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ありあけの月 ──暁──  作者: 香居
【改稿中】四章 保元二年(一一五七)一月~十二月

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鶴千代殿の思い(三)




 鶴千代殿も、私も。信西という人の心を持たぬ者に苦しめられている。私は目的があるゆえ、まだ耐えられる。だが鶴千代殿には、さぞ耐え難い日々だったことだろう。


「……私……私は……」


 関白の子であるがゆえに、大内裏で憂いを見せるわけにはいかず。

 家族を悲しませぬよう、自らの悲しみを必死に堪えて。

 鶴千代殿の思いの強さが、握り締めてくる手から伝わってくる。だが、これほど悲嘆に暮れながらも、慟哭せず嗚咽している。無意識に〝自らの立場〟で心を縛っているのだろう。

 やはり駆けつけて良かった。これ以上の我慢は、鶴千代殿の心が壊れてしまう。

 今、かように吐露することで、わずかでも抱えている物が軽くなるとよいのだが。


「……はふ……っ」


 しゃくり上げた呼吸を整えるように息をつく鶴千代殿。語り終えた疲れもあってか、目がわずかにとろんとしている。普段ならそろそろ就寝の時刻だ。無理もない。

 さて。淡路殿が戻って来られる気配がする。入室を遠慮する内容にならぬよう、また鶴千代殿の心を掬えるよう慎重に事を運ばねば。


「鶴千代殿のお心、よくわかりました」


 私は片手を離し、やわらかな裏袖布で(いた)ましい涙の跡をそっと拭う。


「……鬼武者殿……」

「私から、お話をよろしいですか? 長くはかかりませぬゆえ」

「はい……私ばかり話してしまい、すみません」

「よいのですよ。鶴千代殿のお話を聴きに伺ったのですから」

「ありがとうございます。鬼武者殿のお話とは……?」


 手をつないだまま、小首を傾げる鶴千代殿。子犬のようで、まことに愛らしい。


お読みいただきありがとうございます。

またブックマークや評価などにも感謝いたします。

次回更新は、5月6日23:00頃を予定しております。


誤字脱字がございましたら、ご指摘いただけますと幸いです。

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