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神威(カムイ)の流転と聖なる詩片  作者: カムイ ピリマ(神はひそかに教える)
第弐部 『時空を超えし幻の軍勢』ラーマーヤナ(一書)編――秘幻乃神謡 其之壱 昔日英雄乃詩――
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第3倭 闇を斬り裂く希望の閃光

「エパタイ(バカヤロ)! そっちじゃねぇっ!

 ソイツの急所は首の後ろだ!」


「――はぁっ! ビャッコ! 『虎爪斬』!!」


 身を躱し宙に舞うミチヒメ。

 翻り放つ、空を斬り裂く純白の爪撃!

 激しくのたうち暴れまわる怪物。


「『潜土蛇竜(トィヤラサラゥス)』と違い、この『潜砂蜥蜴龍(オタ・ヤラサラゥス)』はかんばせではなく、首にある帯……その後方が急所なり」


 砂の海に潜む怪異、「潜砂蜥蜴龍」。

 彼等は、旅人の身体に宿す「水(ワッカ)」を求め襲い掛かってくる。


「……オレ様達がこの『砂の海』から引き剥がされちまってから……六百の刻が廻っちまってる。

 その間にはこんな危ない奴等も蔓延ってる訳……だ!」


 白虎は、ミチヒメから付与された氣力で、音も無く一撃を繰り出す。

 即座に、苦しんでいた潜砂蜥蜴龍が鎮まり還る。


「我が身護る為とは言え……『輪を廻らせる』のは心苦しきなり。

 さりとて無闇に苦しませるのもまた無慈悲なり」


 セイリュウは静かに浮かび上がり冥福を祈る。

 すると、身体から霊体が抜け出て、輪の中へと還っていくのがミチヒメにも観える。


「ありがとうございますセイリュウ師匠。わたしもそれが出来ればいいのだけど……」


 静かに笑みを湛えて青龍が応える盟主の矜持(ピリマ)。


「……万物を輪の中へ還す事、それも我等『自然の盟主』の務めなり」


「まぁ、民衆(ウタラ)のオマエは、『自分自身』が輪を廻らねぇように気をつけておけばそれでいいぜ!」


 不器用だが彼女を慮る白虎の助言(ピリマ)。


「白虎の風(レラ)を、あれだけ遣いこなしたこと……誇っても良いと、わたくしめは思いますわミチヒメちゃん」


 自神同様扱いの困難な、「陽」の霊力の扱いを讃える朱雀の賞賛(ピリマ)。


「ミチヒメ、貴女は生身です。

 この『砂の海』と化した西域……唯一確実に遺る、瑞々しく緑茂る地……。

 『王子授乳せし大地(クスターナ)』を目指しましょう」


 生身の彼女を心配する玄武の提案(ピリマ)。

 確かに、これまでと違い、この「砂の海」には集落が殆どない。

 先ほど「彷徨える湖(ロプノール)」で汲んだ水もいつまで持つか……。


「でもゲンブ、目指す処はまだ……遥か先だと、それこそあなた達から聞いているわ。

 一体どうすれば……?」


 四柱はこぞって不敵な笑みを浮かべる。


「昼はあまりに熱き故おすすめ致しませんが……夜の間に……『わたくしめ』を遣い、素早く移動すると良いかと思いますわ」


 そう言うや否や、朱雀は彼女の背後から融合し始める。


「あ、熱っ! あぁっ! せ、背中に翼が……!」


 観るとミチヒメの背に、朱華(はねず)色の炎のように揺らめく翼が顕れる。


「わたくしめと……白虎が『掌を取り合い』て翔ばんとすれば……瞬く間に着きますわ……!」


 少々心配げに言うのは白虎。


「ただな、コイツ、すっごいキツイと思うぜ?

 何せオレ様達を『二柱』同時に顕すんだからな……」


 ミチヒメは、師匠譲りの不敵な笑みを浮かべ還す。


「きつい……? 刻を稼げるならきつさも歓迎だわ!

 ここ迄だってきつさなんて……数えきれない位あったもの!」


 四柱は目を伏せて静かに微笑んで頷く。


「……その通りですミチヒメ。

 貴女がこれまでに経験してきた艱難辛苦、そして我々と共に乗り越えてきた砂の海での『錬』……。

 貴女ならきっと遣いこなせます」


 冷静に顕し断言する玄武の評価(ピリマ)。


「征きましょう師匠達、わたしはきっと翔け抜けてみせるわ!」


 全員で力強く頷き、静かにミチヒメは翼を広げ羽ばたかせる。


「いいか? オレ様の風(レラ)を遣って……『自分を護りながら後ろに風を送る』んだ! わかったな?」


「はい! 師匠(ビャッコ)! いきます!」


 前面に細く槍の様に風を纏い、羽ばたきによって生じた空を強く後方へと押し出す。


「――な、なんて迅さ!!」



 瞬間、彼女は音を置き去りに……「消えた」……。

 一拍遅れ激しく陥没する砂の海。

 空を劈く衝撃の波。

 其れ等を置き去りにはためく朱華の翼……。


「よっしゃぁっ! うまい、うまいぜミチヒメ! その調子だぜ!」


 白虎から届く「感嘆と絶賛(ピリマ)」。


「そこでわたくしめの火(アペ)を、白虎の風(レラ)に合わせ直霊して押し出すの……そうですわ!

 とても上手ですわミチヒメちゃん!

 これでしたら後数刻で『王子授乳せし大地(クスターナ)』に着きますわ!!」


 宵闇覆う砂の海の虚空を、轟音を立てて斬り裂いて征く光。

 其れはまさに、世界を救う「希望之閃光」であった。

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