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第12話 見下された援軍

 

 コリーナ、ヴァスケス、そしてスティーブは連れ立って、作戦司令所となっている大きなテントに移動する。


 テント内には大きな机があり、その上には手書きではあるが詳細な地図が広げられていた。

 その机の周りを数人の騎士たちが取り囲んで、盛んに意見を交わしている。


「隊長、戻られたのですね」


 参謀格の騎士がスティーブに声を掛ける。

 机を睨んでいた騎士たちの視線が、一斉にテントへ入ってきた人物に向けられる。


「皆、注目してくれ。こちらがヴァルキュリア騎士団のコリーナ小隊長、ヴァスケス班長だ。今回の作戦に協力、参加してもらう」


「ヴァルキュリ騎士団より派遣されたコリーナ小隊、隊長のコリーナ・ヴァレンハルトです。微力ながら皆さんのご助力になるよう努めます」


「……ヴァスケスだ……です。よろしく」


 対照的な自己紹介にスティーブが苦笑いする。


「此処にいる二人の他に6名の騎士が応援に来た。……くれぐれも問題を起こさないでくれよ」


 スティーブは机を取り囲んでいる騎士たちに言った。


「ようこそいらっしゃいました。ご覧の通り男所帯なのでご不便をおかけすると思いますが、なにぶん『前線』なので、ご容赦を」


 参謀格の騎士がそう言って頭を下げる。


「構わない。我々も『物見遊山』で来た訳では無いのでな」

「女性ばかりの部隊と聞いていましたが、思ったより『規律』が整っておられる」


「『貴官』らほどではない」


 コリーナと参謀格の騎士との間に、バチバチと火花が飛ぶのが見えたような気がした。


 スティーブは、顔が引きつるのを必死に我慢しながら、コリーナとヴァスケスを机の方へ誘う。


「作戦を説明します。どうぞ、机の方へ」


「うむ」

「……」


 コリーナとヴァスケスは、作戦会議に参加するのだった。


 ◆


 第一騎士団の騎士たちからすると、普段は王宮の奥にいるヴァルキュリア騎士団が来ると聞いて、良い感情を持つものは少なかった。


 それというのも近衛騎士団と第一騎士団の仲の悪さは相当なもので、格式や形式に拘る近衛騎士団と、実務、実力重視の第一騎士団とでは水と油だったからだ。


 それに一般の騎士からしたら、近衛騎士団とヴァルキュリア騎士団の区別などつかない。

 どちらも王宮の中に居て、自分たちを見下している連中だと思っている。


 そんな訳で。


「お嬢さんたちが野戦テントなんて張れるのかよ?」

「物だけは置いておいたが、今頃、途方に暮れているんじゃねえか?」

「ははは。確かに」


 ヴァルキュリア騎士団の世話を命じられた騎士たちは、最低限の用意しかしていなかった。

 それは敵対行為というより、少しだけ困らせてやろうという悪戯心だったのだろう。


 それでもあまりやり過ぎれば、懲罰の対象となる。


「そろそろ音を上げている事だろう。少しは手伝ってやるか」

「そうだな。……遠目に見ただけだが、美人ぞろいだったからな」

「此処で少しいい所を見せてやれば……」


 そんな話をしながら、世話役の騎士たちはヴァルキュリアの宿営場所までやってきた。


「「「えっ……」」」


 元々草が生い茂っていたその場所は、いつの間にか草が刈られ、3張りのテントが設営済みになっていた。


 テントの前には簡易式の竈まで設置されていた。


 そしてヴァルキュリアの騎士たちは今、各々に武器の手入れや、剣の素振りを行っていた。


「(……どういうことだ……俺たち以外の誰かが、手伝ってやったってことか……)」


 唖然とする騎士たちに最初に気付いたのはニコだった。


 ニコは辺りを見回してから、世話役の騎士たちに近づいた。


「あの、まだ水場を教えてもらってなかったので、教えて戴けますか?」


「え、ああ。水場……な」


 反応が鈍い騎士たちを、ニコは怪訝そうな表情で見つめる。


「何か我々に問題がありましたか?」

 ニコの問いかけに、騎士たちはいっせいに首を振る。


「いや、……そのテントは貴殿たちが?」

「はい。普段訓練で使用している物と仕様が同じだったので、問題なく設営できました」

 そう言ってニコが微笑むと、すっかり毒気を抜かれた騎士たちが、佇まいを直す。


「こ、困ったことがあったら言ってくれ」

「はい。まずは水場を教えてください。後は今日のこの後の予定とか」

「わ、わかった。案内する。ついて来てくれ」


「はい」


 ナチュラルに人たらしなニコだった。


 ◆


 森の奥。

 小さな焚火を囲むように男達が集まっていた。


 姿は盗賊そのものだったが、動きは盗賊のソレではなかった。


「第一騎士団が40名。従士その他を含めれば80名……そこへあの連中が8名か」

「はい」

 第一騎士団を観察していた男が答える。


「とはいえ、女だからな。それほど脅威と考えなくても良いのではないか?」

 話を聞いていた若い盗賊がそう言う。


 そんなやり取りを聞いていた、いかにも盗賊の頭目と言える男が伸びた髭を撫でる。

 そしてゆっくりと口を開く。


「そいつらは『騎乗』してやってきたんだな」

「はい。馬も手入れの行き届いた感じでした」

「鎧は?」

「一人前に金属鎧を……飾りには見えませんでした」

「ふむ……」


 頭目は迷っていた。

 不確定要素をどうするか……ただの女騎士なら無視しても構わない……しかし、何故王国はこのタイミングで女騎士を前線に投入する……。

「見殺しにするつもりか……いや、それはあり得ない」


 頭目の言葉に、焚火のそばにいた男が話しかける。

「隊長……」


 その瞬間、頭目の目がギロリとその男を睨む。

「此処では頭目と呼べ、と言ったろう。気を付けろ」

「すいません」


「此処で考えていてもらちが明かん。一当てしてから、作戦を修正する」

「「「「はい」」」」


 全員が揃って返事をしたところで、頭目が苦笑いする。

「こういう時は『おう』と答えろ」


「「「「はい」」」」



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