第11話 実力で示せ
第一騎士団第一分隊の宿営地は、王都から馬で2時間ほどの場所にあった。
第一騎士団は近衛騎士団とは違い、装備も実践的なものになっている。
金属鎧や小手、脛当て等、光を浴びて傷や凹みが乱反射し、相当に使い込まれている事を物語っている。
今回は、ヴァスケスを班長として、配下にニコ、アグネス、フロムの4人。
そしてコリーナ班長と三名に配下の計8人が、第一騎士団第一分隊との共同作戦にあたる。
ヴァスケス達が宿営地に入ると、第一騎士団からの好奇の視線が集まる。
「ただでさえ盗賊相手に忙しいのに、お嬢様たちのお遊びに付き合わされるのかよ…‥」
何処からともなくそんな台詞が聞こえてくる。
「歓迎されてねえな……まあ、最初から分かってたことだが……」
ヴァスケスが顔を歪ませて小さく呟く。
しかし、その台詞を聞きとがめたコリーナがヴァスケスを諫める。
「ヴァスケス。我々は喧嘩をするために此処に来たのではない。その剣呑とした態度は止めろ」
ヴァスケスがコリーナを睨む。
しかしコリーナは怯まない。
「我々はヴァルキュリア騎士団を代表して此処に来ている。安いプライドは捨てろ。悔しかったら実力で示せ」
「ちっ、わかったよ」
ヴァスケスが舌打ちをする。
そんな様子を見て、第一騎士団の騎士たちからヤジとも不満ともとれる言葉が飛ばされる。
「さっそく仲間割れかよ。大した援軍だぜ」
「最初から期待はしてなかったがな」
コリーナはそんなヤジを無視して、馬を降りる。
そして良く通る大きな声で自分たちの到着を告げる。
「我々はヴァルキュリア騎士団のコリーナ・ヴァレンハルト小隊である。第一騎士団第一分隊の代表者は何処かっ!!」
その凛とした態度は、一気にヤジを止めさせる。
すると、一際大きなテントから、一人の男性騎士が飛び出してきた。
「これは失礼した。わたしが第一騎士団第一分隊の隊長を務めるスティーブ・レイクランドです」
年の頃は30の前半といった感じで、外で作業していた騎士達とはずいぶん雰囲気が異なっていた。
「私はコリーナ。小隊長を拝命している。私と後ろの7名が今回の任務に参加する。まずは厩と我々の宿営場所を教えて欲しい」
「厩に関しては我々の馬と一緒になる。問題は無いか?」
「うむ。馬丁がいるなら、後で申し送りを行う」
「それは助かる。で、宿営場所はあの辺りで頼む」
そう言ってスティーブは大きな木を指さす。
「あそこなら静かですし、我々からの好奇の視線からも遠いと思う」
「ご配慮に感謝を」
そう言ってスティーブ隊長に礼を述べると、振り向いてコリーナが指示を出す。
「聞いていただろう。指定された場所に宿営の用意をせよ」
「「「はい」」」
「ヴァスケス。お前は私と一緒に来い。作戦の詳細を詰める」
「……はい」
ヴァスケス以外の六人が宿営の準備を開始する。
ニコはノワールを引きながら周囲を見回した。
宿営地には常に誰かが動いている。
武器を整備する者。
馬具を点検する者。
見張り台から周囲を監視する者。
誰一人として暇そうな者はいない。
王宮の訓練場とは違う。
ここは実際に盗賊と戦う前線なのだという事を、ニコは心に刻むのだった。
◆
第一騎士団の宿営地の様子を伺うものがいた。
森の奥、木々の隙間からじっと気配を消して観察している。
第一騎士団の宿営地からは笑い声や怒鳴り声が微かに聞こえてくる。
だが監視者の視線は、その中心ではなく、到着したばかりの八人へ向けられていた。
そして想定外の異物の侵入に顔を歪ませる。
「(……奴らの実力が読めん……不確定要素が増えてしまったな……)」
監視していた者は、そう呟くと姿を消す。
『不確定要素』の報告をするために……。




