↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
神威(カムイ)の流転と聖なる詩片  作者: カムイ ピリマ(神はひそかに教える)
第弐部 『時空を超えし幻の軍勢』ラーマーヤナ(一書)編――秘幻乃神謡 其之壱 昔日英雄乃詩――
81/102

邂逅乃零倭 最後の夜、想い起こし直霊せん

――秘めし想い 叙事詩と共に直霊せん――


――其は、『狭間』であり、星霜を超えし乙女が秘匿せん叙事詩なり――


 今此処に詠い直霊せん――



「……どうぞ、ヤチホコくん。

 『本当の約束』は……まだ果たせなかったけど……。

 『ふたりきりで馨しい乳(カフェオレ)』、楽しみましょ」


 ヤチホコの想いを籠めた法理の水。

 それは彼が想い描く最高の飲み物へと顕し直霊され、「馨しい乳(カフェオレ)」となる。


「……ありがとうミチヒメさん。

 きっとミチヒメさんが注いでくれたから更に美味しいと思います……!」


「……エパタイ(バカ)……。

 こんな刻にまでそんな『毒』……。あぁ……そう……なの、ね」


 いつもなら、すべての正気を吹き飛ばされる程の、彼の無自覚で清廉で凄絶なる、「毒」と言う名の「慈愛の波動」。

 それが、今は……鮮烈ながらも、彼の内に秘められた「孤愁」により、相殺されて霧散してしまう。


(……解っていても……寂しい……辛いわよ、ね……)


 ミチヒメは、意を決し丹田へと氣を集中し、静かに吐き出す。

 そして、あらん限りの想いを籠めて彼を抱擁する。


「ミ、ミチヒメ、さ……。あ、ありがとう……ありがとうございます……!」


 ヤチホコは、彼女の想いに応えるように自分からも湧き上がる想いを還す……。


「――くぅっ!!

 げ、元気になったみたいね……良かったわ……。

 だから、少しだけ……その、嬉しいけど……『想い』の強さ抑えて欲しいわ……」


 それは、極寒の山麓で猛吹雪に晒される程の波動であった。

 違うのは……想いの巨濤(おおなみ)に飲まれて何も出来なくなる事……。


「惚けていたら……刻が惜しいわ。

 せっかくだから、ね。

 『ヤチホコくんにだけ』に……わたしの『口伝(くちづて)』に聴いて欲しいの……。

 あの刻(とき)の……わたしと英雄王(ラーマ)さまの物語を……」


 先の天界の試練にて曝け出した、彼女の「闇の元凶」。

 そして、それを超克して今に至れし理由……。


「あの刻打ち明けた……すべてを滅ぼされた後……。

 ヤチホコくん……『あなただけ』で聴いてくれる?

 わたしが……『わたし』を取り戻すための旅を」


 静かに頷いたヤチホコは、「みんな少しの間ごめんなさい」……。

 そう伝えて「一蓮托生呪」を解除した。


「……もちろんです! あの刻聴かせてもらったあの『絶望』……。

 今のミチヒメさんのように、どうやって立ち上がれたのか……立ち向かえたのか……。

 その、『想いの強さ』……どうやって貫き徹してきたのか……。

 そのすべてを、僕に是非聴かせてくれませんか?」


 応えるは……例えようもない悦びを湛えた笑顔。

 

「うれしい……わたし、一番幸せ者かもしれないわ。

 ヤチホコくん……。

 あなたと、自分の中の『一番解って欲しい処』を共有できるなんて……」


 器に口をつけ、静かに馨しい乳(カフェオレ)を呑み込む。

 そして、想いの儘に彼の耳に近寄って齎すミチヒメの告白(ピリマ)。


「ヤチホコくん、あなたもあの刻……一緒に観じてくれた『絶望の慟哭』……あの後、ね……」


 ヤチホコとオオトシが、御柱へ還る前の日、「最後の夜」。

 彼女の口伝に語られたのは……壮大で凄絶なる叙事詩であった……。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。