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ありあけの月 ──暁──  作者: 香居
【改稿中】四章 保元二年(一一五七)一月~十二月

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鶴千代殿の思い(二)




主人(あるじ)様がそのように仰せでしたら、仕方ありませんわね。ただいま用意をして参りますわ」


 淡路殿は美しい所作で退出していった。

 御簾が下がるまで見送っていた鶴千代殿は、くるりとこちらを振り返った。


「鬼武者殿。今宵はまことにありがとうございます。私……、もうどうしてよいか……」


 淡路殿を案じさせぬよう、気丈にふるまっていたのだろう。眉を下げ、指貫を握る手には力が入っている。


「指が痛んでしまいますよ。それにお召し物も」


 冷たくなってしまった指先を温めるように、私は手をそっと包む。


「鶴千代殿の憂いを、私に分けてください。そのために馳せ参じたのですから」


 ゆっくりと、じんわりと。指先から温度が伝わるとよいが。


「……はい……っ」


 こくりと頷いた鶴千代殿は、ぽつりぽつりと話し始めた。

 聖子様は、数多いらっしゃる同母異母兄弟の内、鶴千代殿が特に懐いていた異母姉(あね)君だったこと。

 賢く美しい聖子様は、入内なさるまで鶴千代殿の話に耳を傾け、時に儀礼やしきたりに関して意見を交わされるほどの好学の士でいらしたこと。

 熱心なやりとりができることが、まことに嬉しく幸せだったこと。

 家格による入内は理解していたが、聖子様が幸せになれるか案じていたこと。

 崇徳上皇陛下が、思いのほか聖子様を大切にしてくださり、まことに嬉しく安堵したこと。


「……なのに……こんな……っ」


 流罪により引き裂かれた聖子様の心を思うと、悲しくて、悲しくて……

 ぽろぽろと涙をこぼしながらも、思いの丈を懸命に言葉にしようとする鶴千代殿。


「……私は、……童で……何も……できなくて……」


 それが辛くて悔しい、と唇を噛んだ。

 私は頷きつつ聴いていた。

 鶴千代殿の思い、深く理解できる。無力な己に打ちひしがれる日々だったのだろう。


お読みいただきありがとうございます。

またブックマークや評価などにも感謝いたします。

次回更新は、5月4日23:00頃を予定しております。


誤字脱字がございましたら、ご指摘いただけますと幸いです。

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