詩片の狭間 乙女の想い(メノコ・ピリマ)
その日の夜……根源神威之妹の神威で三柱に分かれたスセリ、根源神威之妹、そして楓……。
ヤチホコは、囲まれるように抱きつかれ、自神も神威を脱ぎ捨てて、「竜輝」として眠りについた。
(……そうか……今は、民衆にさえ届くのですね……。
『神威之啓示』……。
いいえ、『神威之祝福』……。
まさに、ヒメさんの言う、恍惚……なのでしょう……ね……)
「……ヤチのエパタイ(おバカ)。どうして最後に『想う』のがヒメちゃんなのよ!」
幸せそうな寝息を立てて、夢路へと誘われていった彼にぶつける可愛らしい「嫉妬」。
「ほほ……『誘われやすき』故……『いざなぎ』……であるやもしれませんわ」
根源神威之妹の口からは意外にも、スセリを慰める「冗談」。
「ふふ、だぁって『竜輝』だもの。『遊び疲れ』たら、ぐっすりよ」
当然とばかりの楓の「自慢」。
「……もぅ。せっかく久々の二人? の夜なのに」
ぼやくスセリの声に誰かが応える。
(それなら、みんなで『肴(眠りし王)』を前に話しましょ)
聴こえてきたのはミチヒメの想い。
(寝息を立てるヤチホコ殿の御前で、その御姿を拝見賜り、剰え乙女たちで話に花を咲かせるなど……!
ワラワを混ぜないのは、『言語道断』でございます……!)
ヒメの必死の「懇願」。
(わぁ、眠っちゃったお兄さま(おにいさまぁ)、きっと可愛らしいと思います(思いますのっ!)。
ミヅキ(ミヅチ)も参ります(ゼッタイ参りますの!))
ミヅキとミヅチからの断固たる純粋な「宣言」。
(あらぁ、そんなにあの寝所って入れるかしら? まぁいいわ。
……アタシは特製のおやつ持参で向かうから、待っていると良いわ)
広さの心配の裏に憂いを秘めたキクリの伝言。
「……皆さま、御戯れは結構ですが、『我が愛すべき主』……起こさぬようご注意を。
万一の場合……『法理の極み』の錬をご提供いたしますので……!」
最後、静かに顕現したカンナの忠告。
(わたくしの愛すべき『我が背』よ……。
咲き誇らん華であり囀りし愛告鳥たち……。
其はまさに、そなたの真寧なる想い故育まれしもの……誇りに想いますわ)
そう言うと、静かに根源神威之妹は竜輝の額に唇を押し当てた。
赤子の様に笑みを浮かべ、幸せそうに竜輝は眠る。
幾日か過ぎれば永劫の旅路が待っている。
だから彼女たちは静かに過ごす。
かけがえのない共に過ごせる夜を。
眠りし王の傍らでは、愛の共謀者たちの、甘やかで切なくも幸せそうな「語らい」が、彼を起こさない様に静かに咲き誇っていた……。




