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第10話 やっぱりお前か

 

 アレクシア団長が団員を全員集めた。


「二日後、第一騎士団と合同で市街地に現れる盗賊討伐を行う。これは諸君たちの日々の研鑽の成果を発揮する絶好の機会だ。詳細は各小隊長から伝達する。今日は指令を受けたのち、討伐任務に向けて各自用意をせよ。以上だ」


「「「はい」」」


 隊員が揃って踵を鳴らし、声を合わせて返事をする。


 最近、王都の周辺がキナ臭くなっている。

 第一騎士団が担当する地域であるのだが、発生する盗賊による襲撃事件の件数が右肩上がりに増えているのだ。

 そこで国王は、本来王宮内を担当する近衛騎士団を王都警護に派遣し、第一騎士団の負荷を減らそうとした。


 しかし、近衛騎士団の士気は低く、一部住人達との軋轢もあり、すんなりと問題解決に至っていなかった。


 そこで白羽の矢が当てられたのがヴァルキュリア騎士団だった。


 ◆


 そして二日後。


「対人戦闘なんて、ちょっと怖いね」


 ニコは装備を揃えながらアグネスに話しかける。


「まあ、今回は第一騎士団が主力で、我々はその補助的な活動になるはずだよ」


「いくら騎士団員と言えども、いきなり対人戦闘は難しいだろ。特に新人には」

 フロムが答える。

「ただ、もし王宮や離宮に賊が入り込んだとする……その場合は相当な手練れだと思わないかい?」

「確かに……王都や王宮の警備を突破して侵入するだけの実力がある奴ら……を想定しなきゃいけないってことか」


「そう言う事」


 アグネスは剣の位置を確かめながらそう答える。


「……ごめん……あたし、少し軽く考えてた。……確かにアグネスの言う通りだよね……」


 するとフロムがニコの背中を叩く。


「だから実践訓練をするんだろ。今から雰囲気に飲まれてどうする」


「う、うん。そうだね。フロム、ありがと」


 フロムはそっぽを向くが、頬がほんの少し赤くなっていた。


「でも、そうすると今回の班長は誰になるんだろう?」


 ニコが首を傾げると、アグネスとフロムがニコをじっと見る。

「……なに?」


「……お前、持ってるからな」

「そうだね……引きが強いよね、ニコって」


「えっ?」


 ニコたちは身支度を終え、練兵場に集合する。


 新人を含めた今回の任務に参加する騎士たちが横一列に並ぶ。


 ヒルデガルド副団長が全員の前で号令をかける。


「全員、傾聴っ!!」

 ザザッ


 アレクシア団長が整列した騎士団員を順番に見ていく。

 そして中央に立つと、通る声で訓示を述べる。


「今回の任務は実戦である。訓練では補えない危険な事案も発生するだろう。だが、我々はヴァルキュリア騎士団である。日ごろの研鑽は君達を裏切らない。君達なら無事、職務を遂行できると信じている」


「全員の無事な帰還を信じている。以上」


「次に班分けを行う」


「各班長は班員を集合させ、事前に打ち合わせた通りの行動を開始しろ」


「「「「はい」」」」


「(誰が班長になるのかな……ジェシカさんならいいのに)」

 ニコが心の中でそんな事を考えていると、不意に名前を呼ばれた。


「おい、ニコッ!!早く集合しろ」


「えっ」


 そこには、ジェシカの姿ではなく、ヴァスケスの姿があった。

 ヴァスケスの後ろにはアグネスとフロムが苦笑いして立っていた。


「やっぱりお前の班長は、オレしかいないだろ?」


「(ははははは)」


 ニコは乾いた笑いか出なかった。


 ◆


 厩舎から騎士たちの愛馬が連れてこられた。


 勿論ノワールの姿もある。


「ノワールッ!!」


 ニコはノワールの首に抱き着く。


 ブルルルルルッ


 ノワールも久しぶりの再会で嬉しそうだ。


「ごめんよ。最近会いに行けなくて。でも今回の任務はずっと一緒だからね。よろしく」


 ブルルルルルッ


「相変わらず仲が良いな」


 フロムとアグネスも愛馬を連れてそばに寄ってきた。

 アグネスは白毛のアルバを、フロムは栗毛の馬を連れていた。


「そう言えば、フロムの子は初めてだね。君、お名前は?」


 ブルルルッ


 栗毛の馬が首を振る。


「その子は『セレステ』というんだ……っていうか馬に聞くな。あたしに聞けっ」

「はははは」


 そこへ既に騎乗したヴァスケスが近づいてきた。


「さっさと騎乗しろ。騎乗したら、我々は第一騎士団の宿営地へ移動する。いいな」

「「「はい」」」


 ニコは鐙に足を掛ける。

 訓練では何度も繰り返した動作。

 だが今日は違う。

 初めて実戦へ向かうのだ。

 胸の奥で不安と期待が入り混じる。

 それでもノワールの背に跨ると、不思議と恐怖は薄れていった。


「さあ、ヴァスケス班の初陣だっ!!」



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