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僕の婚約者は人生2回目なのかもしれない。  作者: 織子


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第十四話ー10歳、二度目の誕生パーティー①


――回帰前、オリヴィエが10歳になる頃だ。その頃は皇太子妃教育で皇城へ行くくらいしか外出を許されておらず、予定がない日はメイドすらオリヴィエの世話を放棄していた。

朝は誰も起こしにも来ず、食事は自分で調理場へ取りに行く生活をしていた。調理員のアネッサはそんなオリヴィエを不憫に思い、時々デザートを部屋へ届けてくれるなど、優しくしてくれた。



オリヴィエが10歳の誕生日パーティー。事件が起きた。


パーティー会場に刃物を持った男が現れたのだ。オリヴィエは久しぶりの公式の場だった。数日前から招待客の顔と名前を叩き込まれ、立ち居振る舞いの復習などで寝不足だった。

10歳の子供にコルセットなど不要だ。しかしカッサンドラ侯爵がオリヴィエをその日に限り気合を入れて着飾るよう命じたので、メイドたちは遠慮なくオリヴィエのコルセットを絞った。


会場に突如現われた浮浪者のような男は、オリヴィエを見ると襲い掛かってきた。ふらふらのオリヴィエは逃げる気力もなかった。周りの大人達に、刃物を持った男に立ちはだかってでもオリヴィエを助けようとする者はいない。オリヴィエが諦めたその時、かばうように覆いかぶさったのが給仕として会場を手伝っていたアネッサだった。

男はアネッサを切りつけ、暴れているところをようやく来た衛兵に捕らえられた。


オリヴィエはそのまま意識を失い、起きた頃にはアネッサは邸宅からいなくなっていた。


執事に問うと、腕を切りつけられ、調理員として働けなくなったので解雇したとのことだった。




「アネッサ……」


オリヴィエは目を覚ました。涙が頬を伝っている。


(今は、いつ?私は……)

夢を見て頭が混乱している。体を起こすと、視界に黄色のドレスが見えた。およそオリヴィエには似合いそうもない。メロディにあつらえられたかのようなドレスだ。


(これがここにあるということは、今日が10歳の誕生パーティーなのね……二回目の)


「……!どうして……!」

オリヴィエは拳を強く握り、布団を叩いた。


(どうして今思い出すの……!こんな大事なこと……!)

回帰前と同じ事が起こるなら、今日のパーティーでオリヴィエは刃物で襲われることになる。


「……!」

歯を食いしばる。アネッサは回帰後、現在でも数少ないオリヴィエに優しく接してくれる人物だ。今も本邸の調理場に勤務しており、回帰前と同じくオリヴィエにおやつをこっそりくれる。



コンコン。

扉のノック音がする。オリヴィエは舌打ちをした。

普段は放置しているメイドが、朝早くから来たと言うことは、今日はやはりパーティー当日だ。今からオリヴィエはパーティー開始時間まで自由に動けなくなる。


(せめて、せめて昨日思い出していれば……!この現象は何なの。回帰させておいて必要な記憶が戻るのが遅すぎる)

ぶつけようのない憤りに、オリヴィエは頭を抱えた。

回帰前の記憶は、日々を追うごとにやはり曖昧になっていく。しかし不自然に抜け落ちていると感じる場面もあるのだ。今日のように。



「お嬢様起きてくださいませ。準備を始めるお時間です」


許可もなく入室するメイドを、オリヴィエは思わず睨む。しかしメイドは意に介した様子もなく、無遠慮にカーテンを開いた。オリヴィエは短く息を吐きベッドから降りた。


(狼狽えてる暇はないわ。アネッサだけでも、どうにかしないと)


オリヴィエに充てがわれたメイドは二人。おそらくメロディには今日の準備に五人は付いているだろうが、オリヴィエにとっては一人でも付けばありがたい方だ。しかし今日に限っては一人とてありがたくはない。


「ねえ。貴方たち。今日は大きなパーティーでメロディも機嫌が良いだろうから、きっと使わなくなったアクセサリーをたくさんくれるわ。私の準備は簡単に済ませていいから、早く終わらせてメロディの手伝いに行った方がいいわよ」


メロディは一度使った装飾品は二度は付けない。メイドにあげて、また新しいアクセサリーを買って貰うのだ。それを知っているメイドは、そわそわし始め、オリヴィエの言う通り、手早く準備を始めた。ただし公爵の出来る限り着飾らせるようにとの命も疎かにしてはいけない。


回帰前と変わらず、オリヴィエはコルセットを締められた。しかし以前とは違う。オリヴィエは知識を身に着けている。着る直前、メイドの目を盗み、滑りの良い厚めの布を挟み込んだ。藍色の髪は結い上げられ、隠されるように花飾りを多めに付けられた。


時間はやはりかかったが、回帰前よりはずっと早く済み、メイドたちは支度を終えるとそそくさと部屋を出て行った。


オリヴィエはコルセットに仕込んだ布を引っ張り出し、息を吐いた。


「よし」


コルセットも苦しくない。名簿は覚えていたので寝不足でもない。コーディ嬢の件で自分の筋力のなさに驚いたので、よく食べ、運動もかかさずにするようになった。――つまり、今のオリヴィエは回帰前より自由に活発に動ける。


オリヴィエは部屋を出て調理場へ向かった。











読んでいただきありがとうございます。


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