第44話 炎の中の決着
ヴァルキュリア騎士団、臨時司令部。
団長のアレクシアは次々報告される事態の対応に追われていた。
其処に更なる凶報が飛び込む。
「中央広場で反乱ですっ!! 怪しい聖職者のような男が率いた民衆が、王家に反旗を翻していますっ!!」
「何ですってっ!?」
アレクシアは思わず伝令の騎士に近づく。
「サマンサはっ!? サマンサは無事なのっ!?」
「サマンサとは連絡が取れていません……第一騎士団が鎮圧に向かっていますが、反乱に加わる人数が徐々に増えている模様です」
アレクシアが唇を噛みしめる。
「王都で何かをやらかすとは思っていたけど……放火の次は反乱とは……」
敵の行動力と、素早さに思わず舌を巻く。
「もはや陽動の規模を超えているわね……」
その時、アレクシアの脳裏に王城の北門の光景が不意に浮かんだ。
「第一騎士団は反乱の制圧に向かったのね?」
「はい……動ける騎士達は全員向かったものと思われます」
「……諮られた……今動ける騎士は何人いるのっ?」
アレクシアは背後にいた騎士に尋ねる。
「遊軍として二十人を確保しています」
「では、その二十人を王城の北門に向かわせてっ、大至急よ」
「お、王宮の北門ですか?」
「復唱しなさいっ!!」
「はい。遊軍の騎士三十名は王城の北門に向かいます」
「わたしの勘が正しければ、北門がとんでもない事になる筈よ……気を付けて」
「はいっ」
騎士は素早く礼をすると、後方へと駆けだして行った。
アレクシアは伝令の騎士に新たな伝令を託す。
「第一騎士団に伝えて……王城が危ないと」
◆
人工湖の対岸にある地下道への入り口。
今は瓦礫で偽装されているが、その瓦礫がガラガラと崩れ落ちる。
そして中から十数人の黒ずくめの武装した男達が姿を現す。
「鐘は鳴ったが、グランツ様が戻らない」
「もはやこれ以上の猶予はない……我々のみで計画を実行する」
「「「「はっ」」」」
黒ずくめの一団は、草むらを掻き分け、一路王城を目指す。
「北門の警備はそれほど固くない……我々で一気に押し込むのだ」
リーダー格の男が走りながら仲間を鼓舞する。
草むらを掻き分けながら進むと、やがて騎馬コースと呼ばれる道に出る。
そしてその向こうには王城の北門が見える。
北門には衛士の姿が二人しか見えない。
「……やはりな……」
そう言ってリーダー格の男が剣を引き抜いて見せる。
それに合わせて黒ずくめの男達も一斉に剣を引き抜く。
「今こそ、アルデリオン王国に正義の鉄槌をっ!!」
「「「「正義の鉄槌をっ!!」」」」
そして男達は北門目がけて一気に駆け出すのだった。
◆
王都の貴族街。
アンダーウォーターの屋敷。
紅蓮の炎が屋敷を包み、すでに手を付けられない状態になっている。
そんな屋敷の中で、灼熱の炎と黒煙の中、ヴァスケスとグランツは未だに剣を交えていた。
「くそっ……体力だけはありやがるな……体力馬鹿ってやつか?」
身体中にいくつもの傷を負いながらも、ヴァスケスは剣を構えて悪態を吐く。
一方のグランツも燃えさかる炎の熱と、金属鎧を身に纏っているせいで、体の熱を放出することが出来ないでいた。
「ふう……ふうっ……」
グランツは荒い呼吸を隠そうともせずにヴァスケスを睨みつける。
「(この辺が潮時だな……)」
ヴァスケスは剣の切っ先をグランツに向け、刺突の姿勢をとる。
一方のグランツは上段に剣を構える。
「「勝負っ!!」」
二人が渾身の力を込めてお互いに飛び込んでいく。
「うあああああっ!!」
グランツが叫びながら剣を振り下ろす。
ヴァスケスはその瞬間、飛び込むのを止める。
グランツの剣が思い切り床を叩きつける。
バギンッ
それを見逃さず、ヴァスケスが低い姿勢でグランツの横を走り抜け、グランツの膝の裏側を切りつける。
柔軟に足を動かすために、その部分には金属の保護が無い。
ヴァスケスの切っ先がグランツの膝の後ろを切り裂く。
「ぐああああっ!!」
グランツの絶叫が響く。
「これで、お終いだっ!!」
片膝をついているグランツの側頭部を目がけてヴァスケスが剣を横薙ぎに振る。
バゴッ
鈍い打撃音が響き、グランツの身体がゆっくり傾く。
そしてそのまま床に倒れ込む。
ヴァスケスは肩を上下させながら振るった剣を見る。
ヴァスケスはグランツに剣が届く瞬間、刃ではなく腹の部分で頭を殴ったのだ。
「痛てて……あばらが……へへ……これで借りは返したぜ、おっさん」
そう言ってヴァスケスが床に座り込む。
同時に、ヴァスケスと一緒に来た騎士達が部屋の中に飛び込んできた。
ヴァスケスは彼女たちを見て満足そうに笑いながら声を掛ける。
「頼む……こいつらを外に連れ出すのを手伝ってくれ」




