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僕の婚約者は人生2回目なのかもしれない。  作者: 織子


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第二十二話ーこじれにこじれた感情


皇都の空に花火が上がった。街も、外れの村まで祝福ムードに包まれている。

今日は帝国でもめでたい一日、皇太子が成人を迎える日だ。


一台の馬車が城の門を通る。馬車には、盾の中央に一輪の白百合の描かれた家紋。エステルギア公爵家の家紋が刻まれている。


馬車が止まると、中からさらりと流れる金髪の貴公子然とした少年が降り立った。ルカディウス・エステルギア。十五歳になった彼は、端正な顔立ちにまだ少年の面影を残しつつも、立ち姿には青年らしい精悍さが覗いている。



「公子。本日もお日柄良く」

「ああ。皇太子殿下はまだ部屋か?」

「はい。公子がお越しになるのを待っておられます」

「分かった」




◇




――コンコンコン。


いつものように扉を三度ノックする。


「入ってくれ」

部屋の主は訪ねて来た人物の確認もせず招き入れた。


扉を開くと燃えるような赤髪の青年が立っている。

一歳しか違わないはずだが、自分よりはるかにがっしりとした体つきを見るたび、どうにも不公平だと思ってしまう。


「帝国の次なる太陽皇太子殿下。本日は成人を迎え誠におめでとうございます」


ルカディウスが恭しく頭を下げると、紅い瞳は瞬き、そして笑った。


「ははっ。なんだルカ。らしくない事をして。私の緊張を和らげようとしているのか?」


――まあ、それもある。


「いよいよ成人の儀だな」

「ああ。権限が増えるから、明日から仕事も増えそうだ。ルカも早く成人して手伝ってくれ」

「あと一年待ってくれ」

本当の事をいえば、ルカディウスも今年成人を迎えたかった。彼女と共に。



「それにしても、随分めかしこんできたな。二人で並んでいると、お前が主役みたいだ」

アルフォンスが言うと、ルカディウスは肩を竦めた。

「久しぶりの正装だ。侍女たちに遊ばれた」

何でもない風に言ったつもりだったが、わずかに目が泳いだ。アルフォンスは見逃さずニヤリと口角を上げた。

「嘘をつけ。オリヴィエ嬢に久しぶりに会うからだろう」


「……それもある」

それしかないのだが、揶揄おうとする親友を半眼で睨む。



窓から外を見ると、続々と馬車が門を通り過ぎて行く様子が見えた。


「式典は何時からだったかな」

「あと数刻もすれば呼びに来るだろう。……アル、先に謝っておくことがある」


ルカディウスの言葉にアルフォンスは眉を顰める。


「ルカ、本当にするのか?」

「ああ。お前の晴れの日に騒ぎを起こして申し訳ないが」

「いや。いいさ。と言うことは今日は退屈しそうにないな。――しかし……うーん」


煮え切らない様子のアルフォンスに、ルカディウスが訝し気に言った。


「なんだ?今さら彼女が婚約者候補から外れるのが惜しくなったのか?」

「いや、彼女は確かに魅力的だが」

「は?」

「私はお前を敵に回したくない」

アルフォンスはげっそりした表情で言った。


「じゃあ何だ」

いらいらと言うと、アルフォンスは言いにくそうに口を開く。


「いや、昔彼女が言っていた”静かに暮らしたい”という要望を果たしてお前が叶えられるのかと……」


(なに?それは初耳だ。静かに……か。郊外の治安の良い地区に別荘を……)


眉を寄せ思案していると、ルカディウスが呆れた様子で言った。



「何かまた先走ってないか?何にせよ、まず気持ちを伝えてからにしたらどうだ」

「……それはそうする。伝えるさ。だけどこれまで接点がなかったんだぞ。いきなり伝えても断られるかもしれないだろう」

「うん?そうか?」

アルフォンスが、じろじろと見定めるように言った。


「いや、それはないだろう。お前、社交界で何と言われてるか知ってるだろう?」


自分の噂は知っている。


公爵家の後継者であり、母譲りの端正な面立ちと恵まれた容姿。社交界デビューを果たす前から、その名は貴族令嬢たちの間で囁かれ、帝国で最も縁談を望まれている令息の一人だ。おまけに浮いた話が一つもない。

さらにここ数年でぐっと背が伸びた。身体の線はまだ細いが、騎士並みの訓練をしているので筋肉も付いている。


――しかしだ。


「他の令嬢からの評価がそうであれ、彼女もそうとは限らない。きちんと僕の‥‥良いところを知ってから伝えたい」


――絶対に拒否されることのないように。



「……こじらせてまあ…」

アルフォンスの呟きは聞こえたが、反応はしなかった。


8歳の頃からこじれにこじれた感情は、もはや自分でもどうしようも出来ないものになっていたからだ。



やがて皇城の侍従が呼びに来たので、二人は部屋を出て成人の儀の行われる広間へ向かった。








ルカディウス視点に戻りました。これからは交互に視点が変わります。




読んでいただきありがとうございます。


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短編を投稿しました。こちらも読んでいただけると嬉しいです。


【公爵様に、「父親と歳が近い男は嫌だろう?」と言われましたが、私そんなに若くないですけど。】

https://ncode.syosetu.com/n1840ms/




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