第15話 測られた実力
「幸い死亡者はいませんでしたが、負傷者が20名を超しています」
ガゼルの報告にスティーブが顔を歪める。
「森の中の弓兵は?」
「残念ながら取り逃がしました」
「そうか……」
「今回は完全にしてやられたな」
スティーブが悔しそうに奥歯を噛みしめる。
そこへ負傷した年輩の騎士が入ってきた。
「スティーブ隊長、報告します」
「ザトクリフ、どうした!お前ほどの手練れがっ」
「お叱りは後で……馬房が襲われました」
「何っ!?」
スティーブが大声を上げる。
「馬は無事かっ!?」
「はっ、ヴァルキュリア騎士団の連中が駆けつけてくれました。敵一名を討伐、もう一名を捕虜にいたしました」
「そうか……さすがはザトクリフ。よくやった」
「いえ、賊を捕らえたのもヴァルキュリアの連中です」
指令所の中の騎士たちが驚愕する。
「それで……彼女たちは?」
「はい。今は負傷者の治療に参加しております」
「……」
スティーブは言葉を失った。
これほどの戦果を上げたのに、それを誇る事無く、協力関係にあるとはいえ、別の組織の負傷者の治療に加わるとは……。
スティーブは目を瞑る。
そして、指令所内に沈黙が落ちるのだった。
◆
「もっと包帯を用意しろ。ニコ、お湯はまだかっ!!」
「はい、ただいまっ!!」
ヴァルキュリアのテントの前は、さながら野戦病院の様だった。
ニコたちがテントに戻って最初に見た光景は、コリーナが第一騎士団の若い連中を手足のごとく使っている姿だった。
「ヴァスケス、戻ったか。丁度いい。まだ動けない者がいるらしい。こいつらと一緒に回収に行ってこい」
「お、おう……」
「すいません。こちらです」
第一騎士団の若い騎士がヴァスケスを連れて負傷者の回収に向かう。
「アグネスとフロムはリネンをありったけ持ってこいっ!!あと、傷薬もだ」
「「はいっ!!」」
「ニコはすぐに湯を沸かせっ!!消毒用だ。グラグラにしろっ!!」
「は、はいっ!!」
馬房での出来事を報告する前に、コリーナに使いまわされる。
そんな鉄火場にスティーブがやってきた。
「コリーナ殿。すまん」
「謝辞などいらん。まだ動けない者がいると聞く。すぐに回収班を用意しろっ!!」
「あ、ああ。わかった」
「ニコッ!!お湯はまだかっ!!」
「はいーっ!!」
誰もコリーナに逆らえなかった。
◆
一方、森の奥。
「そうか……アイツがやられたか……」
「はい。一刀のもとに……しかもすぐに止めを刺されました」
「……」
頭目に報告しているのは、ついさっきまでヴァスケスと切り結んでいた男だった。
「戻らぬ者は?」
「多分、捕虜になっているかと」
頭目は大きなため息を吐く。
「戦果的には問題ない……が、ヴァルキュリアを甘く見過ぎていたか」
「はい。特に私と切り結んでいた女騎士は、相当の手練れです」
「……そうか。それが分かっただけでも良かった」
男は大きく頭を下げると、頭目の前から姿を消す。
入れ替わるように、目つきの鋭い男が頭目の横に立つ。
「どういたしますか? 追撃の用意をいたしますが」
「今の奴らは手負いだ……追撃すれば、こちらにも損害が出る」
「……」
目つきの鋭い男は何も言わない。
「今回の襲撃の目的は『威力偵察』だ。目的は達成した」
「頭目が仰る通りに」
そう言って目つきの悪い男も暗闇の中に姿を消す。
再び、小さな焚火のそばには頭目が一人。
「次が楽しみだ……ヴァルキュリア騎士団」
そして頭目も闇の中へと姿を消したのだった。




