰げ」


「承知しましたっ!!」


「消火に関しては、有志による消火団をまとめるしかない……コリーナ、任せられるか?」


「大丈夫です。いくつか心当たりがあります」


「よし、この件に関しては全権を委ねる……頼んだぞ」


「はい、団長っ!!」


 コリーナが数人の騎士達を連れて、走り去っていく。


 そしてそんなアレクシアに更なる凶報が届く。


「貴族街で火災発生ですっ!!」


「な、何っ、何処っ!?」


「アンダーウォーター男爵邸です!!」


「貴族街の担当は近衛騎士団だろう? 何をしているっ!?」


「現場にはこの騎士団の姿はありません……しかし、このままでは類焼が懸念されますっ!!」


「くっ……わかった……近衛騎士団に伝令を出せ!! 『アンダーウォーター卿の家が延焼中につき、付近の家屋に類焼する恐れあり』、となっ!!」


「はっ、行ってまいります」


 伝令が来るたびに、新たな伝令を持たせて走らせる。


 その繰り返しだった。


「(完全に後手に回った……敵の動きが早すぎる……間に合わない……)」


 アレクシアは指示を飛ばしながら、焦燥感に押しつぶされそうだった。


「(いや、これは陽動なのっ!!……本命は舞踏会場……陽動に振り回されていてはいけないのよ、アレクシア)」


 アレクシアはそう呟き、自分を鼓舞する。


「王宮の舞踏会場に伝令、『敵の陽動が激しい。警戒を厳にせよ』と伝えなさいっ!!」


 そう指示を出すアレクシアの元に、更なる悪い報告が届くのだった。


 ◆


 王都の中央広場。


 サマンサが第一騎士団の騎士達を連れて、この場所に救護施設を設営する為にやってきた。


「この場所を、一時的に救護施設設営の為に接収しますっ!! 露天商の方々は、一時的に場所を開けてくださいっ!!」


 サマンサが大声で露天商たちに声を掛けるが、露天商たちの動きは鈍い。


 それどころか、あからさまに不満を口にするものすら現れる。


「俺達に此処から出て行けっていうのかっ!?」


「いくら何でも横暴だろうっ!!」


「俺達の稼ぎなんてどうでもいいと思ってんのかっ!!」


 露天商たちから大きな反発が起こる。


「王都内の至る所で火災が発生しているんだっ!! 負傷者を救護する為に、この場所が必要なのだっ!!」


 第一騎士団の騎士達が言い返す。


 しかし、騎士団が言い返せば言い返すほど、露天商たちの反発が大きくなる。


「よそに行けばいいだろうっ!! 俺達と被害者と何の関係があるんだっ!!」


「そうだそうだ、騎士団は横暴だっ!!」


 露天商たちと騎士団の騎士達の対立が激しくなっていく。


 その時、いずこからか石が騎士団に向かって投げつけられる。


 ガツッ


 第一騎士団の騎士の鎧に石がぶつかる。


 その様子を見ていた騎士達の表情が変わる。


「誰だっ!! 我々に石を投げたのはっ!?」


 それはもはや恫喝だった。


「貴様ら、このような事をして、ただで済むと思っているのかっ!?」


 騎士が叫ぶ。


 そしてその叫びに答えるように、多数の石が騎士達に投げつけられる。


 ガツッ、ガツッ、ガツッ


「お、おのれ貴様らっ!!」


 騎士の一人が剣を抜く。


「貴様ら、王家の方針に逆らうのかっ!?」


「貴殿らが無辜の平民に剣を向けるのが、王家の方針なのですか?」


 そう言って、人混みの中から、ローブを纏った男が一歩前に現れる。


「何者だ、貴様っ!!」


「わたしが何者なのかは些細な問題だ……この場で大切な問題は、王都の民達に十分な説明もなく、この場を明け渡せと、剣を抜くお前たちの方だっ!!」


「聖者様……」


「聖者様だ……」


「ああ……聖者様……」


 一部の者たちが男の前にひれ伏す。


 聖者と呼ばれた男は平伏す人々を一瞥すると、大きく頷いた。


「このように無辜の平民を恫喝し、剣で脅すことが王家のやり方かっ!?」


 その言葉に騎士達が奥歯を噛みしめる。


 聖者と呼ばれた男は更に言葉を繋ぐ。


「このような専横を許す王族など必要ないっ!! 出て行くのはお前たちだっ!!」


「貴様っ!! 不敬だぞっ!!」


 騎士の一人が剣を引き抜き、聖者と呼ばれた男に斬りかかる。


「聖者様っ!!」


 平伏していた男の一人が二人の間に飛び込む。


 ザシュッ


「ぎゃあああああっ!!」


 飛び込んだ男の背中を、騎士が袈裟懸けに斬り割いてしまう。


 唖然とする騎士……地に伏して動かない男……そしてその様子を冷静に見つめる聖者と呼ばれた男。


「これが……これが王家のやり方なのだ……見たろう? 言う事を聞かねば暴力で抑えようとする……平民の命などなんとも思っていないのだ……」


「これが施政者のやる事か……否、断固として違うっ!! 聞け、王家の犬どもよ……このような専横が許されると思うでないぞっ!!」


「そうだ、そうだっ!!」


「王家の犬は出て行けっ!!」


「出て行けっ!!」


 住人たちから激しい石礫が騎士団に投げつけられる。


「く、くそ……一旦退却するっ!!」


 第一騎士団の誰かがそう叫ぶと、騎士団が中央広場から撤退していく。


 その姿を見た住人たちから割れんばかりの歓声が上がる。


 その中央で、聖者と呼ばれた男が静かに両手を空に掲げる。


 その姿はまさに聖者と呼べるものに見えた。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ