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第15話 点と点の先に

 


 次の日の朝。


 ニコは今日から二日間は夜間警護の為、夕方までは待機時間となる。


 つかの間の自由時間を満喫するために着替えも終えて、後は食堂に行くだけとなった時だった。


 其処へフロムがフラフラとしながら部屋に入ってきた。


「たーだーいーまー」


「フロム、大丈夫?」


「駄目、眠い」


 そう言ってフロムはニコに凭れかかる。


「あー、ちょっとダメだって。寝るんなら服を脱いでベッドで寝なさいっ!!」


「むーりー」


「無理じゃないってば……もうっ」


 ニコはフロムを引きずりながらベッドまで運ぶ。


 そしてベッドの上に寝かせてから、引き抜くように制服を脱がせていく。


「もう、皺になっちゃうよっ!!」


「すう……」


 既にフロムは夢の中に旅立っていた。


「もうっ! フロムだって徹夜に弱いくせにっ!!」


 ニコは文句を言いながらも、フロムの制服を脱がせ、綺麗に畳んで机の上に置いた。


「これで貸し借り無しだからね」


 そう言ったものの、フロムは返事もせずに熟睡モードだった。


「……ご飯食べに行こ……」


 ニコはそう言って、部屋を出る。


「あれっ、アグネス居なかったな……朝練かな……」


 最近、他の二人と任務のスケジュールが異なっているので、顔を合わせない事も多くなってきた。


「最近、アグネスとちゃんと話してないなー」


 ニコは暫くその場で考えていたが、結局答えが出ずに食堂に向かったのだった。


 ◆


 今日の朝食のメニューは野菜とお肉がゴロゴロ入ったシチューとパン、そしてぶどうジュースだった。


 アグネスとは特に約束している訳でも無かったので、ニコは一人で朝食を摂り始める。


 周りを見回すと、ニコと同じように一人で食事をしている者や、仲間と楽しく食事している者たちと様々だった。


「(意外に一人で食べている人も多いんだな……)」


「(そう言えば最近ノワールの所に行ってないや……きっと拗ねてるだろうな……)」


 ニコはノワールに頭をぶつけられる自分を想像する。


「ヤバい……今日はノワールに付き合おう」


 ニコはそう決断すると、シチューの残りを口にかきこむのだった。


 ◆


 ブルルルルルッ、ブルルルっ!!


 予想通りニコはノワールに頭をぶつけられて、尻もちをついていた。


「ごめんて。そんなに怒らないでよ……色々あったんだからさ」


 ブルルルルルッ


 ノワールは前足を掻く仕草をしてニコを威嚇する。


「分かったって。これからお出かけしようよ。王城の近辺だったら大丈夫だから」


 するとニコの言葉が分かったのか、ノワールが大人しくなる。


「ちょっと待っててね。今、許可と鞍を持ってくるから」


 ブルルルルルッ


 それはまるで『早くしろよ』と言っているようだった。


「はいはい。ちょっと待っててね」


 そう言ってニコは厩舎の事務所に向かうのだった。


 ◆


 ニコとノワールは王城をぐるっと回る『騎馬コース』にやって来ていた。


 正式な名称ではないが、ニコと同じように普段馬を走らせる機会の少ない貴族たちが、王城を一周する道を勝手に『騎馬コース』と呼ぶようになったのが切っ掛けと言われている。


「歴史はともかく、この道は結構気持ちいいね」


 ニコは今、王城を左手に見ながら反時計回りに進んでいた。


 道の両側に生えている木々はよく手入れをされていて、木漏れ日がキラキラと輝いてとても美しかった。


「綺麗だね、ノワール」


 ブルルルルルッ


 何となくノワールも喜んでいるようだ。


 そして王城の裏手に来た時だった。


 何となくダニエルの言葉を思い出す。


「そう言えば王城の北門と離宮の庭園が繋がっているって言ってたよね……」


 ニコはそう呟いてから何となく王城の北門の方向を見る。


「確かに王城の正面にある正門と比べると、寂しい感じがするね」


 北門にも衛士が二人、入城者のチェックを行っているが、正門ほどの忙しさは無かった。


「北門を使うには、この騎馬コースを此処まで来なきゃいけないんだもんね……当然か」


 ブルルルル


 ノワールが『そんな事より早く行こうぜ』と先に行くことを急かす。


「わかったって」


 ニコは再び騎馬コースを歩き始める。


「この辺りが離宮の庭園になるのか……確かにこれなら庭園を突っ切った方が早いね」


 ニコはいつの間にかダニエルに教えてもらった近道の検証をしていた。


「で、此処が共同墓地か……ん?」


 ニコは何か引っかかるものを感じた。


「共同墓地……庭園……北門……何だろう、何か変な感じがする……」


 ニコはノワールの背中の上で、うんうんと悩み始める。


 するとノワールが急に駆けだした。


「ちょ、ちょっと、待ってってっ!!」


 しかしノワールは早足になって前へ前へと進んで行ってしまう。


「ちょっと、待ちなさいよっ!!」


 ノワールが騎馬コースから外れて、狭い小道を進み始める。


「え、ええっ」


 暫く一本道を進んだところでノワールが停止する。


「もう、何なのよっ!!」


 ニコはノワールの首筋を軽くペシペシと叩く。


 ブルルルルルッ


 ノワールが首を振るのに合わせて、ニコも周囲を改めて見る。


「あれっ……此処って……浄水場……だよね……」


 其処は先日ヴァスケスに連れてこられた浄水の為の人工湖だった。


 但し、ヴァスケスと一緒に来た場所からはちょうど反対側になる感じだ。


「……此処に来られるんだ……あれ、でもこの湖の周りは囲われていているんじゃなかったっけ……で、第一騎士団が……あれ?」


 ニコは混乱する。


「この湖は下水道と繋がっていて……下水道は王都の至る所と繋がっていて……」


 そこでニコは気づく。


「(このルートなら、人目に触れずに王城まで一直線で辿り着けるじゃない……)」


 ニコは急に怖くなって辺りを見回す。


「(……でも、道があるってことは……すでに誰かが此処を使っているってことよね)」


 ニコは、小さく息をのむと、ノワールの馬首を返す。


「戻ろう……ノワール」


 そう言うと、ノワールも素直に来た道を戻り始める。


 そしてニコは、なんだか言いしれない不安に心が押しつぶされそうだった。




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