第35倭 十界の 流転の因果 顕現せん
「……十界の顕現、神謡者達よ、ありがとうございます。
あなた方が抱き、芽生え、育み顕した想念。
それは……『究極』に至り、今、この世界は『真理との合一』を果たしました……。
ヤチホコ、いいえ、統治之神威へと直霊されしイザナギ……。
いいえ……『竜輝』。
そして皆さん……。
わたくしが間違っておりました、どうかお許しください……」
創世之女神は感謝を顕し、そして、恭しく跪いて謝罪する。
「……愛の想念は……。
危うくも素晴らしく、脆くも強い……。
まさに生命の理を顕さんものでございました……」
今、真理を悟った「主」の御前に、『十界』を顕した十柱が立ち並ぶ。
其之壱、『仏』を顕すヤチホコ――因果の記述を想いを以て、流転の先の真理へと、詠い直霊す覚醒者。
其之弐、『菩薩』のスセリ――宿業を受け入れ、すべてを慈しみ直霊す乙女。
其之参、『縁覚』のキクリ――輪廻の連鎖の業を超え、自然の摂理を抱きて直霊す豊饒の賢母。
其之肆、『声聞』のタカヒコ――精霊神の声を聴き、真理を宿し直霊す禰宜。
其之伍、『天』のヒメ――先世を見抜き、真理を直霊す道導。
其之陸、『緋徒』のミチヒメ――自らの拳と想念で 無限の可能性を顕さん 民衆の希望の聖乙女。
其之漆、『修羅』のミカツヒメ――正義の怒りで闘わん 衆生を護る猛りし女神。
其之捌、『餓鬼』のミケヒコ――自業にて 母娘喪う懺悔故、万民護力 強欲者。
其之玖、『畜生』のミヅキ――形喪き器に 龍月宿す神女。
其之拾、『地獄』のアビヒコ――主に楯突かんも自由を貫く、真理の継ぎ手。
あまりの清廉な眩しさに、アシュナンは思わず溜息を漏らす。
「……素晴らしき直霊せんが魂の有り様……。
わたくしの生み出した『根源神威』、『根源神威之妹』の魂を持つ『時空の流転者』たちよ……。
良くぞそこまで、正しき己が想念を抱きながら、魂を磨き上げましたね。
……『母』として誇らしく思うと同時に、心の底より謝らせていただきます。
あなた方、それぞれの持つ『想い』は、あなた方だけのものでしたのに……ごめんなさい」
言葉に籠められた想い顕す様に、純白に輝く詩片が彼等の掌に齎される。
「これからは、その無垢なる『詩片』を掌に、自由意思の元歩まれて下さい。
あなた方それぞれが抱くこの『詩片』は、大変ながらも輝かしき未来へと、己が想いで自由に紡ぐための……『聖なる詩片』です。
わたくしも、希望と憧憬の想念抱きて、見守らせていただきます……」
アシュナンは、深々と長揖し想いを籠めて伝える。
その刻、空間そのものが「緋緋色金」の輝きに変じ、一つの巨大な意思が具現化され顕現する。
すべての想念の還る処、次元を超えた究極の源泉。
「大いなる真理」が生きとし生ける者の為に神格化した姿。
――『久遠之存在』。
荘厳なる真理が静かに語り始める。
《創世之女神よ、よくぞ成し遂げたり。
今、この次元に産まれ直霊されし『十界』は、我が中心に聳えし『真なる十界』の御柱に繋がれり。
見事成し遂げしかな、想い深き女神よ……。
そして、『十界の顕現』達よ。
汝らの歩みは、この宇宙に新たな『理』を刻みしなり。
その善業に対し、因果廻りて相応しき利益、今まさに降り注ぎなん》
アシュナンの両腕に、神威の具現ではない、真なる両の掌が産まれ直霊する。
彼女は跪く。
その両の掌を合わせ、「久遠之存在」に万感の想い籠めて祈りを捧げる。
緋緋色金の花吹雪が、世界を覆う。
その清廉なる花吹雪は、万象を祝福し詠い直霊してゆく。
ヤチホコには、二度と誰にも支配されない「真なる自由」が。
スセリには、愛する者と共に歩む「平穏な刻」が。
そして他の仲間たちにも、それぞれの魂が最も想い焦がれ、努力によって掴み取った「可能性」が、宇宙の摂理として焼き固め直霊されてゆく……。
静かに煌いて舞い上がる緋緋色金の破砕片……。
包み込むように湧き上がる極光の火焔。
その中で舞い踊り、羽ばたきはじめる翼……。
「フ、雷鳥-っ!!!」
それは、彼の女神に至る前の……しかし緋緋色金の輝きを放つ、天之鳥船其之壱、雷鳥である。
「……造物主……!
雷鳥、只今此処に戻りまし……!
マ、マスター……!!」
ヤチホコは、溢れる喜びのまま、彼女の巨大な翼を抱き上げて跳び上がる。
「……これでは、雷鳥に乗らなくても自在に移動可能かと思います……」
「何を言っています!
貴女と共に飛ぶからこその虚空です!!」
「……造物主……!」
十界の顕現達も駆け寄り、想い想いに喜びを顕す。
彼等の想い……「利益降るならばどうか彼女に……」。
その「想い」が、彼女の復活として顕し直霊されたのである。
もはや彼等は……管理される詩片に「綴られし駒」などではない。
これからは、彼らが吸う空気の一呼吸、踏み出す一歩一歩が、新しい世界の神話となってゆく。
「……創世之女神。
私は……、これからも貴女の「愛の結晶」と共に歩んでゆく……。
出来ればずっと……観ていて欲しい」
ルースが伝えたアシュナンへの想い。
今、静かに優しく彼女の胸に響き、沁み込んでゆく……。
「お征きなさい……。
此度はわたくしからの万感の祝いのもとに……。
わが愛の想念の結晶と……永久に……」
最後……「母ならぬ想い」を籠めて、アシュナンはルースと抱擁を交わす。
「わたくしは此処にて、もう一柱の我が子が還るのを待ちましょう……」
サタンの、新たなる産まれ直霊を母として待つアシュナンの言の葉。
ルースは、静かに笑みを浮かべ彼女に別れを告げる。
ルース、そしてヤチホコ達十界の顕現は、今すべてを成し遂げて、堂々たる振る舞いで地上へと還ってきた。




