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僕の婚約者は人生2回目なのかもしれない。  作者: 織子


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第二十八話ーオリヴィエの復讐


(本当に……夢のよう)


オリヴィエは差し出された手を両手でぎゅっと握った。



◇



ルカディウスとオリヴィエの一件の後、ほどなくしてアルフォンスの成人の儀が始まった。


皇帝が賛辞を述べ、アルフォンスが壇上で成人の誓いを述べた。


オリヴィエはルカディウスの隣でその様子を見守っている。


アルフォンスの婚約者の決定はまたも見送りとなった。皇帝自ら、皇太子妃についてはアルフォンスに一任すると宣言し、アルフォンスも時間をかけて精査すると言っていた。



成人の儀が終われば、夜会が開かれる。婚約者がいる者は婚約者にエスコートを受け、いない者は親族のエスコートを受けるのが通例だ。


夜会の会場は、城内の別のホールで開かれる。オリヴィエはルカディウスに案内されながら夜会の会場に向かっていた。


(このまま、夜会もご一緒に居てくださるのかしら……)


差し出された手を取ってから、ルカディウスはオリヴィエから一向に離れようとしない。オリヴィエは心配になり口を開いた。


「あの……ルカディウス様、席を外されて構いませんよ?ご挨拶しないといけない方々もいるのでは?」


気をつかって傍にいてくれるのは嬉しいのだが、ルカディウスにも必要な社交があるはずだ。


蜂蜜色の瞳が瞬いた。


「ご迷惑でしたか?」


ルカディウスはポーカーフェイスなので分かりにくいが、しょんぼりした様に見えてオリヴィエは慌てて否定する。


「いえ!迷惑な訳がありません……!ただ、今日の主役の様な方を独り占めするのが申し訳なくて……!」


と、そこまで言って恥ずかしくなってしまった。


「独り占め……」

ルカディウスの呟く声が聞こえ、ますます恥ずかしくなる。


俯いていると、目の前にさらりと柔らかな金色の髪が流れた。ルカディウスが顔を覗こうと屈みこんでいる。

(近い……!)

目の前にある端正な顔立ちに驚き、体勢を崩す。


「あっ」

「おっと」


さっと腕を回され、身体を支えられた。慌てて離れようとしたが、ルカディウスの腕はびくともしない。


「挨拶周りは、会場に着いてすぐに済ませました。今、一人になると一斉に噂好きな夫人達に囲まれることでしょう。私も貴方を独り占めしたいので、もう少し一緒にいていただけますか?」


蕩けるような笑みを浮かべて言うルカディウスを見て、オリヴィエは気付いた。彼は自分の見目の良さを理解している。


「うっ……はい」

まんまと首を縦に振り、にこにこと上機嫌なルカディウスをじろりと睨む。


「で、でも少し離れてください。公子は私が狼狽えるが楽しいのでしょうが……」

「え?」

ルカディウスの目が見開く。

「楽しいと言いますか、可愛いのでずっと見てはいたいですが……」



「――オリヴィエここにいたのか!」


カッサンドラ侯爵の声が、廊下の奥から響いた。


ルカディウスが前に出て、侯爵からオリヴィエを隠すように立った。カッサンドラ侯爵は眉を顰めた。


「公子、そろそろ娘を返していただきたい。我々は夜会には出席せず、暇しようと思います」


(陛下の気分を損ねたものね……)


カッサンドラ侯爵の元に行こうとすると、ルカディウスが後ろ手でオリヴィエの手を掴んだ。


「そうですか。それは丁度いい」

「なに?」

「候爵の代わりに私が夜会でオリヴィエ嬢をエスコート致します。どうぞご心配なく、邸宅にお戻りください」


あまりの物言いにオリヴィエは驚いてルカディウスを見た。ルカディウスは次期公爵ではあるが、現侯爵である父に言うには礼を欠きすぎている。

冷ややかな視線と、無表情。侯爵を見ると、震える拳を握りしめ、逆上するのを耐えている。


(あらら……?)

父が爵位継承前のルカディウスの無礼な発言を見過ごすとは思わなかった。



「お父様~!」


殺伐とした廊下に、不似合いな甲高い声が響いた。ライボルトに連れられたメロディが小走りで駆け寄った。


「夜会に出ずに帰るなんて!私は嫌です!残ります……あら?ルカディウス様?」


メロディの視線がルカディウスを捉え、後ろのオリヴィエに移った。オリヴィエを見ると反射的に眉間に皺が寄るのだろうか?メロディはすぐにいつもの表情に戻し、ルカディウスを見ながら言った。


「ルカディウス様?本当にお姉さまとご婚約なさるのですか?」


メロディの甘い声音に、オリヴィエの身体が強張る。すると、手首を掴んでいたルカディウスの手が一旦離れ、オリヴィエの手を優しく包み込んだ。


「何故ですか?ルカディウス様ならば、もっと良いご令嬢たちがいるではありませんか」


ルカディウスを纏う空気が、さらに冷え冷えとする。表情の変化に、ライボルトは気付き反応したが、メロディは気付いておらず、無邪気さを装っている。ルカディウスが冷たい視線を向けて言った。



「オリヴィエ嬢以上に、良いご令嬢などおりません」


低く怒りを帯びた声音に、さすがのメロディも怯む。カッサンドラ侯爵の後ろに隠れるように移動し、ブツブツと呟いている。


「なによ。ルカディウス様ったら趣味が悪いわね……」


「悪くない。あと名前で呼ぶのも止めていただきたい」

ルカディウスがぴしゃりと言うと、メロディは侯爵の背中に顔を引っ込めた。


メロディが何を言っていたのか、オリヴィエには聞こえなかった。ルカディウスがオリヴィエだけに聞こえるように小声で言った。


「君には申し訳ないが、義妹御を追い出してもかまわないか」


オリヴィエは静かに首を振り、心中で謝った。


(気分を害させてしまって申し訳ないわ……)





読んでいただき、ありがとうございます!

今日はもう一話20時頃、更新する予定です。


見ていただけると嬉しいです!

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